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「ダークナイト」

この作品の原題が「The Dark Knight」だと言う事は、全部見終わった後に知ったよ。
てっきり「Dark Night」だと思ってた。
まあ、掛かっているのかもしれないけど。

前作でゴッサム・シティのヒーローとなったバットマンだが、バットマンを真似た「なんちゃって」が出現したり、またマフィアの間の秩序が乱れたりと、混乱を起こす原因ともなっていた。
そして異常者ジョーカーの出現である。

ある意味このジョーカーは、ゴッサム・シティの混乱の象徴とも言える。
悪が巣くうという、悪いなりに一定の秩序が保たれていたゴッサム・シティだが、変革を行うにはその秩序を壊して新しい秩序を構築しなければならない。
その間には当然混乱が生まれるのだが、その間隙を突いて登場したのがジョーカーだ。
今までの秩序をすべて廃し、自分の行動理念のみを唯一の秩序として行動する。
そこには、良心や罪悪感と言う言葉はまったく無い。
これまでの秩序であったマフィアすらドン引くような残虐性を持ち、本来向かうべき正しい秩序とは真逆の方向へ、ゴッサム・シティを導こうとする。

このジョーカーのキャラ設定が巧い。
冷静に考えると、単なる異常者なのになんでそんなに爆発物の知識があるんだよ、とも思うのだが、異常な行動力でいつもバットマンやマフィアたちの考えの先回りをして罠を仕掛ける。
普通の精神なら罪悪感のブレーキがかかるかもしれないが、すでにそのブレーキがないから常人が「そこまでするか!」という方向へどんどん突き進む。
ジョーカー役のヒース・レジャーは死後にアカデミー賞助演男優賞を獲得したが、決して彼が死んでしまったから受賞したのではないだろう。
本当に「この役者ホンモノじゃないの?」と思わせるくらいの、迫真の演技の異常者役だった。

ジョーカーのキャラ設定が巧いから、民衆の恐怖もまったく違和感がない。
ジョーカーが「誰かが弁護士を殺さないと、病院を爆破する」と脅迫するのだが、一般民衆がジョーカーにおびえて行動する部分に非常にリアリティがある。
今回、ゴッサム・シティの希望として正義の検事デントが登場するが、ジョーカーはこのデントの正義感さえ巧みに操り、彼に犯罪者を殺させて希望の星をも失墜させようとする。
そしてバットマンは民衆の恐怖と怒り、さらにデントの怒りと悲しみをすべて背負って「Dark Knight」となるのだ。
この、単純な勧善懲悪のヒーロー物にしないところが、クリストファー・ノーラン版「バットマン」の深い部分だろう。

「ダークナイト ライジング」を観ちゃうと、「アベンジャーズ」がひどく安っぽく見えちゃうんじゃないかと、ちょっと不安になってきた。


69.ダークナイト
by ksato1 | 2012-08-19 15:33 | 映画 | Comments(0)