「万引き家族」

カンヌでパルムドールを獲得した是枝作品。
予告編やTVCMでだいたいのストーリーは予測しており、ほぼその通りの展開であったが、それでも見終わった後は唸らせる作品であった。

日雇いで工事現場で働く柴田治(リリー・フランキー)は、クリーニング店に勤める妻の信代(安藤サクラ)、息子の祥太(城桧吏)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)、そして祖母の初枝(樹木希林)の5人で暮らしていた。
住む家は初枝の家で、築何十年もたった2間しかないボロボロの狭い平屋。
そこで家族5人が生活していた。
そしてこの家族は、治と信代が働き初枝の年金はあるものの、生活費の足りない分を万引きで補っていたのだ。

ある寒い夜、治と祥太が万引きから戻る途中、アパートの玄関先で震えている少女を発見する。
かわいそうに思った治が家に連れて帰るが、信代は誘拐になるから家に帰そうと主張する。
仕方なく治は信代とともに少女を家に帰そうとするが、その部屋からは夫婦の怒鳴りあう声が聞こえてきた。
その中には「私だって生みたくて生んだわけじゃない」という女性の声もあった。
少女の体に傷があったこともあり、治と信代は少女を連れ帰って一緒に暮らすことにした。

貧しいものの仲良く暮らす家族に囲まれて、少女は少しずつ心を開いていく。
だがそんなときTVのワイドショウでは、少女が行方不明になっているのに捜索願いが出されておらず、両親が少女を殺した疑いがある、と報じていた。
治と信代は少女の髪を切り、「りん」と言う名前を付けて隠すことにした。

その後治は、ケガをして工事現場の仕事を休まざるを得なくなる。
そのため祥太との万引きを増やすことになるのだが、そこにりんも連れて行ってしまう。
やがてりんも万引きを覚えようとし始めた。
一方信代も、クリーニング店の仕事をリストラされてしまう。
家族はりんを迎えてさらに明るく暮らすようになったが、あることがきっかけで、その形が崩壊してしまうのだった。

「歩いても 歩いても」「そして父になる」「海街diary」「海よりもまだ深く」と、家族のつながりの機微をテーマにし続けた是枝裕和。
これまでのどの作品も問題を抱えた家族の葛藤がテーマになっていて、未見だが「奇跡」もおそらくそうだったのだと思う。
そして今回も、絶妙な距離感の家族を描いている。
「そして父になる」だけは現在進行形の物語だが、それ以外の作品は、一見家族は安定して暮らしているように見えるが、過去のわだかまりを抱えていてそれが解消できていない。
今回の作品も、その部分を鋭くえぐっている。

家族に優しいように見える初枝だが、自分を捨てて他の女と家庭を作って死んだ亭主を許したわけではなく、事あるごとに後妻の息子の家にある仏壇に手を合わせに行く。
息子は申し訳なさそうに毎回3万円を差し出し、初枝はそれを当然のように受け取る。
そしてそれ以上に、後妻の息子夫婦に仕返しをし続けている。
それぞれ過去を持つ治、信代、亜紀はその初枝に甘えているのだが、初枝は自分を頼る家族の面倒はしっかり見ていた。

仲良く暮らしているように見えて、実は全員が家族を手放しで信頼しているわけではない。
互いに、心の一番深いところではつながりあえていない事がわかっていて、いつ裏切られても傷つかないように自分を護っている。
その微妙な距離感が、ストーリーが進むにつれ浮き彫りになり、見ていて切なくなってくる。

はっきり言って、感動作品ではない。
大人も子供も、必死に頑張って自分の弱さを隠している部分に、奇妙な共感を覚える作品だ。
ラストもはっきり光が見えているわけではないのだが、映画としての完成度は非常に高いと思う。
評判にたがわぬ名作であった。


75.万引き家族


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by ksato1 | 2018-06-18 06:32 | 映画 | Comments(0)