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今回のギンレイの2本

今回のギンレイは渋い2本立てだ。

まずはアルゼンチンの映画「幸せのパズル」。
50歳になる平凡な専業主婦マリアは、誕生日プレゼントにジグソーパズルをもらい、ちょっとハマってしまう。
新しいパズルを見に店に行ったところ、パズル大会のパートナー募集の張り紙を見つけるのだが、そのパートナーがこれまで何回も決勝で戦った事のあるベテランで、マリアは彼にパズルの才能を見いだされる。
そしてマリアは、家族に内緒で大会に出るため練習を始めた。
やがて家族に大会に出ることを打ち明ける事になるのだが、予想通り家族はあまりいい反応を示さない。
それでも、生きがいを見つけたマリアはパズルに没頭する。
練習を重ねるうちに、マリアはパートナーから愛情を打ち明けられるが、もちろんそれは固辞する。
しかし大会で優勝したその夜、家族には秘密でパートナーと一夜を過ごしてしまった。

冒頭で、マリアがせわしなく誕生パーティの準備をするシーンが続く。
パーティが始まっても、大勢の招待客や家族のために甲斐甲斐しく働くマリア。
そして最後にマリアは誕生日のケーキを冷蔵庫から取り出し、ロウソクに火を点けるのだが、その火を消すのはマリア自身だった。
このシーンだけで、マリアがこれまでどれだけ家族のために主婦業をこなしてきたかが表されている。
それ以降も、家族からはいつも勝手な要望を付きつけられ、パズルの練習に対しては非難されるが、マリアはそれらを淡々と受け流す。
彼女のこれまでの不遇とは言わないが平凡な人生が、行間から垣間見えるようで非常に巧い作りになっている。

大会で優勝したマリアは、世界大会出場の権利および大会開催国ドイツまでの往復チケットを手に入れる。
マリアはいったいどういう選択をするのか。
しかし最後も、予想通りの淡々とした流れなのである。
映画としてはかなり淡泊かもしれないが、平凡な主婦の生活に少しだけ立った波風という意味では、非常に味のある映画である。


続いて「灼熱の魂」。
これは非常に重い作品だった。
カナダで暮らす男女の双子ジャンヌとシモンは、変わり者の母ナワルと暮らしていた。
ナワルは生前代理人に遺言状を託しており、彼女の死後二人は代理人からその遺言状を受け取った。
その時、ジャンヌには父に渡す手紙を、シモンには二人の兄に渡す手紙が手渡された。
二人は父の話はまったく聞いていなかったし、兄がいることはその時初めて知らされた。
とりあえず、手掛かりを探すために母の故郷のパレスチナに旅立つジャンヌ。
そこで知ったのは、母の数奇な運命だった。

そもそも事の発端は、キリスト教徒であったナワルがアラブ人と恋に落ちたことから始まる。
二人は引き裂かれ、ナワルはすでに子どもを身ごもっていたのだが、出産後にやはり引き離されてしまう。
パレスチナでの戦闘が激しくなると、ナワルは自分の子どもを探しに養護施設に向かうが、すでに養護施設は廃墟となっていた。
復讐を誓うナワルは、キリスト教徒でありながらアラブ人に味方し、キリスト教系の政治家を暗殺してしまう。
その結果、15年間も投獄され拷問を受ける事になった。

このナワルの人生を、ジャンヌが追いかける事でストーリーは進行する。
字幕では「キリスト教徒」と表示されるが、ナワルはユダヤ教徒ではないかと思う。
でも、それはさほど問題ではないか。
ただ、ナワルをパレスチナからカナダに送った人物がアラブなのかキリスト教徒なのか、そしてジャンヌをパレスチナで案内する人間もやはりアラブなのかキリスト教徒なのか、このあたりがちょっとわかりづらい。
ラストは想像通りの衝撃の結末なのだが、そのあたりがよくわからないまま終了してしまうので、見終わった後ややモヤモヤとしたものが残ってしまう。
パレスチナでの怨恨の深さは、理屈はわかっていても感覚の部分で日本人には理解しがたいので、それが作品をわかりづらくしている原因かもしれない。

予想はしていたとは言え、かなり重たい映画だった。


49.幸せのパズル
50.灼熱の魂
by ksato1 | 2012-05-22 00:15 | 映画 | Comments(0)