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「銀の匙 Silver Spoon」

原作は読んでいないのでどこまで忠実なのかわからないが、吉田恵輔が監督をしているだけに、この映画単体でも青春映画としてきちんとまとまっている。

主人公の八軒勇吾(中島健人)は、札幌で進学校の中学に通っていたが落ちこぼれてしまった。
学校が嫌になった八軒は、親と一緒に暮らす事も嫌い、全寮制の大蝦夷農業高校酪農科に入学する。
クラスメートの御影アキ(広瀬アリス)や駒場一郎(市川知宏)、稲田多摩子(安田カナ)たちはみな酪農家に生まれ、酪農家を目指して高校に入学していた。
そして八軒は、目的もなく酪農高校に入学したことに対し、駒場や多摩子から「酪農をなめるな!」と非難されてしまう。

酪農科は実習が多いため朝も早い。
また、世話をした動物たちを食肉として売らなければならない。
酪農家に生まれた友人はその事に慣れていたが、八軒はついつい実習で世話をした豚に思い入れを強くしてしまったりする。
今まで体験した事のない酪農という仕事に触れ、八軒は少しずつ成長していく。

この他にも、八軒が無邪気な御影アキの言動に振り回されたり、実家が離農するために駒場が高校をやめるなど、よくあるストーリー展開が続く。
まさに青春映画の王道と言ってもいいだろう。
しかしありきたりのスト―リーではあるものの、北海道の農業高校という隔離された場所で生活する高校生の真っすぐな青春には心を打たれる。

高校1年生なのに、家畜を経済動物と言い切って貨幣的な価値でしか見ていなかったり、あるいは駒場の実家が破産することに対して「北海道で農業やっていたらいつ破産するかわからない」など、ちょっと達観しすぎかな、という部分もなくはない。
しかし、適度に異性の目を気にしたり、困っている馬術部をみんなで助けたりしているシーンを見ていると、こういう青春も楽しそうだなと、ちょっとうらやましくも思ったりする。
教条的に正論をふりかざしたりせず、困難に立ち向かっても結果は必ずしもいい方向に向く訳ではない、でも自分の可能性を信じて前を向く高校生に清々しさも覚える。

笑いと感動のメリハリも巧妙で、吉田恵輔の巧さが光る作品であった。


51.銀の匙 Silver Spoon


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by ksato1 | 2014-03-31 07:33 | 映画 | Comments(0)