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「戦火の中へ」

朝鮮戦争開始直後、北の人民軍の進撃が進み韓国軍は敗退の一途を辿っていた。
実際一時期は、朝鮮半島をほぼ北が制圧し、韓国軍は釜山を残すのみというところまで追い込まれている。
この物語は、ちょうど北の進撃が開始している頃の話である。

主人公は学徒出陣しているオ・ジャンボムだ。
冒頭、激しい市街地戦のなか弾薬の補給を任されるジャンボム。
必死の思いで鼓膜を破りながら弾を届けるものの、その直後、自分が補給を行った兵士が砲弾に吹き飛ばされる。
混乱する戦闘の中で九死に一生を得るジャンボムだが、彼を助けるためにかわいがってくれた少尉が戦死してしまう。

ジャンボムは所属する部隊とともに、司令部が置かれた浦項まで後退した。
ここで司令部は、全部隊を最終防衛ラインの洛東江戦線に送り込むことを決定する。
留守の浦項を守るのは、71人の学徒兵だけだ。
ジャンボムは大尉からこの学徒兵中隊の中隊長を命じられ、一緒に市街地戦を闘った残りの二人が小隊長となった。
実戦経験があるのはこの3名だけである。

新規に配属された学徒兵の中には、鑑別所送りの代わりに志願したガプチョと二人の仲間も入っていた。
ナイフで人を刺したこともあるガプチョは、ジャンボムや小隊長の命令にことごとく反発する。
それでも形ばかりの訓練を行い、合宿のような雰囲気の中で、学徒兵たちは司令部を守り始めた。
しかし北の精鋭部隊「766部隊」が、浦項攻略のためにすぐ近くまで迫って来る。

初めての実戦に興奮と恐怖が入り混じる中、学徒兵達は自分の置かれた立場を知らされる事となる。
そこから、彼らの本当の戦いが始まる。
仲間や兄弟が次々と死んで行くが、与えられた任務を遂行するために必死で努力する。

「死んだら腹が減る事もないさ」と言って鼓舞する学徒兵を見ていると、胸が痛む。
映画は冒頭から激しい戦闘シーンの連続で、途中学徒兵達が若干和むシーンもあるものの、それ以外は戦争の緊張感に包まれっぱなしだ。
映画を観ていると、「どんな理屈があろうとも、戦争なんてしてはいけないんだ」と強く感じる。
同じ民族なので、韓国の南北問題を取り上げた作品では特に戦争のむなしさが強く表現されるのだが、今回は南北に分かれて間もない時代のため、それがより強調されている。

実話を元に作られた作品であるが、どこまでが実話なのかはわからない。
ただ、実在したのかどうかわからないが、ガプチョのキャラが強烈に効いている。
優等生のジャンボムに対して、アウトローのガプチョ。
ただガプチョが悪くなったのも、そもそもは両親が北の兵士に射殺されたからだ。
だから北の兵士を心から憎んでいる。
スクリーンを通すと冷静なジャンボムが正しいと思えるが、当時はやはりガプチョと同じ考えを持ち行動した人も多かったのだろう。

クライマックスシーンの戦闘では、学徒兵が異常に強い。
いくらなんでも訓練していない学徒兵が、こんなに闘えるわけないだろうと思う。
映画だからかなりデフォルメされているのだろうが、学徒兵達の死を目前にして闘っている演技が素晴らしく、あるいは本当にこんな闘いだったのかもしれない、とも思ってしまう。

戦死した兵士の描写が激しいのでPG12指定だけど、機会があったらいろいろな人に見て欲しい映画だ。
特に、近代史、命の大切さ、友情、信じる事、そう言った要素がかなり詰まっているので、中高生に見せるべき映画ではないかと思った。


34.戦火の中へ



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by ksato1 | 2011-03-07 20:54 | 映画 | Comments(0)