2009年 10月 12日 ( 1 )

カミサンと土曜日の深夜に観に行った「私の中のあなた」
他にも、「空気人形」とか「プール」とか「サブウェイ123」とか、まだ感想を書いてない映画もあるんだけど、この作品を先に書かずにはいられない。

すばらしい作品だ。
このまま行けば、オレ的本年No.1作品である。

遺伝子操作で姉のドナーとしてこの世に生を受けた少女アナ。
彼女はドナーになる事を拒否するために両親を訴える。

これだけでは、何やらややアカデミックな医療訴訟と家族愛を問うシリアスな作品のようにも思えるが、実際には医療訴訟の部分はほとんどない。
全編、家族愛がテーマである。

家族構成は5人。
両親と白血病の長女ケイト、第二子の長男ジェシー、そしてアナである。
このほかに、母親の妹も同居している。

母親は長女の発病以降、彼女のために生活のすべてを犠牲にしていた。
アナも姉を助けるためにこの世に生を受けている。
回りから見れば行き過ぎた部分もあるのだが、母親は自分の暴走を止めることができない。
父親は妻の暴走気味な部分はわかっているものの、病気と闘う長女と妻の気持ちを思って、それを止める事はしない。
ただ、すべての物事がうまく回るように、全力を尽くして立ち廻ろうとする。

ジェシーは彼自身、失読症という文字が読めない病に冒されている。
しかし姉の発病以降、彼は決して家族の中心となる事はなかった。
そしてアナが両親を訴えても、何もする事ができずに焦燥感を募らせる。

妹のアナは11歳だ。
世の中の事が少しずつわかり始める年ごろでもある。
姉のドナーを拒否する訴訟を起こすものの、家族の中で姉の気持ちが一番わかっているのも彼女で、一番仲のいいのも彼女である。
そこにこの5人を冷静に見つめる母親の妹が入ることにより、家族のバランスが見事に取られる事になる。

ストーリーは開始後5分で、いきなりアンが弁護士に訴訟の依頼をするシーンとなる。
そこから訴訟に向けてストーリーが動き出すのだが、ところどころで家族それぞれがこれまでの経緯を振りかえるシーンが織り込まれる。
この織り込み方が秀逸だ。

あまり書くとネタバレになるが、特にカギとなるのがケイト。
彼女の壮絶なる闘病生活は、観ていて胸が締め付けられる。
だが、ボーイフレンドと過ごした日々は、その部分だけを切り取るとまるで青春映画のようでもある。

法廷のシーンでは、弁護士が母親に鋭く迫る。
その部分をより鮮明にするために、母親の職業を弁護士にするなど、細部の設定も行き届いている。
その他にも、アナの年齢設定、ジェシーの病気、弁護士の病気、そして娘を失った判事など、すべての設定が有意義に働いている。

唯一「?」と感じたのは、主治医がケイト向かって「もう打つ手はない。苦しまないようにしてあげる」と告げるシーン。
いくらアメリカでも、15歳の少女にそんな絶望的な事は言わないとは思うが、ひょっとするとアメリカの医療とはそういうやり方なのかもしれない。
いずれにしろ違和感を感じるシーンはほとんどない、ほぼ完璧な映画と言える。
音楽も素晴らしいし、一つ一つの台詞にもまったく無駄がない。

激しく吐血をして、どんどんやつれて行くケイトを観ているだけでも涙が溢れそうになる。
実際隣で観ていたカミサンは、最初の15分から最後までずーっと泣いていた。
そうそう、おそらくそのためと思われるが、劇場に入る前に小さい箱入りティッシュを1人1箱もらったよ。

土曜の23:35始まりのナイトショウという事もあり、劇場にいたのは20人弱。
チケットカウンターにいた若者はほとんどが、同時間帯に始まる「カイジ」のチケットを購入していた。
でも、この作品のレベルは20人弱程度ではない。
「生きる」という事と「愛する」という事を、上っ面だけではなく核心部分で厳しく問うている映画だ。
もっともっといろいろな人に観てもらいたい。
できれば、夫婦二人での鑑賞をお勧めする。


77.私の中のあなた




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