2018年 02月 16日 ( 1 )

シリーズ物という事で、観に行く前はそれほど期待していなかった。
TVのSP版2本は見ていなかったが、TVドラマ版、「麒麟の翼」は見ており、どちらもまずまずくらいの評価だったので今回もそれなりに面白い、程度の期待だった。
しかし予想を大きく上回る、感動作であった。

葛飾区小菅の古びたアパートで、絞殺された女性の遺体が発見された。
遺体は腐乱が激しかったものの、家族の捜索願から滋賀県の清掃会社に勤める押谷道子(中島ひろ子)であることが判明する。
アパートの契約者は越川睦夫と言う男性だったが、数か月前から行方不明で押谷道子との関係も不明であった。

事件を担当していた捜査一課の松宮脩平(溝端淳平)は、この事件と5kmほど離れた河川敷のホームレスのテントで発見された焼死体が、犯行の日時も近く、どちらも死因が絞殺、そしてアパートの部屋がホームレスのテントのように生活感がないことに着目した。
松宮は事件の関連性を調べるために、アパートの部屋に残された数少ない遺留品からDNA鑑定を依頼する。
しかしアパートの住人と焼死体のDNAは不一致、関連性がないようにも見えた。
松宮はその事を、従妹で日本橋署勤務の加賀恭一郎(阿部寛)に相談する。
すると加賀は、犯人が捜査を混乱させるために、アパートの遺留品をわざと入れ替えている可能性があると指摘、松宮が別の遺留品から再度DNA鑑定を依頼すると、やはり焼死体はアパートの住人越川であることがわかった。そのことを松宮が加賀に報告したとき、偶然、アパートに残されたカレンダーの書き込みと、加賀の母親が生前暮らしていた部屋に残されたカレンダーの書き込みが同じであることが判明する。
カレンダーには毎月、日本橋周辺の橋の名前が一つずつ記されていたのだ。

加賀は優秀でありながらも、警視庁に戻らずずっと日本橋署勤務を続けていた。
その理由は、加賀の母親の部屋に残されたカレンダーの書き込みが母親の筆跡ではなく、おそらく死ぬ直前まで付き合っていた男性のものであったからだ。
加賀はその男性から生前の母親の話を聞くために、ずっと手掛かりである日本橋周辺の管轄署の勤務を希望していたのだった。

一方被害者の押谷道子の足取りをたどると、中学時代の友人で有名な演出家であった浅居博美(松嶋菜々子)に会うために東京に来ていたことがわかった。
押谷道子は、得意先の老人ホームにいた身元不明の老女が浅居博美の母親だと思い、確認するために上京していたのだ。
そのことを松宮が確認にしに行くと浅居博美は、母親は自分と父親を捨てて男に走り、さらにその時に父親の実印を使って膨大な借金を作った、その返済のために父親は自殺をし、その後自分は施設に送られることになった、そんな母親を母親とは思っていない、と告げる。
その後、浅居博美には押谷道子殺害の犯行時刻に完全なアリバイがあることも判明した。
浅居博美はこの事件と関連性がないように思えたが、松宮は浅居博美の事務所で、加賀と浅居博美が映った写真を発見する。

ストーリーはTVドラマ版、そして「麒麟の翼」以上に練りこまれている。
二つの殺人事件と加賀の母親のエピソードを巧みにシンクロさせ、かつ展開にほとんど無理がない。
映画をみているうちにどんどんストーリーに引き込まれてしまい、中盤以降、事件の謎を解明するシーンでは、不覚にも涙がこぼれてしまった。

若干ネタバレになってしまうが、印象としては「砂の器」に似ていると思った。
中盤以降で刑事が事件の真相を推測すると言う演出も、2004年にTBSで放送された「砂の器」(中居正広、渡辺謙バージョン)に酷似している。
このドラマも非常に秀逸な出来であったが、映画を観た後にWikiで調べたところ、監督の福澤克雄と言う人はTBS所属で、この「砂の器」の演出を担当していたそうだ。
そして同じくWikiには、原作も東野版「砂の器」として高く評価されていると書かれている。
福澤克雄の力量で、原作の持ち味を巧く生かして映画を撮った、と言えるだろう。
また中盤以降の刑事の推測で、物語のキーマンとして小日向文世が出演しているのだが、この小日向文世が強烈に機能していた。
このキーマンに小日向文世を配したことにも、制作者のセンスを感じる。
もちろん、その他の役者の演技も素晴らしい。

唯一整合性が合わない点は、横山一俊がホームレスのテントがあるのに、アパートの部屋も契約していたことである。
原発の作業員手帳用には愛知の住所を登録しているはずなので、アパートを契約する必要性はない。
逆にアパートを契約しているのであれば、ホームレスのテントは必要ない。
ただ、この部分は映画ではわかりづらかっただけで、ひょっとすると原作には明確な説明があるのかもしれない。

福澤克雄と言う人は、最近では「半沢直樹」など一連の「日曜21時 池井戸潤シリーズ」の演出を担当しているようだ。
「半沢直樹」は見ていないが「ルーズヴェルト・ゲーム」や「下町ロケット」は、「半沢直樹」を意識したせいか勧善懲悪の土下座的演出を無理やりいれていたため、かなりゲンナリした。
そのため、最近はこの枠のドラマは見ないようにしている。
一方で、同じ枠で放送された「流星ワゴン」は面白かったし、かつての「さとうきび畑の唄」も非常にいいドラマだった。
視聴者に媚びるために無理に「半沢直樹」系の演出をさせるのではなく、もっとこの人自身の力量を発揮できるような作品を担当してもらいたいと思う。
そうすれば素晴らしい作品が出来上がることを、本作品が証明している。


21.祈りの幕が下りる時


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