原作は中国で書かれた小説で、中国ではTVドラマ化もされかなりの反響だったらしい。
そのリメイクとなるのだが、たしかに日本人ではちょっと書けないようなストーリー展開だった。
舞台は沖縄。
東昇(岡田将生)は妻の静(松井玲奈)の両親を崖から突き落とした。
静はその時同行していなかった。
昇は事故を装い、泣き叫びながら崖を降りて助けを求めに行った。
中学生の安室朝陽(羽村仁成)が自宅にいると、かつて近所に住んでいた上間浩が女の子を連れてやってきた。
女の子は夏月(星乃あんな)と言い、浩の父の再婚相手の連れ子、つまり義理の妹だった。
浩の父はクズ男で夏月をレイプしようとし、逆に夏月に刺されていた。
そのため、浩と夏月は逃げてきたのだった。
朝陽の両親も離婚しており、母の香(黒木華)は少し離れたリゾートホテルで、昼はベーカリー、夜はホテルの夜勤のダブルワーキングをしていた。
そのため、日によってはホテルに泊まりこむこともあった。
その日も母がホテルに泊まりこみだったため、朝陽は二人を匿った。
翌日、朝陽の自宅の外壁一面に「人殺し」などと書き込まれ、チラシもべったり貼られていた。
自殺した同級生アキの家族が、原因は朝陽にあると言い立てているのだ。
そこに、離婚した朝陽の父一平(北村一輝)がやってくる。
自殺したアキは、一平の再婚相手の連れ子なのだ。
一平は朝陽に「なんとかする」と言い、数万円のカネを置いて帰って行った。
朝陽たちは、ニュースで夏月が義父を刺したニュースが流れていないことを確認し、一平からもらったカネを持って街に出た。
そこで夏月が欲しがったデジカメを購入する。
死んだ夏月の父が、毎年命日に夏月の写真を燃やして欲しいと言ったからだ。
3人はそのまま、香が勤めるホテルまで行く。
そこで香にランチを用意してもらい、その後浜辺に出る。
朝陽がデジカメでアキを撮影したのだが、誤って動画モードになっていた。
その動画を再生すると、後ろの崖から人が落ちるところが映っていた。
朝陽は動画を見て、すぐに殺人事件であると判断した。
そしてこの殺人事件をネタにして、犯人からカネを脅し取ろうと計画する。
朝陽は昇に接触して現金6000万円を要求するが、昇が「すぐには用意できない」と言ったため、しばらく待つことにした。
静と昇の仲はすでに冷え切っていて、不倫相手もいた静は離婚を望んでいた。
静の父は沖縄経済に大きな力を持つ一族の一人で、両親が死ねば静に莫大な遺産が入る
そのため、両親は事故ではなく昇に殺されたのではないかと疑っていた。
静は従妹の刑事の厳(江口洋介)に、両親が殺されたかもしれないと相談する。
だがすぐに、静は運転する車が暴走して事故死した。
その時昇は、二日前から大阪に出張中だった。
朝陽は昇の部屋に来ていた。
その部屋で、昇がかつて数学コンテストで獲った銀メダルを見かける。
そして昇に、僕は去年このコンテストで優勝したと告げ、さらに奥さんをどうやって殺したのかを尋ねる。
昇が話をそらそうとしていた時に、厳が部屋のチャイムを鳴らした。
それでもしつこく問いかけてくる朝日に、昇は「改めて説明する」と言い、厳を部屋に入れた。
一言で言えば、妻とその両親を殺して財産を奪う昇と、目撃者である中学生の朝日の心理戦であるが、この二人がかつて数学コンテストで上位成績を収めるほどの知能を持っている、と言う設定が巧くハマっている。
昇は緻密な殺人の計画を立てるのだが、中学生に偶然現場を目撃され、しかも自分と同等かそれ以上の知能を持っている。
そのため歯車が少しずつ狂わされてしまう。
お互い、そう簡単には相手がこちらの思惑通りに動かないことをわかりながらの駆け引きとなるのだが、岡田将生と羽村仁成の演技力が巧いため、どんどんストーリーに引き込まれてしまった。
羽村仁成の演技はやや過剰なようにも見えるが、逆に頭の切れる中学生は、こういう芝居掛かった仕草をするものかな、とも思った。
冒頭にも書いたが、昇と朝陽がなんの躊躇もなくどんどん突き進んで行く展開、そしてラストシーンは、あまり日本人には発想できない容赦のない展開である。
頼る者がいない夏月が、朝陽に抱く淡い恋心も切ない。
監督は金子修介であるが、そう言えば天才同士の駆け引きだった「デスノート」も、金子修介が監督であった事を思いだした。
45.ゴールド・ボーイ