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「黄金のアデーレ 名画の帰還」

この映画も予告編を観ていなかったのでスルーしようと思ったが、TVの紹介で面白そうだったので観に行く事にした。
そして、絵画を取り戻すための法廷劇かと思ったのだが、実際には第二次世界大戦中、さらにその後のユダヤ人の苦悩と葛藤をも描いた作品であった。
ちょっと前に「ミケランジェロ・プロジェクト」を観た事もあり、非常に楽しめた作品だった。

マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は元々はオーストリアの名家に生まれたのだが、第二次世界大戦中に迫害を受けて夫ともにアメリカに亡命、その後はロスで姉と暮らしていたが、その姉が死去したため一人暮らしとなっていた。
洋品店を営みながら静かに暮らすマリアだが、大戦中にナチスに持ち去られた絵画返還のニュースを知り、知人の息子の弁護士、ランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)に相談をする。
しかしその絵画は、クリムト作の「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」、オーストリアの至宝と呼ばれる逸品だった。

ランディは父が高名な検事であり本人も優秀であったが、独立に失敗して法律事務所に就職したばかりだった。
無理と知りながら、事務所を説得してマリアと共にオーストリアに赴くランディ。
しかしオーストリア政府はこの絵画がナチスにより持ち去られたものではなく、そもそもの所有者であったアデーレからの寄贈であると主張、話し合いは物別れに終わった。

アデーレはマリアたちの叔母にあたった。
美しい彼女はクリムトのモデルとなり、名画は誕生した。
アデーレは子どもに恵まれなかったため、マリアと姉を実の子のように可愛がってくれていた。
その思いがあり、マリアはどうしても絵画を取り戻したかったのだが、オーストリアで裁判を起こすためには多額の保証金が必要となるため断念した。

しかしオーストリアからの帰国後、数カ月してランディがマリアの元を訪れる。
ランディはオーストリア政府がアメリカ国内で美術の作品集を出版しており、アメリカ国内で訴訟が起こせる事に気付いたのだ。
ロスの地裁で裁判の決定が下り、二人はオーストリア政府に対して正式に訴訟を起こす。
だが、裁判を専門にしている新聞記者からも「あなたたちは必ず負ける」と言われてしまう。
過去の戦争における美術品の持ち去りに対しては、有史以降どこでも行われていた事であり、この返還を認めてしまうと世界中が大混乱になるためだ。
ランディは妻にも告げずに弁護士事務所を辞めて、この訴訟を続けるのであった。

ストーリーの軸は、返還に関する法廷劇である。
しかし、華やかなマリアの幼少時代や、マリアたちが亡命するエピソードをサスペンスタッチで描くなど、ともすれば退屈になりそうなストーリーに巧くメリハリが付けられている。
さらにそのメリハリが、マリア、さらにはランディの、ルーツがユダヤ人である事への思いをも描いている。
もちろん映画なので脚色されている部分もあるのだろう。
オーストリアで協力してくれる雑誌記者のエピソードなどは、やや作られた感もないではない。
しかし実際の話をベースにした上で、エンターテイメントとしての要素を埋め込み、さらにホロコーストの悲劇も描いているという部分で、非常に完成度の高い作品であると言える。

歴史や絵画に興味のある人には、ぜひ観てもらいたい作品だ。


126.黄金のアデーレ 名画の帰還


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