原作は村上春樹で、「レキシントンの幽霊」に収録されているという事なので読んだことがあるはずだが、内容はまったく記憶に残っていない。
オリジナル版の公開は2005年、今回4Kリマスター版が公開され、まだ未見だったため観に行くことにした。
監督の市川準、音楽の坂本龍一とも、すでに鬼籍に入っている。
トニー滝谷(イッセー尾形)はジャズマンの滝谷省三郎(イッセー尾形二役)の息子だった。
母はトニーを生んだ直後に死亡、省三郎は世話になった米軍将校の名前から、息子にもトニーと名付けた。
従ってトニーは本名である。
父は公演で留守がちだったため、トニーは通いのお手伝いさんの世話を受けて育つ。
そのためか人との接触をあまり好まなかった。
トニーは美術大学を出た後イラストレーターになるが、仕事以外の趣味をほとんど持たなかった。
だがある日、作品を受け取りに来た出版社の英子(宮沢りえ)に一目ぼれして、恋に落ちてしまう。
トニーは英子と18歳も年の差があったがプロポーズし、英子は迷った末にそれを受け入れる。
モノクロの世界で生きていたトニーだが、英子との結婚で世界に色が付いた。
しかし英子には異常なほど洋服に執着し、気に入った服は手に入れずにいられないと言う性癖があった。
村上春樹原作の映画は、「ノルウェイの森」「ドライブ・マイ・カー」、アニメの「めくらやなぎと眠る女」、そして「アフター・ザ・クエイク」のTVドラマ版「地震のあとで」を観ている。
それぞれ、村上春樹の世界観はある程度再現できていたとは思うが、映像化することでやはり微妙な違和感を感じた。
だがこの映画はほとんど違和感を感じなかった。
それは物語のほとんどを、西島秀俊のナレーションが進行していたからだろう。
多くの小説はたいてい、作品全体の文字数中、登場人物のセリフの割合は少ない。
セリフ以外の説明で進行する小説がほとんどで、村上春樹作品はその比率が他の作品より少ないかもしれない。
主人公が無口な設定も多い。
さらに村上作品は独特のレトリックが特徴で、それにより特別な世界観が構築されている。
この作品も登場人物はほとんどセリフをしゃべらず、西島秀俊のナレーションで物語が語られる。
無口な主人公に、セリフ以外でも演技ができる芸達者のイッセー尾形を、そして英子とひさこに宮沢りえをキャスティングしたことで、村上春樹の世界観がほぼ完全に再現されていた。
映画を観た後で調べたら、予算の関係でセットもかなり簡素化されていたそうだ。
そのためか、映像の半分くらいは横スクロール(パン)で構成されている。
だが逆にその結果、むしろ村上春樹の世界観を的確に再現していたように感じた。
簡素化されたセットも無機的に見えて効果があったと思う。
市川準の力量を見せつけられた感じだ。
市川準はCM監督出身で、バブルの頃に人気CMを多数生み出して名を挙げたが59歳で早世している。
もし彼が早世していなければ、もっと多くの名作を生みだしていたのではないかと思う。
53.トニー滝谷
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