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「CUT」

西島秀俊が情熱にあふれた映画監督役と聞いたので観に行った。
でもたしかに映画に対する情熱は感じるけど、ハッキリいって大空回りの映画である。

監督はアミール・ナデリと言うイラン人で、ヨーロッパでは高い評価を得ているそうだが、なんでこの映画を日本人で撮ったのかもわからない。
共同脚本が青山真治という事もあるのだろうが、日本ではあり得ない設定なのでリアリティがまったくない。

秀二(西島秀俊)は自主制作映画を撮り続けているが、興行的な成功はない。
と言うか、劇場公開されたのかもわからない。
ハッキリ言ってアマチュアに限りなく近い監督だ。
その秀二に映画を撮らせたいがために、兄はヤクザな稼業に足を染めて借金を重ね、その結果金銭トラブルで殺されてしまう。
兄は1200万円もの借金を残したが、秀二には返すあてもない。
兄の親分筋にあたる人の弟分から、拳銃を口にくわえて引き金を弾いたらカネをやると言われ、実践するが弾は入っていなかった。
そこから秀二は、ヤクザに殴られてカネを稼ぐ事を思いつく。

もうとにかく設定が無茶苦茶だ。
1発殴られると5000円から始まり、最後は1発1万円まで行くが、それで1200万円もの借金を払おうとしている。
最後の最後はそれでも足りずに、100発殴っても立っていられるかどうかという賭けで帳尻を合わせるのだが、このご時世でそんな事にカネを払うチンピラがそんなにいるとは思えない。
何人で殴っているのかはわからないが、期間はわずか2週間だ。
その期間で1200万円のカネが動いているのだから、一人20万円払ったとしても600人の人が必要だ。

そして秀二が殴られても立ち続けるためのモチベーションが、映画に対する情熱。
「シネコンの映画はクソだ」とか叫びながら、ボコボコに殴られている。
「兄が死んだこのトイレでしか、オレは殴られる気にならない」というのもおかしな話だが、もうその程度は気にならないくらいとんでもない設定が続く。
最後に100発殴られる時、秀二が本当の映画と認めている100作品がカウントダウンのように表示される。
でも、「映画はかつて芸術であり娯楽であった」とエラそうなお題目を掲げている割には、その100作品がどこかで聞いたような100作品だったりする。

西島秀俊がやたら熱演している分、脚本や設定の無茶苦茶な部分が浮き彫りになってしまったような気もする。制作者たちがこの映画に満足しているならば、それでいいんじゃないですか、という作品。
私には判断不能だった。


15.CUT
by ksato1 | 2012-01-31 20:52 | 映画 | Comments(0)