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今年は素晴らしい邦画が多いが、この作品も順番を繰り上げて感想をアップするレベルの作品だった。

坂平陸と水村まなみは、高一の夏に二人でプールに落ちると、翌朝体が入れ替わっていた。
それから15年後、体が入れ替わったままの二人はともに東京で働いていたが、地元の喫茶店で落ち合う。
この喫茶店は、以前1年に一度、二人が会っていた喫茶店だった。
かつて陸だった新まなみ(芳根京子)が到着すると、かつてまなみだった新陸(高橋海人)が、元に戻る方法が見つかったかもしれない、と言う。
突然の話に戸惑う新まなみ。
新陸は、以前地元で体が入れ替わったと言う話があり、平安時代の文献にも同様の記述があった、そのどちらも同じ惑星配列の日だった、そしてその配列の日が今日だと言う。
もし今日を逃せば少なくとも次は百年以上後と言われ、さらに戸惑う新まなみ。
二人は夜までの間を一緒に過ごし、元に戻る方法を試すかどうかを考えることにした。

男女の入れ替わりモノと言えば、すぐに思いつくのが大林宣彦の「転校生」だ。
「転校生」は、一美が転校してきてから一夫が転校するまでのひと夏の間に起きた出来事だ。
最後に二人は無事に元に戻って物語は終了する。
しかしこの作品は、15年の間入れ替わったままである。
その間、二人がどう過ごしてきたかが、冒頭の二人の再会から少しずつ明かされていく。
この、二人が過ごした15年間の描き方が絶妙だ。

ネタバレになってしまうために、これ以上は詳しく説明はできないが、元まなみは一人っ子で比較的裕福な家庭である。
元陸は団地住まいで仲の良い弟がいるが、生活はあまり楽ではない様子だ。
新陸となった元まなみが、かつて住んでいた家に遊びに行くと、両親は歓待してくれる。
さらに両親が他人とは思えないと言ってくれたので、体が入れ替わって、見た目が陸の私がまなみかもしれない、と言ってみるが、両親は笑いながらそれは受けいられない、と言う。
一方新まなみとなった元陸が、かつて暮らしていた部屋に行くと、母親がイライラした状態だった。
明らかに訪問を迷惑がっており、新まなみが昔の思い出話をしようとすると、いい加減にして欲しいと怒鳴って奥の部屋に引っ込んでしまう。

その間もその後も、二人は元に戻った時の事を考え、連絡を絶やさないように過ごす。
やがて高校も卒業してそれぞれ進学し、彼と彼女ができる。このあたりも、元まなみだった新陸がどうして彼女を作ることができたのか、元陸だった新まなみがどうして彼を受け入れられたのか、ストーリーの途中で丁寧に語られている。
元々が体と心が入れ替わると言う現実にはあり得ない設定なのだが、二人の心境の変化に無理がなく、観ていて二人にどんどん共感してしまった。

しかし、二人はなんとかうまく入れ替わった体で過ごしているように見えるのだが、実は二人ともが、入れ替わったことによる悩みをどんどん募らせていた。
そしてあるきっかけでそれが爆発し、二人は途中から連絡を取らなくなってしまう。
その後、久しぶりに新陸が連絡を取る冒頭のシーンとなるのだが、その時点での二人の立場がわかったとき、完全にストーリーに取り込まれてしまい、スクリーンから目を離すことができなくなってしまった。

「転校生」では尾美としのりと小林聡美の演技が絶賛されたが、この作品の高橋海人と芳根京子の演技も決して見劣りしない。
芳根京子の演技力はわかっていたが、正直、高橋海人がこれほど演技ができるとは思っていなかった。
高校時代の陸とまなみを演じた武市尚士、西川愛莉の演技も素晴らしかったし、
そのほか、中沢元紀、林裕太、前原滉も絶妙なキャスティングで、特に前原滉の優しいキャラクターが、作品全体に強烈に機能していた。

映画を観た後に調べたところ、原作はもう少しエピソードが多いようだ。
原作をここまでまとめて、さらに綺麗に構成した脚本だけではなく、セリフの間の作り方も絶妙で、脚本、監督を担当している坂下雄一郎と言う人は、相当な才能の持ち主だと思う。
この後に公開される「金髪」も楽しみだ。

今年は2016年以来の邦画の当たり年で、賞レースはかなり混とんとしているものの、やはり「国宝」が選ばれる可能性が高い。
しかし主演女優賞と言う観点では、この後の「ナイトフラワー」以外にめぼしい作品はなく、芳根京子が各賞を総なめする可能性もある。

