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ギンレイの2本(20200118)

上映中のギンレイの2本。

まず「新聞記者」。
先日発表された日本アカデミー賞で5部門ノミネートされているので期待していたが、お話にならないレベルの呆れた薄っぺらい中二病作品であった。

外務省から内閣調査室に出向している杉原(松坂桃李)は、上司の多田(田中哲司)の命により、情報をリークして政府に都合のいい記事を週刊誌に書かせていた。
そして杉原自身も、その仕事に疑問を感じていた。

吉岡(シム・ウンギョン)は東都新聞の記者をしていたが、ある日FAXで送られてきた大学院大学新設に関する情報を見せられる。
特区に新設される大学院大学は、文部科学省ではなく内閣府が認可することになっていた。
吉岡がFAXの出元を調査すると、内閣府の神崎(高橋和也)と言う男が送信者の候補にあがる
神崎は杉原の先輩で以前から仲が良かったが、かつてある事件が起きた時に神崎が一人で責任を取らされており、そのことに杉原は心を痛めていた。

吉岡がさらに調査を進めると、神崎はビルから飛び降りて自殺してしまう。
ショックを受けた杉原は真実を探ろうとするが、多田から事実を隠ぺいするための情報をリークするように命じられる。

おそらく、加計学園問題からヒントを得て作られた作品だろうが、政府がメディアを使って都合のいいように情報を捜査しているという、あまりにも陳腐な内容に心底びっくりした。
しかも杉原が勤務するオフィスは、公務員が何十人もPCでSNSに情報をリークし続けるという気持ちの悪い絵面で、まるで新興宗教の信者が教祖のために働いているように見えた。
平成も終わった令和のこの世の中で、こんな戦前の政府指導の情報操作のような表現を見るとは思わなかった。

さらに、原案を考えたのが新聞記者のためか終始、新聞=正義、週刊誌=政府の手先の悪のメディアの図式で描かれている。
この図式が本当に安っぽい。
新聞記者のほとんどが、自分たちこそ正義だと大勘違いしている人種であることはよくわかっているが、その醜い一人よがりがまざまざと展開していた。
今や週刊誌より新聞の方が間違った記事が多いことを、理解していないのか、はたまた事実を受け入れがたいがためにわざとこういう表現で批判に反発しているのか、いずれにしろ新聞記者のレベルの低さを露呈している。
ストーリー構成も単純で酷い。
何かあれば関係者が自殺する。
それも本当は自殺ではなく、政府に殺された的な描き方で、まるで日本は政府主導のアサシン天国である。
ラノベ作家に憧れる中学生ならいざ知らず、大の大人が商業映画でこんな脚本を書くとは思わなかった。
すでに21世紀になって20年も経つのに、子どもが生まれたばかりの杉原が「妻と子供は可愛くないのか」的な古臭い脅しを受けるのにも辟易した。

配役も、なぜ吉岡にシム・ウンギョンを配したのかわからない。
シム・ウンギョンと言えば「怪しい彼女」の名演技だが、この作品では日本語を発音するのに一生懸命でまったく演技ができていない。
最近は日本映画に出演するようになったようだが、はっきり言ってこの作品では素人同然の演技で、気の毒としか言いようがない。
だったら杉原の妻役だった本田翼の方が、正義感の強い演技ができて合っていたと思う。

唯一良かったのは、アングルを含めた映像のきめの細かさだ。
それが監督の手腕なのか撮影監督の手腕なのかわからないが、映像全体の雰囲気が良かったためなんとか最後まで観ることができた。
それがなかったら途中で席を立っていたかもしれない。


続いて「よこがお」。

リサ(筒井真理子)は美容院で美容師の和道(池松壮亮)と知り合った。
偶然近所に住んでいることに気づいた二人だが、リサは和道の部屋が窓から見えるアパートに住み、和道を監視するかのように暮らしていた。

市子(筒井真理子)は訪問看護師である。
かつて画家であった大西塔子(大方斐紗子)の介護をしていたが、大西家から信頼を得ており、時間外に塔子の二人の孫娘に勉強を教えたりしていた。
ある日、喫茶店で市子が基子(市川実日子)とサキに勉強を教えているときに、市子の甥の辰男が本を持ってやってくる。
辰男はサキと入れ違いに近かったが、ひと目でサキを気に入り車で連れまわしてしまった。
当然事件となり、辰男は逮捕される。
テレビでニュースを知った市子は、サキの母に真実を告げようとするが、基子に止められて話すタイミングを失ってしまう。
基子は、サキは喫茶店で辰男と会ったことを覚えていないから、黙っていれば関係がバレることはないと言ったが、いつの間にか週刊誌の記者の知るところとなってしまった。
その後はメディアが市子の元を訪れ、市子の生活はめちゃくちゃになってしまう。
市子は訪問看護の会社に所属する医師の戸塚(吹越満)と結婚する予定だったのだが、戸塚とその連れ子に迷惑を掛けるわけにはいかず、会社も辞め姿を消してしまった。

あまり詳しく書くとネタバレになってしまうのだが、事件によって人生を狂わされた女の話である。
クライマックス付近ですべての話がつながり、なるほどと思うのだが、途中までは並行で進む話の前後がわかりづらく、少々違和感を感じてしまった。
主役の筒井真理子をはじめ、主なキャストが実力者ぞろいなのでまずまずの出来となっていたが、できれば序盤において、もう少しストーリーを整理しやすい見せ方にした方がよかったと思う。


16.新聞記者
17.よこがお


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by ksato1 | 2020-01-18 00:41 | 映画 | Comments(0)