「藁の楯」

久しぶりに、原作を読んでから映画を観た。

原作者は木内一裕で、かつて「ビー・バップ・ハイスクール」を描いていたきうちかずひろである。
マンガは基本的にギャグ路線であったが、「藁の楯」はバリバリのシリアス作品だ。

小学生の孫が暴行され、無残に殺された経済界の大物・蜷川隆興は、犯人の清丸国秀に懸賞金10億円を掛ける。
全国紙に広告をうち、インターネットサイトで清丸の情報を流し続けた。
その結果清丸は匿われていた仲間に殺されかけてしまい、たまりかねて福岡県警に出頭する。
警視庁警護課の銘苅は、同僚の白岩、警視庁捜査第一課の奥村、神箸、そして福岡県警の関谷の5人で、警視庁まで清丸を移送する命を受ける。

警察の威信をかけて清丸を移送する大計画が実施されるのだが、実は銘苅たちが一番注意しなければならないのは、銃を所持し清丸に近づく事ができる警察官であった。
さらに、移送中に清丸の位置を悟られないように偽装をしているのに、清丸サイトでは正確に清丸の所在地が表示されている。
警察内部に蜷川への密通者がいる事は明白だった。
しかも、清丸を警護している5人しか知りえない位置情報まで表示されている。
仲間さえも疑わなければならない状況の中、次々に賞金目当てで清丸を狙う者が襲いかかり、犠牲者が増え続ける。

原作は銃器や移送のための交通手段などをきちんと調べたうえで、かなり詳細に表現している。
銘苅をはじめ、各キャラクターの設定も巧く、なかなか練り上げられたストーリーだ。
ただ原作で言えば、クライマックス直前に出てくるタクシー運転手の由里千賀子がやや唐突。
最初はこの由里千賀子こそ、蜷川の最後の刺客じゃないかと思った。
エピローグもやや蛇足な感じもしたが、全体としてはストーリーにスピード感があり一気に読み進められた。

一方映画だが、こちらは映像による視覚化を巧く利用している。
まずキャスティングが巧く、銘苅の大沢たかお、奥村の岸谷五朗、関谷の伊武雅刀、清丸の藤原竜也、蜷川の山崎努は、それぞれセリフではなく表情と動作で感情を表現していた。
それにより、原作の設定を説明するための無駄なセリフが省略されている。
そして白岩を松嶋菜々子にした事で、ストーリー全体が引き締まった。
原作はやりきれなさを残したエンディングになっているが、映画は少しだけ心が救われる終わり方になっている。
途中のエピソードの省略の仕方も巧妙、さすが三池崇史、と言ったところか。

映画での唯一の難点は、東海道山陽新幹線がオレンジ色である事。
JRから協力を拒否されたため、台湾高速鉄道で撮影を行っている。
駅も台湾なので、どうしてもそのあたりは違和感を感じた。

とは言え、全体の出来としては悪くない。
アクション作品が好きな人にはオススメな作品である。


28.藁の楯


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by ksato1 | 2013-05-17 22:06 | 映画 | Comments(0)