158.君の顔では泣けない



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G1が1週空いた今週はエリザベス女王杯だ。
今年の桜花賞馬とオークス馬は不在だが、実績のある古馬に強い3歳勢が挑む、面白い図式になった。
おそらくエリカエクスプレスが逃げると思われるが、ペースがどうなるかの判断が難しい。
秋華賞は絶妙なペースだったが、武豊によればそれでもまだ力んでいたとの事だ。
距離が200m伸びる今回、気持ちよく行かせるのか、それとも前走同様押さえるのか。

本命は1番人気だがレガレイラだ。
重賞勝利がすべて中山だけと言われているが、そもそも春のクラシックジャスティンパレスやダノンデサイルなどの牡馬の強豪と皐月賞、ダービーを戦っており、昨年のエリザベス女王杯は直線大きな不利があった。
宝塚記念は道悪で、敗因はすべてはっきりしている。
前走のオールカマーは完勝で、中間の動きも好調だ。
枠順は奇しくも昨年と同じ4枠7番だが、昨年のような不利がなければ今年は突き抜けるだろう。

対抗はシンリョクカ。
前走の新潟記念は4着だったが、勝ったシランケドがその後天皇賞秋を0.2差の4着、2着エネルジコが菊花賞を勝ち3着のディープボンドも京都大賞典を勝利しており、レベルの高いレースだった事は間違いない。
昨年は新潟記念を勝った後このレースを4着しており、牝馬同士であれば、ここも好勝負必至だ。

三番手はエリカエクスプレスにする。
この馬は桜花賞、オークスで重い印を打ち、秋華賞で無印にした。
「買うと来ない、買わないと来る」で相性の悪い馬の予感がしないでもない。
冒頭に書いたがどのようにレースを進めるかの判断が難しく、それによっては上位争いも惨敗もあるだろう。
体調も好調を維持しているようで、エピファネイア産駒であり血統的にはマン逃げしての逃げ切りもあると思うが、京都外回りだと直線捕まりそうな感じもするので、今回は三番手評価にする。

四番手はリンクスティップだ。
このレースは、過去10年で外国人騎手が8勝、それ以外にもムーアがスノーフェアリーで連勝している。
エリザベス女王杯だけ外国人騎手が強い根拠は特にないのだが、鞍上のデムーロ弟は昨年スタニングローズでこのレースを勝利しており、得意のレースである可能性が強い。
そしてリンクスティップは、全6戦のうち5戦がデムーロ兄弟の騎乗だ。
紫苑Sの後秋華賞をスキップしたのも、デムーロ弟の来日を待った可能性もある。
大外に回ったが、脚質的にはむしろ内枠よりも有利に働きそうだ。

五番手はパラディレーヌ。
全7戦中4戦で上りがレース最速、2番目も1レースある切れ者だ。
エリカエクスプレスのペース配分次第だが、レースがハイペースとなれば、内から末脚を伸ばしてくる可能性が高い。

最後は迷う。

ステレンボッシュは久しぶりにルメールが鞍上する。
今のルメール無双状態なら一気に復活する可能性もあるが、調教の動きを見ると完全復活にはもう少しかかりそうだ。

POGで指名してたサフィラが出走、指名馬がGIに出走するのは久しぶりだ。
このレースと有馬記念を連続2着したサラキアが姉で、兄にサリオスもいる良血。
自信も春にG2の阪神牝馬特別を勝利し、京都芝は1.0.2.0と馬券圏外がないが、ここ2戦が13、12着であり、まだ復調途上のようだ。
今回は応援馬券の単複だけにする。

セキトバイーストは中間の動きが絶好だった。
前走の敗戦は休み明けで+20kgと絞り切れなかったことが原因かと思われる。
ただ発表された馬体重は-10kg。
差し引き10kgが成長分かまだ太目残りなのか、ちょっと判断が難しい。

オーロラエックスは条件戦、リステッドと連勝中で、中2週だが好調を維持しているようだ。
前走を見るとこの秋本格化したようにも見えるが、このメンバーに入るとまだ家賃が高いか。

ココナッツブラウンはこの2戦で重賞を連続2着している。
輸送で体重を減らすため滞在競馬が合っているようだが、それ以外も12戦して馬券圏外だったのはたったの2回のみ。
どんな相手でも必ず勝ち負けしてくる。
また、12戦中8戦で上がりレース最速を記録している切れ者でもある。
今回は当日輸送で+2kgと馬体減りがなく、上位争いしてくる可能性が高い。


