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「ファースト・マン」

「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼルが、ライアン・ゴズリングを起用した新作だ。
人類で初めて月面歩行したニール・アームストロングの伝記的作品で、得意の音楽ジャンルから離れても、さすがのクオリティを見せつけてくれている。

ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は民間で飛行機開発のテストパイロットをしていた。
ある日大気圏ギリギリの高高度でテストをしていた時、ニールは大気圏に弾かれテスト機を壊してしまう。
そして同時期、まだ幼かった最愛の娘カレンを病気で失ってしまう。
失意のまま出社するニールだったが、テスト機での失敗を理由に飛行禁止命令を受けてしまった。
ニールはこれを機に、かねてから声が掛かっていたジェミニ計画の宇宙飛行士に応募する。
見事試験に受かったニールは、家族とともにヒューストンに移り住んだ。

ヒューストンに移った後、妻のジャネット(クレア・フォイ)は二人目の男の子を出産、家族は充実しているように見えた。
しかしジェミニ計画は難航を極め、宇宙開発についてアメリカはソ連に大きく後れを取ってしまっていた。
焦るNASAは無理な実験を繰り返し、犠牲者も出る。
それでもニールは宇宙飛行士として月に行く事に執着し、家族を顧みようとしない。
そんなニールを、ジャネットは表面上理解するのだが、内心はいつニールが事故に遭うか、不安で一杯であった。

東西冷戦時代の、米ソの宇宙開発競争を描いた映画作品は他にもある。
マーキュリー計画の「ライトスタッフ」や「ドリーム」、アポロ計画の「アポロ13」などだ。
「ライトスタッフ」と「アポロ13」は未見だが、名作の呼び声が高い。
事実をベースにしている映画にデフォルメを入れず忠実に再現してしまうと、ややもすると盛り上がりに欠けてしまうケースも多いのだが、宇宙開発競争を描いた作品は、デフォルメ抜きの事実がドラマティックな事が多いため、エンターテイメント作品としてとしてもクオリティが高くなりやすい。
そしてこの作品は、「高くなりやすいクオリティ」のさらに上を行く作品である。

まず、ライアン・ゴズリングのキャスティングが素晴らしい。
「ラ・ラ・ランド」のセバスチャンは明るいキャラクターだったが、この作品では正反対の感情を押し殺した役柄になっている。
「ブレードランナー 2049」でもやはり押し殺した役であったが、どちらか言えばこういう役の方が合っているように思う。
テスト機やロケット内のコクピットの描き方、宇宙空間の描き方は定番ではあるが、きちんと細部まで行き届いた美しい映像になっている。
カメラワークも含め、取り立てて新しい手法を取り入れている訳ではないのだが、逆に映画のお手本とも言えるべききめの細かさ、完成度の高さであった。

さすがに「ラ・ラ・ランド」を初めてみたときの衝撃はなかったが、新たなるジャンルでも高い水準の作品となっており、この監督の力量を改めて感じさせられた。
次回作でどのような作品を作るのか、今から楽しみだ。


22.ファースト・マン


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by ksato1 | 2019-02-16 00:03 | 映画 | Comments(0)