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年の終わりは「時をかける少女」(2006年版)

年の瀬恒例、HDDレコーダーの在庫整理で見た「時をかける少女」。
夏に公開された「未来のミライ」の番宣で放送されたものだ。
個人的にはこの「時をかける少女」が、細田守の最高傑作だと思っている。
正直この後の作品は、評判にはなっているもののあまり評価できない。

で今回は、「時をかける少女」が他の作品よりなぜ面白いのかを考えながら見てみた。
まず、脚本が秀逸だ。
担当したのは奥寺佐渡子。
作品数は多くないが、「パーマネント野ばら」や「八日目の蝉」を手掛けており、TVドラマでも「夜行観覧車」「Nのために」「リバース」などの湊かなえ作品を担当している。
ちなみに「コーヒーが冷めないうちに」の脚本も彼女で、最近は塚原あゆ子と組むことが多いようだ。

そして「時をかける少女」はアニメ作品であるが、子どもやオタクに媚びるような脚本ではない。
朝早く学校に来ている功介に向って千昭が「ちゃんとオナってるのかよ」と言ったり、真琴に「タイムリープしてね?」と言うなど、いかにも今風のセリフでリアリティを演出している。
このあたりの脚本の妙が、まず作品を面白くしている。

さらに音楽がいい。
担当は吉田潔と言う人だが、TVのアニメはドキュメンタリーを主戦場としているようで、映画作品は他には担当していないようだ。
しかし、この作品の舞台である真夏の高校を見事に表現したBGMで、雰囲気が盛り上がっている。
奥華子の歌の挿し込みは細田守の演出かもしれないが、いずれにしろこれも効果的である。

それ以外にも、キャラクターデザインが貞本義行と言うのも良かった。
貞本義行はこの後の「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」も担当しているが、細田作品のキャラクターは貞本義行の方があっていると思う。

このメンバーを集められたのは、マッドハウスだからこそだろう。
制作の齋藤優一郎はマッドハウスを退社した後、細田守とスタジオ地図を立ち上げ、制作に名を連ねている。
しかしながら「時をかける少女」以降の作品がどんどん劣化していることを考えると、申し訳ないが齋藤個人の力よりマッドハウスのノウハウが作品を面白くしていたと言わざるを得ない。
声優も、当時17歳でまだ長崎から通っていた仲里依紗を起用している点でセンスがいいが、おそらく齋藤優一郎ではなく他の誰かが起用したのだと思う。
ちなみに、1学年下で功介に想いを寄せる果穂の声を担当しているのは、これまた16歳でまだ無名だった谷村美月である。
マッドハウス自体は、主力だった今敏亡き後、長編映画は手掛けなくなってしまった。
かなり残念である。

この作品が、日本アカデミー賞に最優秀アニメーション部門が設立され、その最初の受賞作品である事を知る人は少ない。
だが、日本アニメ映画の中でもおそらく5本の指に入る名作だ。
この作品を基に、仲里依紗主演の実写版と黒島結菜主演のTVドラマも制作されている。
ファンが多いことの証明だ。
年を追うごとにさらに評価され続ける作品と言えるだろう。


152.時をかける少女(2006年版)(再)


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by ksato1 | 2018-12-29 00:05 | 映画 | Comments(0)