2018年 10月 03日 ( 1 )

オムニバス形式の感動ストーリーは、得てして展開が散漫になりやすく、面白くないパターンが多い。
この作品は監督がTVドラマでヒットを飛ばす塚原あゆ子、脚本は出来不出来のブレが激しい奥寺佐渡子という事で非常に微妙な感じがしたのだが、予想通り微妙な感じの作品になっていた。

常連客もいる明るい雰囲気の喫茶店「フニクリフニクラ」。
この喫茶店の席の一つに座ると、過去にも未来にも行けるという。
ただし過去に戻っても歴史を変えることはできず、現在の状況は変わらない。
また過去に戻っても喫茶店の外に出ることはできない。
そのため、会えるのは喫茶店に来たことがある人のみで、その人が来店した時間に戻る事になる。
さらに、過去に戻れるのはカップに注いだコーヒーが冷めるまでの短い時間で、コーヒーが冷めるまでに飲み干さなければならない。
もし飲み干せなかった場合は時間にとらわれて幽霊になってしまう。
店員の数(有村架純)は、その事を店に来た客に説明していた。

過去に戻れる噂を聞きつけた清川二美子(波瑠)は、1週間前に戻ろうとする。
しかしその席には謎の女性(石田ゆり子)が無言で座り続けていた。
彼女はかつてコーヒーが冷めるまでに飲み干すことができず、幽霊になってしまった女性だった。
この女性が席を立った時のみ、過去に戻ることができる。
二美子は謎の女性が席を立った瞬間に席に座り、幼馴染の五郎(林遣都)に会う事にした。
1週間前、アメリカに渡るという五郎とケンカをしてしまっていたのだ。

常連客の佳代(薬師丸ひろ子)は、若年性の認知症を患っていた。
介護士の夫である房木(松重豊)は彼女を旧姓の「高竹さん」と呼んでいた。
自分を夫だと認識できない佳代を気遣っての事である。
しかし房木は過去に戻って、佳代の本心を知ることになる。

もう一人の常連客平井(吉田羊)は、東北の旅館の娘であった。
本来旅館を継がなければならない立場だが、自由を求めて家を飛び出し、両親とは連絡を取っていなかった。
時折妹の久美(松本若菜)が喫茶店を訪れ、平井に家に戻るように説得するのだが、平井は常に逃げ回っていた。
しかしそんなある日、いつもと同じように平井を説得に来る途中、久美は交通事故で死亡してしまう。

そんなエピソードが続く中、数は大学生の常連新谷(伊藤健太郎)と仲良くなっていく。
そして数が社会人になったとき、数の妊娠が判明する。
新谷はその事を喜ぶが、数は迷いを見せるのだった。

映画の宣伝などで大々的に「4回泣ける」と謳っているが、ハッキリ言ってどんなに泣けても3回までだ。
波瑠演じる二美子のエピソードに関しては、共感する人はいても泣く人はいないだろう。
全体的に見ても、「感動の押売り」的な話を、微妙にオブラートに包んだ形になっている。
有村架純演じる数がいい感じで淡泊で説教臭くないので、「感動の押売り」が薄まった形になっているのだ。

元々演劇が原作なので、おそらくエピソードの演出のメリハリが大きかったと思われる。
そのメリハリで舞台と観客席に一体感を生み、感動作品になっているのだと思うが、映画になるとやはりスクリーンとの間にある種の距離感ができてしまうので、感動が生まれにくい。
そしてそこをゴリ押ししようとすると、どんどん距離感が広がってしまう。
それが映画の難しさなのだが、この作品ではいい感じのポイントに落とし込んでいる。

では、この映画が面白いかと言うと、抜群に面白いとは思えない。
ともすれば駄作になってしまう作品を、構成、キャスティングを含めて手堅くまとめたというのが適切だろう。
YUKIが歌う主題歌の「トロイメライ」も良かったと思う。

117.コーヒーが冷めないうちに


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