2018年 05月 15日 ( 1 )

よくあるヤクザ映画かと思ったが、さすが白石和彌だ。
ヤクザの抗争をかなりハードに描きながらも、全体としてのストーリーを損なわない見せ方になっている。
この映画を観てしまうと、北野武の「アウトレイジ」シリーズも霞んでしまう。

日岡(松坂桃李)は広島大を出て刑事になった変わり種である。
新任として赴いたのは呉原東署で担当は捜査2課、いわゆるマル暴である。
日岡の教育係はマル暴のエース大上(役所広司)だった。
大上は捜査のためなら放火まで行うアウトローで、尾谷組とも癒着していた。

14年前、呉原市は地元の尾谷組と広島市に拠点を置く五十子会の間で抗争が行われていた。
その抗争は五十子会幹部組員が惨殺され、尾谷組の組長(伊吹吾郎)が逮捕されることで幕引きとなった。
その後14年間大きな抗争は起っていなかったのだが、五十子会は尾谷組組長の出所前に呉原を押さえようと企み、傘下の加古村組に尾谷組のシマを荒らすように命じていた。

そんな時、加古村組のフロント企業の闇金業者の経理が、失踪をする。
失踪した男の妹から相談を受けた大上は、日岡とともに捜査を始めるのだが、加古村組の組員の様子から、失踪した男がすでに死亡していると考えた。
折しも加古村組のシマ荒らしが激しくなっており、怒った尾谷組の若手が加古村組幹部に切りかかって射殺され、その報復で尾谷組の組員が加古村組の事務所に発砲した。
たまたま発砲の現場近くにいた日岡は発砲した組員を逮捕するが、若手を射殺した加古村組幹部は捜査の手を逃れる。
怒った尾谷組の若頭一之瀬(江口洋介)は、加古村組と戦争を始めようとする。
大上は刑務所内にいる尾谷組組長と一之瀬を、フロント会社の男を殺した容疑で必ず加古村組を追い込むから戦争をしないように説得、一之瀬は3日間の猶予を大上に与える。

時間を限られた大上は、さらに過激な捜査で殺人事件を立件しようとする。
だがその一部始終を、日岡が記録していた。
日岡は、違法な捜査をしている大上を内偵するため、広島県警本部から送り込まれていたのだった。

映画の冒頭から、女性はちょっと制止できないかもしれないほどの、激しいリンチシーンである。
地中から掘り起こされる死体や水死体なども、最初ははっきり映さないのかと見せかけて、結局はグロい姿をバッチリ映している。
もちろん役者の演技ではなく制作された偽物なのだが、それだけにリアリティがある。
ヤクザのイチモツから真珠を抜き出すシーンなどもあり、とにかく手抜きなく激しさを追及している。

その一方で、日岡の心情変化もきちんと描かれている。
最初はただのチンピラ悪徳刑事のように表現されている大上だが、それもヤクザの抗争を阻止するための手段であることが、ストーリーが進むごとに明らかになっていく。
クライマックス直前、日岡が自分が書いた大上の内偵レポートを読み返すシーンでは、ちょっと感動もした。
さらに冒頭、かなりハードな映像ばかりが続く中で、日岡の心の安らぎとして薬局店員の桃子(阿部純子)を登場させている点も巧みだ。
竹之内豊や中村獅童あたりですらかなりの脇役扱いなのに、桃子に清楚なイメージの阿部純子を配する点で、キャスティングのセンスを感じる。

豪華な役者陣の演技力は言わずもがなだが、中でも役所広司と松坂桃李の演技は素晴らしく、それぞれ主演男優賞、助演男優賞を総ナメしても不思議ではない。
かなりハードなシーンが続くので誰にでも勧められる映画ではないが、映画好きにはぜひ観てもらいたい作品である。


65.孤狼の血


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