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「宝島」

原作は直木賞受賞作で未読だが、映画はコザ暴動を中心に描かれている。
戦後80年という事で制作されたのかどうかはわからないが、復帰以前の沖縄について詳細に描かれていると思った。

1952年の返還前の沖縄、グスク(妻夫木聡)はリーダーのオン(永山瑛太)たちと共に、たびたび米軍基地から物資を盗み、人々に安く売ったり時には無料で配布していた。
グスクたちは「戦果アギヤー」と呼ばれ、その夜もいつも通り基地に侵入した。
オンはいつも「欲張るな、生きて帰ることが最大の戦果だ」と話していたが、その日は武器を盗もうとしていた仲間がいた。
そして警戒していた米兵に見つかり、仲間は散り散りになって逃げることになった。
グスクは一人でヤマコ(広瀬すず)の元に戻る。
ヤマコは恋人のオンの身を案ずるが、オンは戻ってこなかった。

数年後、グスクはオンの消息を探るために警官になっていた。
ヤマコは米兵相手にバーを経営するチバナ(瀧内公美)の店を手伝いながら勉強をし、教師になっていた。
オンの弟のレイ(窪田正孝)は盗みに入った時に米兵に捕まって懲役刑を受け、出所後はヤクザ組織に所属している。
グスクは女性が米兵に殺された事件を調査していたが、逮捕の直前にMPが現れ身柄を持っていかれてしまう。
返還前の沖縄では、警察よりも米軍の方が大きな力を持っていたのだ。
米兵が犯罪を犯しても裁判は基地内で行われ、無罪になることが多かった。

事件の一部始終を見ていた米民政府官僚のマーシャルと通訳の小松(中村蒼)は、グスクに「トモダチ」にならないかと持ち掛ける。
事実上、米政府のスパイという事だが、グスクは米軍基地内に残されたオンの手掛かりの提供を条件に、マーシャルの申し出を受けることにした。
手掛かりを得たグスクは、一緒に基地に侵入した謝花ジョー(奥野瑛大)に会うことにする。
するとジョーは、「あの夜オンは予定にない戦果を手に入れた」と教えてくれた。

その間も、米軍の行動に島民は振り回され続ける。
ヤマコが勤める小学校に米軍機が墜落して子供たちが犠牲になったが、パイロットは事前に脱出して無事、米軍は機体の故障と発表するだけだった。
泣き崩れるヤマコの元に、ウタと名乗る少年が近づきヤマコを慰めた。

やがて1972年に、沖縄の本土返還が発表される。
しかし米軍基地はそのまま沖縄に残ることとなり、島民の不満は頂点に達することとなった。

ストーリーはこの後、コザ暴動へと発展する。
コザ暴動は本土返還前の事件という事もあり、資料もあまり見つかっていないのか、現在もあまり語られることは多くない。
私自身も、2022年の沖縄返還50年の時、いくつもの報道なかで1度だけ特集番組を見ただけだ。
その時には米軍、警察官に死者が出たのに逮捕者はいなかったと伝えていたが、今回再度Wikiで調べると、死者はいなかったようだ。
しかしそれでも、相当な暴動事件だったのにもかかわらず逮捕者がいなかったのは、それだけ当時の島民の不満が大きく、逮捕者が出ればさらなる暴動に繋がる可能性があったからなのだろう。

映画もここまでの描き方は見事だと思った。
行方不明のオンを捜すグスク、ヤマコ、レイと、当時の世情を上手く交錯させている。
だがコザ暴動の最中に、レイが米軍基地に乗り込むあたりから、ストーリーがおかしくなってくる。
当時、レイと同じ考えを持った人もいたとは思うが、ここで突然リアリティがなくなってしまった。
さらにその後、行方不明になったオンの行動が明かされるのだが、これもかなり強引な展開で、かつありきたりな感じがしてしまった。
責任感の強いオンなら、「戦果」とともになんとかグスクたちの元に戻ったのではないかと思う。

戦時中ではなく、戦後も沖縄の人たちは厳しい毎日を強いられていて、その事に触れている点は素晴らしいと思うが、物語の落としどころが沖縄とはあまり関連性がないような感じになっていた。
それとどうでもいい話かもしれないが、セリフのほとんどが沖縄語だったため、よくわからない部分もあり、それを考えながら鑑賞するのは、上映時間が長い事もありやや疲れた。
さすがに全編字幕は必要ないと思うが、ところどころ、それほどメジャーではない沖縄語には注釈が欲しかったとも思った。


129.宝島


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by ksato1 | 2025-09-23 00:05 | 映画 | Comments(0)