原題は「Sew Torn」で直訳すれば「破れを縫う」だが、なかなか印象的な邦題の作品である。
そしてこの邦題通りの、非常に面白い作品であった。
スイスの田舎町に住むバーバラは、亡き母から移動裁縫屋を継いでいたが、経営が成り立たずに店をたたもうとしていた。
ある日年老いたグレースから、3回目の結婚のドレスの衣装を合わせる依頼を受ける。
直前まで忘れていて、慌ててグレースの部屋を訪れるバーバラ。
背中のボタンを縫っている最中に、グレースが余計なことをしたため、バーバラはボタンを落としてしまった。
結婚式に間に合わないと怒り狂うグレースを、バーバラは店に代わりのボタンがあるからと説得し、急いで店に戻ることにした。
その帰り道で、ヘルメットの男と若い男の二人が道で倒れているのを発見する。
二人とも大けがを負い、そばにはそれぞれ銃が落ちていて、さらに若い男の手は切れた手錠で繋がれ、切れた手錠の逆側は大型のアタッシュケースに繋がれていた。
二人の間に白い粉が入った袋が落ちており、麻薬取引でもめたことが一目でわかる
車を止めたバーバラは、3つの選択を考えた。
完全犯罪、通報、直進だ。
完全犯罪を選んだバーバラは、糸と針を上手く使い、二人が撃ちあうように仕向ける。
首尾よく二人が撃ちあった後、バーバラはアタッシュケースを車に積んで店に戻ろうとした。
しかしその時、現場に針を残したことを思い出す。
針には「移動裁縫屋」と刻印があり、現場検証で発見されたらバーバラが関係していたことが発覚してしまう。
バーバラは急いで現場に戻って針を回収しようとしたが、ヘルメットの男は死んでおらず、意識を取り戻した。
二番目にバーバラが選んだのは、通報だ。
バーバラはそのエリアの警察官であり、公証人であり、検事でもあるエンゲルに事故を通報する。
しかしバーバラは、エンゲルが到着する前にアタッシュケースをネコババしようとしていた。
その事をエンゲルに見抜かれ、二人とともに警察署に連行されるバーバラ。
重症の二人のための救急車を待つ間、二人と一緒に一つの大部屋で拘束された。
そこに結婚式を挙げるため、ボタンの代わりに大きい安全ピンでドレスの背中を留めたグレースが、新郎と一緒にやってくる。
公証人も兼ねるエンゲルは、3人を拘束したままグレースの結婚式のために隣の部屋に移る。
バーバラは、エンゲルが3人の手錠のカギを机の上に置いてあることに気づき、ヘルメットの男と共謀してカギを手に入れようとした。
だが、安全ピンで背中を血だらけにしたグレースを連れ、エンゲルが隣の部屋から戻ってきてしまう。
バーバラが三番目に選んだのは直進だ。
事故を見なかったことにして店に戻り、ボタンを取ってグレースの部屋に戻ろうとする。
だが再び事故現場を通過しようとすると、そこにはもう一人の男が立っていた。
男はヘルメットの男を射殺し、若い男を助けようとしていた。
バーバラは車をUターンさせ逃げようとするが、男が追ってくる。
バーバラは顔見知りのレストランに逃げ込むが、男と血だらけの若い男もレストランに入ってきた。
バーバラが選ぶ選択肢がそれぞれストーリーになり、別の未来が待っていると言う構成だ。
この構成自体が面白いのだが、さらにそれぞれのストーリーの脚本がきちんと練りこまれている。
特に最初の完全犯罪の、バーバラの針と糸の使い方が秀逸だ。
もちろん実際には、細い糸はすぐに切れてこの映画のような展開にはならないだろう。
しかしバーバラの必死の表情と器用な手先を見ていると、現実にも起こり得そうに思えてくる。
それ以外にも、時間経過を表すロングショットのカメラワークや、バーバラが乗っている車のデザインなど、ここそこに監督の非凡なセンスが垣間見えた。
監督は初長編作品との事だが、おそらくこの後すぐにハリウッド作品でメガホンを取るに違いない。
そのレベルの才能を感じるし、作品自体がハリウッドリメイクされるかもしれない。
主演女優もまだ無名とのことだが、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のノオミ・ラパスのように、こちらもすぐに世界的な名女優になるだろう。
3.世界一不運なお針子の人生最悪な1日
by ksato1
| 2026-01-10 00:05
| 映画
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