「ほどなく、お別れです」
客席の少ない小さなスクリーンだったが、開始15分で会場中にすすり泣く声が響き渡る、そんな映画だった。
就活中の清水美空(浜辺美波)は苦戦をしておりこれまで全敗、そんな時恩師の告別式に参加する。
駆け付けた葬儀場には、なぜか平服の若い女性(古川琴音)が立っていた。
その女性は美空と目が合うと、「お願いがある」と話しかけてくる。
美空は気が進まなかったが女性の話を聞くことにした。
女性から、「控室にある鞄を棺の中に入れて欲しい」と言付かった美空は、それを葬儀プランナーの漆原(目黒蓮)に伝える。
控室には故人の夫の亮太(北村匠海)がいた。
亮太は妻の玲子を事故で亡くし、妻は出産間近だった。
悲しみから立ち直れずにいた亮太に、漆原が声を掛ける。
すると、控室に紙オムツが詰まった鞄がある事がわかった。
それは里帰りをする玲子のために、亮太と玲子が用意した紙オムツの鞄だった。
漆原は「天国でも紙オムツが必要だと言う奥様のお言葉です」と、優しく亮太に伝えた。
美空に伝言をしたのは、故人の玲子だったのだ。
美空は、死者が見え会話もできると言う能力を持っていた。
漆原はすぐに美空にその能力がある事を見抜き、葬儀社で働かないかと誘う。
逡巡する美空を見て、漆原は美空の両親の説得までした。
そして美空は葬儀社で働くことになる。
最初の20分ほどが亮太と玲子のエピソードなのだが、ここで会場のほとんどの人が泣き出した。
この後、5歳の娘を病気で亡くす理恵(志田未来)と宏之(渡邊圭祐)のエピソードが続くが、この段階では会場中にすすり泣きが響き渡り、ハナをかむ音も聞こえてきた。
二つのエピソードで全体の1/3くらいまで話が進行するが、とにかく見せ方が巧く、この二つのエピソードで完全にストーリーに引き込まれる。
故人である古川琴音の残された夫を心配する演技、そして絶望で悲しみのどん底にいる北村匠海の演技、どちらも若くして演技力のある二人だが、わずか15分でその実力を存分に見せつけられた。
続く理恵と宏之については、娘に対しての後悔しかない母の理恵が絶望して泣きじゃくるのだが、一方で父である宏之は控えめで押し殺した演技となる。
この二人の相対する演技が、非常にリアリティを生んでいた。
さらに、幼過ぎて自分の死を理解できない娘に対して、美空が戸惑いながらも接していく。
子役の演技の巧さもあり、涙を流さずにはいられないシーンとなった。
この後のエピソードは、前二つのエピソードと比較すると、落ち着いて見ることができる。
通常なら感動するエピソードを後に持ってきそうなものだが、先に感動するエピソードでストーリーに引き込まれることによって、作品全体の「死と向き合う」と言うテーマがより深く染み渡ったように思う。
おそらく「国宝」の流れに乗って、「2026年は『ほどなく、お別れです』だ」、と言う話が出てくるだろう。
個人的には「国宝」レベルとまでは思わないが、それでも映画館に足を運ぶ人が増える作品になることは、間違いないと思う。
27.ほどなく、お別れです
by ksato1
| 2026-02-11 00:05
| 映画
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