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2012年 08月 29日 ( 1 )

原作は先日直木賞候補にもなった、朝井リョウのデビュー作だ。
私は読んではないが、それぞれ登場人物の視点を章立てにしているようで、「告白」に近い作品なのかもしれない。
そして映画では、それをうまく時系列をずらすことによって表現している。
各章を曜日立てにし、しかも物語の始まりの金曜日は何度も時間を行ったり来たりする事により、登場人物の人間関係や心情が少しずつわかるようになっている。

また、脚本とキャスティングもいい。
いかにも今の高校生が使いそうなレトリックが使われ、しかもそういうセリフが似合う役者を抜擢している。
特に、梨紗、沙奈、実果、かすみの4人のキャラが秀逸。
いかにもありがちな「1年の時に同じクラスだった仲良し4人組」だが、梨紗は学校一の美形で、沙奈はそんな梨紗に嫌われたくないためご機嫌取りをするものの、他の二人の事はやや見下している。
なぜかと言えば、梨紗はタイトルにもなった、バレーで県選抜に選ばれるくらいの実力を持つ学校一のスター桐島と付き合っていて、沙奈も桐島の親友でスポーツ万能の宏樹と付き合っているからだ。
一方実果とかすみは、梨紗と沙奈の上から目線をあまり気にしていない。
二人はバドミントン部でペアを組んでおり、帰宅部の梨紗と沙奈を「別人種」と考えているからである。
「一見仲良しっぽい女子高生像」が見事に表現されており、彼女たちの感情の機微が、物語にも大きく関わって来る。

物語は、バレー部のリベロ桐島が部活を辞めると言う噂が流れるところから始まる。
梨紗はビックリし、宏樹もその事は知らず、学校は大騒ぎになる。
そしてその翌日の試合で、バレー部は負けてしまった。
試合に負けたのは桐島の代わりに出場した風助のせいだと言わんばかりに、バレー部副主将のゴリラ(久保)は月曜日の練習で風助をしごくが、風助自身も自分のせいではないかと実感していた。
そして当の桐島は、学校に姿を現さない。

一方、こういう体育会系の面々とはまったく別のところで、主役(と思われる)前田は、映画部の顧問の押しつけではなく自分たちの撮りたい映画を撮ろうとしていた。
絶対女子にモテそうもないゆる~い部員ばかりのゆる~い映画部だったのだが、前田が書き上げた台本「生徒会・オブ・ザ・デッド」に全員興味を持ち、前田以上に一生懸命撮影をしようとする。
しかしいつも、吹奏楽部の部長の沢島亜矢に邪魔をされた。
宏樹に恋していた亜矢はサックスを吹く姿を見てもらおうとして、宏樹のいる場所でサックスを吹いており、それが毎回前田たちの撮影現場と重なってしまったのだ。

物語の中に、誰が誰を好きで、密かに誰と誰が付きあっていて、誰にも言えないけど誰かに対して嫉妬する、という高校生レベルの恋愛感情が、巧みに織り込まれている。
たぶん原作が小説すばる新人賞を受賞したのも、そのあたりの表現が巧かったからだろう。

ただし感情の機微を表現しながらも、物語は淡々と進むのでやや味気ない部分もある。
上映時間も100分くらいなので、見終わった後は、あっという間にアッサリ終わってしまった感じが残る。
しかし、おそらく原作がそういうお話だから、仕方ないのだろう。
むしろ監督が吉田大八だったからこそ、この作品をここまでに仕上げられた、と言えるかもしれない。

とは言え、面白いか面白くないかの評価はかなり分かれると思う。
実際近所のTOHOシネマズでは、封切り後わずか2週間で上映終了してしまった。
最初の週末にによっぽど人が入らなかったんだろう。
でも、個人的にはなかなか好きな作品である。
前田役の神木隆之介は、やっぱり巧いしね。
源義経役も楽しみだ。
それと、沢島亜矢を演じる大後寿々花もいい。
前田に冷静に突っ込まれて「えーっ?」を連発する部分は、微妙な乙女心がよく表現されていて非常に巧いと思った。


74.桐島、部活やめるってよ