◎レガレイラ
〇シンリョクカ
▲エリカエクスプレス
△リンクスティップ
×パラディレーヌ
×ココナッツブラウン

馬券はいつも通り1着◎○、2着◎○▲△、3着は◎○▲△×の3連単24点で勝負。

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原作は金原ひとみで監督は松井大悟だ。
前半は松井大悟完全復活かと思わせたが、後半はやや微妙な感じだった。

27歳で彼氏いない歴27年の由嘉里(杉咲花)は、アニメの「ミート・イズ・マイン」を「推す」腐女子だった。
このままではいけないと思って婚活を始め、合コンに参加するものの撃沈、酔いつぶれて歌舞伎町の道端で座り込んでいた。
そこでライ(南琴奈)に助けられる。
二人はライの部屋に行ったが、部屋はゴミ屋敷だった。
「こんな部屋にいると死んじゃいますよ」と由嘉里が言うと、ライは「自分はもうすぐ死ぬ」と言う。
そして由嘉里がライに、どうしたらそんなに綺麗になれるのかを尋ねると、整形で300万円くらいかければなれる、私は死ぬから300万円あげる、とも言った。
厭世観に満ち、本当にいつ死ぬかわからないライに対して、由嘉里は生きて欲しいと思う。
そして二人はルームシェアを始めた。

ライは歌舞伎町でキャバ嬢をしていたが、仕事もあまり真剣ではなかった。
ライにはホストの友達アサヒ(板垣李光人)がいて、由嘉里はアサヒとライに連れられて小さなバーを訪れる。
バーのマスター(渋川清彦)と常連の作家ユキ(蒼井優)は由嘉里を暖かく迎えてくれた。

由嘉里はライに背中を押され、マッチングアプリで婚活を行うが、うまく行かずに腐女子の推し活に没頭してしまう。
そんな状況でも、由嘉里はライの死にたい気持ち「死にたみ」を消そうと、バーのマスターやユキに話を聞きに行く。
しかしある日突然、ライは姿を消してしまった。

南琴奈は2025年7-9月期のドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」で、存在感のある演技をしていた。
そのためこの作品でも期待していたが、杉咲花、板垣李光人、渋川清彦、蒼井優などの実力者の間に入ると、やはり演技力の差がはっきり出てしまっていた。
杉咲花の腐女子役がすばらしかったのに加えて、ライの役は感情を押し殺した非常に難しい役だったため、演技力の差が出るのも無理はない。
しかし、前半はこの南琴奈のライが絶妙なアクセントになり、新鮮なストーリーになっていた。
この後ライと由嘉里がどうなるか、ドキドキしながら観る事ができた。
松井大悟ならではの独特の世界観で、松井大悟完全復活かと思わせた。
だが中盤でライが消息を絶ってから、そのドキドキ感がなくなってしまった。
ライがいない後半は、実力派の俳優陣による普通の出来の良い映画に見えてしまった。
もちろん、ストーリー全体が面白くない、という事ではない。
前半のドキドキ感に比べると、後半は予定調和でラストが見えてしまう展開になってしまった、という事である。
もし前半の南琴奈の演技が、松井大悟が巧く演じ過ぎないようにという指示をしたものであったのならば、それは非常に巧く機能していたと言っていいだろう。
しかしその反面、後半に反動が大きく出てしまい、それを収集できなかった、と言う印象だ。

少々ネタバレになってしまうが、杉咲花の演技は終始素晴らしかったので、最後に少しだけでもライを再登場させれば、もう少し違った印象になったのではないかと思う。


157.ミーツ・ザ・ワールド


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原作は未見だが大藪春彦新人賞を受賞しており、映画もなかなかのピカレスクな作品だった。

マモル(林裕太)は兄貴分のタクヤ(北村匠海)とともに歌舞伎町で、SNSで寂しい男を引っかけて戸籍を売買する闇ビジネスをしていた。
マモルは、タクヤが川に放り投げたシャツを拾いに行くほど、タクヤの事を慕っていた。
ある日タクヤとマモルは、闇ビジネスを取り仕切る半グレ集団「メディアグループ」の佐藤と食事をしていた。
その後一人で立ち去ろうとしたタクヤをマモルが尾行すると、タクヤが梶谷(綾野剛)と言う男から偽造の免許証を受け取っているのを目撃する。
マモルはタクヤにこの仕事から足を洗うのかと問い詰めるが、タクヤは何も言わない。
失望したマモルはタクヤに背を向けて立ち去った。

