2024年に日本橋高島屋の「大黄金展」で、純金製茶碗が持ち逃げされた事件から着想された作品だ。
劇場での予告編などもなかったため、平凡な主婦が黄金泥棒に巻き込まれる話かと思ったがそうではなく、あるできごとでスイッチの入った主婦が黄金泥棒を計画する、という作品だった。
福岡で夫の路範(阿諏訪泰義)と二人で暮らす平凡な主婦の美香子(田中麗奈)は、ある日デパートの黄金展を訪れる。
黄金は担当者の金城(森崎ウィン)の意向で、お客様により金を実感していただくためにケースなどはなく、触ろうと思えば直に触れる状態で展示されていた。
そのため美香子は、衝動的に金のおりんを持ち帰ってしまう。
当然会場は大騒ぎとなり、ニュースでは防犯カメラに映った美香子の映像が流された。
美香子は動転し、証拠を燃やそうとおりんをガスバーナーで一晩中あぶるが、小さな穴があいただけだった。
そして事件を知った路範に説得され、自ら警察に出頭する。
展示会を主催したSGC社は、刑事事件にせず穏便に事を収めようと考えていた。
路範と美香子はSGCの東京本社を訪れて、おりんを買い取りそのほかの商品も購入すると約束した。
警察事案にはならなかったが、事件はニュースで放送されたため、二人の家には毎日マスコミが押しかける状態になっていた。
そこに金城と部下の土岡(石川恋)が、東京から金製品の納品にやってくる。
金城は騒動を鎮めるために、マスコミにも手を回すと約束してくれた。
4人が食事をしていると、土岡が飛行機の時間があると言いだし、路範が車で送っていくこととなった。
金城は二人きりになると、いきなり美香子との距離を縮めて親密に話しだした。
美香子は子供の頃から真面目な性格で、大学を出て自立を目指していた。
ちょうど雇用機会均等法が施行された時代であったが、両親からは26歳までに結婚するように約束させられた。
そして学生時代に出会った路範と結婚するが、路範からも家庭に入って欲しいと言われ、結婚後はずっと専業主婦として暮らしていた。
そんな美香子の半生が、ドキュメントワイドショーの番組となる。
美香子は福岡に来ていた金城と水炊きの店で会い、この番組に金城もかかわっていたのかと聞くと、金城はまったくノータッチだと言った。
その後金城は、仕事で北海道に行くのだが、一緒に同行してくれないかと美香子に持ち掛ける。
美香子が夫は仕事を休めないと言うと、金城は美香子だけで来て欲しいと言った。
美香子が帰宅してこの話を路範にしようとすると、路範が金のネックレスをプレゼントしてくれた。
記念日でもないのに夫がプレゼントをくれることを、美香子はやや不審に思ったが、北海道旅行の話で頭がいっぱいだった。
結局美香子は北海道旅行に行く事にし、路範も了承してくれた。
だが路範は、会社を辞めたことを美香子に内緒にしていた。
路範の実家を訪れた際にいきなり会社を辞めた話をされ美香子は驚くが、騒動のせいで会社を辞めざるを得なかったのだが、エンジニアである自分は職には困らないと、路範は気楽な感じだった。
美香子は金城が用意してくれたプライベートジェットで北海道に行く。
そこで客のルナ(中村祐美子)に商談をしたあと、金城と二人で夕食をとる。
美香子が金城に土岡と付き合っているのかと聞くと、それはない、自分はしばらく彼女がいないんだと言う。
その後部屋に戻った美香子に、金城から部屋に来ないかと連絡がきた。
美香子は胸をときめかせ、化粧をしてスイートルームに向かう。
しかし迎えてくれたのはルナで、部屋にいたのは金城の太客の日吉だった。
ストーリーはここから大きく展開する。
ネタバレになるので詳しく書かないが、ここで金城のしたたかな素性がわかり、その結果美香子のスイッチが入って黄金泥棒へ邁進することになる。
妻が金城と北海道旅行に行くのに浮気も疑わず仕事も辞めて、路範はどれだけ呑気なのかと思ったが、これらもすべて後半への伏線だった。
少々ネタバレになるが、美香子は黄金泥棒に路範と社員の土岡を巻き込むのだが、この巻き込み方が面白く、かつ二人のビビり方も面白かった。
特に土岡役の石川恋は、かなりいい演技をしていたと思う。
森崎ウィンの金城も、前半と後半でキャラが全く異なっており、素晴らしかったと思う。
ストーリーにも登場する金販売会社のSGC社がスポンサーで、製作にメディア系はいっさいかかわっていない。
そういう事もあってか、TVでのパブはおろか、劇場での予告編も流れなかった。
そのため観に行く優先順位を下げてしまったが、見逃してはいけないレベルの面白さであった。
監督の萱野孝幸と言う人はまったく知らなかったが、「SUPER SAPIENSS」プロジェクトに参加しているらしい。
と言っても「SUPER SAPIENSS」も全く知らず、この映画を観た後で、堤幸彦、本広克行、佐藤祐市を中心に、原作から映像化までのバックアップをするプロジェクトだという事を知った。
どういう経緯で萱野孝幸がこのプロジェクトに参加したのかはわからないが、この作品では脚本、監督を担当しており、非凡な才能の持ち主であると推測される。
ルナ役の中村祐美子が、プロデュースとキャスティングを担当しているのも面白い。
そろそろ観る映画をもっと選別して「時間が合うから一応観ておくか」という映画は減らす必要もあるかなと思っていたが、こういう「当たり」の映画があるとなかなか減らす事も難しそうだ。
56.黄金泥棒
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by ksato1
| 2026-04-13 00:05
| 映画
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