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備忘録1:イスラエルの浮世絵

GW後にNHKのBSで浮世絵に関する特集が放送されていた。
その備忘録である。

浮世絵の研究家が注目している美術館がイスラエルのハイファにある。
1960年に開館したティコティン美術館だ。
中東で唯一の東洋美術専門の美術館だが、イスラエルと言う土地柄のため、これまであまり注目されなかった。
しかしここ数年の調査で、世界的にも注目すべき新発見が次々と見つかっている。

美人の名前が入った歌麿の「当時三美人」は、この美術館以外ではアメリカと日本で各1点ずつしか確認されておらず、歌川豊国の新発見の作品も眠っていた。
また、広重が描いた団扇絵(桑名)や経木絵(木曽名所)なども見つかっている。
団扇絵は当然団扇に貼られるものであるし、経木絵はお土産物ではないかと言われており、どちらも通常コレクションとして残されることが珍しい貴重品だ。

さらに北斎の肉筆画12点に至っては、従来の北斎作品とは異なる作風の連作だ。
「雪中行旅図」「蜻蛉と割茶碗」「漁師二人」などは、色彩のコントラストを使用した西洋風の画風である。
北斎が活躍したのは70歳以降であるが、おそらくそれよりも前の作品ではないかと推測され、北斎の画業を考える上で重要な役割を果たす可能性がある。
北斎に関して言えば、このほかにも「春の野遊び」という摺物が見つかっている。
摺物とは趣味人が個人で発注、配布した作品で、一般市場に出回るのは極めて稀との事だ。

これ以外にも、鈴木春信の柱絵も所蔵されていた。
柱絵とは、床の間がない庶民の家で粗末な柱に飾る装飾品であるが、飾られた段階で外気に触れて劣化するため、現存する事自体が非常に珍しいらしい。

そしてさらに驚くべき事は、通常の絵画も含めてどの作品も、複製品がほとんどなく真筆の作品ばかりという事である。

これらの作品を集めたのは、フェリックス・ティコティンというドイツ生まれのユダヤ人である。
所蔵作品に複製品がないのは、彼が優れた審美眼の持ち主であった事を物語っている。
そのティコティンがなぜ、これだけの日本の美術品を集められたのか。

所蔵された作品を見ると、「TNS」「LG」「林●」などいくつかの印が確認される。
※●は「正」という遍に「忠」

印はティコティン以前の持ち主を表し、所持者は以下のとおりである。

TNS:Tony Straus-Nesbaur
LG:Louis Gons
林●:林忠正

ティコティンは上記のコレクターをはじめ、著名なコレクターが亡くなると誰よりも早く駆けつけて、所蔵品を買いつけたと言う。

そしてこの中で注目されるのが、林忠正である。

--続く
by ksato1 | 2011-07-27 00:25 | 日記 | Comments(0)