翌日、佐藤とグループの幹部であるジョージたちが突然マモルの元を訪れる。
佐藤がマモルのスマホを確認するが、マモルには何が起きているのかわからない。
そしてジョージに殴られて気を失ってしまう。
目を覚ますとマモルは手足を縛られており、タクヤがジョージのカネを持ち逃げしたと、佐藤が教えてくれた。
そしてタクヤの部屋に行って、部屋の中にあるテディベアのぬいぐるみを持ってくるよう命令された。
マモルが言われた通りタクヤの部屋に行くと、床には血の跡がべっとりと残っていた。
その時スマホにタクヤからのメールが入る。
タクヤからのメールにマモルが涙ぐんでいると佐藤が現れ、テディベアと金目の物をバッグに詰め始めた。
お前も好きな物を持って行っていいぞと佐藤に言われたマモルは、以前タクヤが川に放り込んだシャツと、冷蔵庫から冷凍のアジを取り出した。

タクヤは格闘技のジムで梶谷と親しくなっていた。
弟のためにカネが必要だったタクヤは、梶谷に誘われて闇ビジネスに手を染める。
しばらくすると、タクヤは佐藤からジョージのカネを狙う話を持ち掛けられる。
仲間の一人が敵対する池袋連合に寝返ったので、その男にすべてを背負わせるという筋書きだった。
タクヤはジョージの女の動きを探り、誰も部屋にいない時間を割り出す担当だったが、予想外に女が部屋に戻ってきしまった。
実行犯の男はなんとかカネを奪うが、話が違うと激怒する。
佐藤は実行犯にカネを渡して黙らせ、残りのカネをトランク倉庫に隠し、そのカギをテディベアのぬいぐるみに入れてタクヤに渡した。

作品は柿崎マモル、松本タクヤ、梶谷剣士の3人の視点で、3部に分かれて構成されている。
最初の柿崎マモルの章ははっきり言ってよくある半グレ集団の裏切り物語のように見えるが、松本タクヤ、梶谷剣士と章が進むごとに、3人のバックグラウンドが明らかになっていく。
この見せ方が非常に巧い。
少々ネタバレになってしまうが、タクヤは弟の治療費のために闇ビジネスの世界に入るが、弟は死んでしまう。
マモルをかわいがるのは、マモルに弟の影を重ねているからだ。
そして梶谷は直接マモルとの接点はないが、そんなタクヤの心情を知っている。
悪人になりきれない3人の葛藤と苦悩、もがき苦しむ姿の描き方が巧みだ。
個人的に、どんどん追い詰められて逃げ場がなくなる作品が好きという事もあるが、梶谷の章ではかなり感情移入してしまった。

そこそこ激しい暴力シーンがあるためレーディングもP12になっており、誰にでも勧められる作品ではないかもしれないが、闇社会で苦悩するストーリーが好きな人なら満足できると思う。


156.愚か者の身分


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エヴァンゲリオンシリーズ30周年の月イチ公開第2弾は「まご君」だ。
「シト新生」の時にも書いたが、旧劇場版を劇場で観るのは初めてだ。

「まご君」は、第25話とされている「Air」から始まる。
量産型エヴァ9体が2号機の上空を旋回するところまでは「シト新生」と重複していて、そこからオリジナルのストーリーがスタートする。

1997年の劇場公開当時は、観客はワクワクが止まらない状態で観始めたと思うが、たぶん途中から混乱したと思う。
私もその話を十分聞いてから数年後にDVDで鑑賞したのだが、それでもかなり混乱した。
「世界が壊れる」を表現したのだと思うが、あまりにも抽象的な表現で、ほとんどの観客が付いていけなかったと思う。
特に実写についてはまったく意味がわからなかった。

ただ「シン・エヴァ」公開後に観てみると、「シン・エヴァ」でも同じことを表現しているように思えた。
「まご君」の上映時間が87分に対し、「シン・エヴァ」は155分で倍近い。
製作費や製作期間の関係で「まご君」はこの形にしかできなかったのだろう。

なお、「シト新生」を見直したときに、プロトタイプの零号機がオレンジであったことを思い出した。
TV版ではほとんどが水色だったため、新劇場版シリーズで零号機がオレンジになった時に違和感を感じたが、その違和感の方が間違いだったのだ。
また、初号機がバルディエルをボコボコにするとき、そしてゼルエルを捕食するとき、新劇場版破の弐号機ビーストモードの動きに似ていると思った。

これらから、新劇場版シリーズは庵野秀明以下スタッフが、本当に表現したかったエヴァを作り直したのだと思った。
すでに公開が始まった新劇場版シリーズも楽しみである。


155.新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に


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