原作は未見だが大藪春彦新人賞を受賞しており、映画もなかなかのピカレスクな作品だった。
マモル(林裕太)は兄貴分のタクヤ(北村匠海)とともに歌舞伎町で、SNSで寂しい男を引っかけて戸籍を売買する闇ビジネスをしていた。
マモルは、タクヤが川に放り投げたシャツを拾いに行くほど、タクヤの事を慕っていた。
ある日タクヤとマモルは、闇ビジネスを取り仕切る半グレ集団「メディアグループ」の佐藤と食事をしていた。
その後一人で立ち去ろうとしたタクヤをマモルが尾行すると、タクヤが梶谷(綾野剛)と言う男から偽造の免許証を受け取っているのを目撃する。
マモルはタクヤにこの仕事から足を洗うのかと問い詰めるが、タクヤは何も言わない。
失望したマモルはタクヤに背を向けて立ち去った。
翌日、佐藤とグループの幹部であるジョージたちが突然マモルの元を訪れる。
佐藤がマモルのスマホを確認するが、マモルには何が起きているのかわからない。
そしてジョージに殴られて気を失ってしまう。
目を覚ますとマモルは手足を縛られており、タクヤがジョージのカネを持ち逃げしたと、佐藤が教えてくれた。
そしてタクヤの部屋に行って、部屋の中にあるテディベアのぬいぐるみを持ってくるよう命令された。
マモルが言われた通りタクヤの部屋に行くと、床には血の跡がべっとりと残っていた。
その時スマホにタクヤからのメールが入る。
タクヤからのメールにマモルが涙ぐんでいると佐藤が現れ、テディベアと金目の物をバッグに詰め始めた。
お前も好きな物を持って行っていいぞと佐藤に言われたマモルは、以前タクヤが川に放り込んだシャツと、冷蔵庫から冷凍のアジを取り出した。
タクヤは格闘技のジムで梶谷と親しくなっていた。
弟のためにカネが必要だったタクヤは、梶谷に誘われて闇ビジネスに手を染める。
しばらくすると、タクヤは佐藤からジョージのカネを狙う話を持ち掛けられる。
仲間の一人が敵対する池袋連合に寝返ったので、その男にすべてを背負わせるという筋書きだった。
タクヤはジョージの女の動きを探り、誰も部屋にいない時間を割り出す担当だったが、予想外に女が部屋に戻ってきしまった。
実行犯の男はなんとかカネを奪うが、話が違うと激怒する。
佐藤は実行犯にカネを渡して黙らせ、残りのカネをトランク倉庫に隠し、そのカギをテディベアのぬいぐるみに入れてタクヤに渡した。
作品は柿崎マモル、松本タクヤ、梶谷剣士の3人の視点で、3部に分かれて構成されている。
最初の柿崎マモルの章ははっきり言ってよくある半グレ集団の裏切り物語のように見えるが、松本タクヤ、梶谷剣士と章が進むごとに、3人のバックグラウンドが明らかになっていく。
この見せ方が非常に巧い。
少々ネタバレになってしまうが、タクヤは弟の治療費のために闇ビジネスの世界に入るが、弟は死んでしまう。
マモルをかわいがるのは、マモルに弟の影を重ねているからだ。
そして梶谷は直接マモルとの接点はないが、そんなタクヤの心情を知っている。
悪人になりきれない3人の葛藤と苦悩、もがき苦しむ姿の描き方が巧みだ。
個人的に、どんどん追い詰められて逃げ場がなくなる作品が好きという事もあるが、梶谷の章ではかなり感情移入してしまった。
そこそこ激しい暴力シーンがあるためレーディングもP12になっており、誰にでも勧められる作品ではないかもしれないが、闇社会で苦悩するストーリーが好きな人なら満足できると思う。
156.愚か者の身分