「フィクサー」と「砂時計」
まず「フィクサー」。
タイトルの「フィクサー」は、「黒幕」という意味ではなく「もみ消し屋」。
主役のジョージ・クルーニー演じるのがこの「もみ消し屋」で、いわゆる正義感に燃える弁護士ではなく、交通事故の示談などをチマチマ行ったりするのが仕事。
今度の仕事も、薬害訴訟に絡む弁護士が起こした問題の後処理だった。
しかし交渉を続けるうちに、巨大な企業悪が潜むことに気付く。
内容は以上の通り。
ストーリーの途中から、だいたい結末が読めてきてしまうのだが、展開自体はそれほど悪くは無い。
ただ、ややネタバレになってしまうのだが、ジョージ・クルーニー演じるマイケル・クレイトンの豹変振りが「ちょっとなぁ」と言った感じ。
エリート街道から落ちこぼれて博打大好き、そして借金でクビが回らない。
別れた奥さんは別の男と暮らしており、一人息子ともたまにしか会えない。
そんなダメ弁護士が、巨悪の存在に気付いた瞬間、正義感に目覚めてしまう。
たしかに弁護士なら悪に立ち向かってもおかしくないんだけど、それまでのクレイトンのダメダメ振りを見ると、正義感よりお金を選びそうな気がしてならない。
実際自分がクレイトンの立場であったのなら、あそこまで世間の波に飲まれまくった人生なら、やっぱりそのまま飲まれる方を選んじゃうと思うけどなぁ。
一瞬だけ正義感にかられて行動しても、その場限りで次につながりそうもないし。
そんな事言ったら映画として成り立たないんだけど、途中までのダメダメ振りがリアルなので、最後の「正義の味方」への変身に、ちょっと違和感を感じてしまった。
続いて「砂時計」。
原作は少女漫画で、普通だったらまず観に行かない映画。
それでも観たのは、当然夏帆が主役だから。
贔屓目なしでも、この作品での夏帆の演技力は非凡だ。
落ち込んだり喜んだり、かなり感情表現が必要な役立ったが、見事に演じている。
ただし映画としての出来は今ふたつくらい。
原作は未読だが、おそらくかなり長い話なのではないだろうか。
その重要な部分だけを取上げて、無理やり2時間の枠に収めしまったような感じだ。
特に、少女時代の重要な役どころである、藤と椎香の描き方が雑すぎ。
wikiで調べたところ、藤はとある理由で留年しているらしいのだが、この部分の説明が皆無なので、なんで同学年なのに椎香が藤の事を「お兄ちゃん」と呼んでいるのかまったくわからない。
さらに藤が「もう家に縛られるのはやめるんだ」と言うセリフがあるのだが、月島家の説明が何一つないので、これもなぜ家に縛られているのかが全然わからない。
このあたりがまったく訳がわからないので、杏、大悟、藤、椎香の微妙な関係も表現しきれず、大人になったラストシーンでは藤も椎香もすでに主要な役どころではなく、尻切れトンボで去っていくことになる。
これでもかなり登場人物とエピソードを削ったようだが、映画化するのであれば、もっと思い切った変更をするべきではなかったか(たとえば椎香を登場させないとか)。
予告編はよかっただけに、ちょっと残念な作品だった。
45.フィクサー
46.砂時計