地上波初放送の「カメラを止めるな!(再)」を録画して見る。
前半の「ゾンビチャンネル」の番組部分はノーカットの放送だった。
まあ、当然だろう。

あらためて見ると、細かい演出がやはり巧い。
カメラ役の細田が酔い潰れて進行が回らくなり始めてから、ドラマの男優、女優、メイクの3人がカンペを見ながらオロオロ演技をする。
それがいかにも、ゾンビ作品の緊迫感をあおる演出に見える。

そしてやはり、監督役の濱津隆之の演技力が光る。
気弱で人がいいのだが、いざと言うときには思い切る、かなり愛すべきキャラである。
ゾンビ作品の代役中に、男優に向かってキレる演技は何度見ても爆笑だ。

見れば見るほど、役者、制作者ともに考慮を重ねたうえに、気合を入れて作った渾身の作品に見える。
見る人を満足させるという事はどういうことなのか、映像クリエイターを目指す人なら必ずこの作品を見るべきだろう。

38.カメラを止めるな!(再)


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今週はイチローが引退を発表、関連馬券で言えば枠連、馬連の1-6、背番号の1-5、あるいは馬番の15、16あたりか。

馬連でも枠連でも関係する1番には、話題の藤田菜七子鞍上のスノードラゴンが入った。
勝っても負けても次の騎乗馬を用意しもらえるだけに、藤田菜七子は常にイチかバチかの騎乗ができるのだが、これがそこそこ結果を残している。
とは言え、鞍上のスノードラゴンはかつてスプリンターズSを制したとは言え、そこから4年半勝ち星がない。
さすがに馬券検討の対象にはならないか。
同じ一枠には森「一」馬騎乗のラインスピリットもいる。
昨年のスプリンターズSは3着だったが、中京コースは1.0.0.6なので、こちらも普通に考えれば無印でいいだろう。

語呂合わせはこれくらいにして、真面目に予想しよう。
今回、勝つ可能性があるのは、おそらく3頭だ。
そこから本命は、モズスーパーフレアにする。
デビュー以来短距離路線を使われてきたが、1200m戦に限れば6.1.1.2の戦績。
前走オーシャンSでは、2着のナックビーナスに影をも踏ませぬ快走で逃げ切った。
コース改修以降、高松宮記念を逃げ切った馬はいないが、この馬のスピードは別格だ。
中京コース0.0.0.2でもあるが、これは本格化前でどちらも1400mのレースだった。
今週の追切の動きも絶好で、フェブラリーSを勝ち、昨日も日経賞を逃げ切った自称「伸び盛り」の武豊が、今日も逃げ切る可能性大だ。

対抗は、オーシャンSで2着だったナックビーナスにする。
昨年のこのレースは、勝ったファインニードル、2着のレッツゴードンキと壮絶な叩き合いの結果3着。
2頭に切れ負けしたが、今年は昨年以上の出来にある。
ここ2戦はモズスーパーフレアに敗れているが、この馬も追切の動きが絶好だった。
今回、モズスーパーフレアをまともに追いかけて勝負になるのはこの馬だけだろう。
モズスーパーフレア、ダノンスマッシュより内枠に入った事も有利であり、一気に突き抜ける可能性もある。

三番手はダノンスマッシュだ。
昨年春まではクラシック路線に乗っていたため1400~1600mを使われていたが、夏以降1200m戦のみに絞って3.1.0.0の戦績だ。
ロードカナロア産駒であることを考えると、この馬も今後の短距離路線の主役を担うだろう。
ただ問題は持ち時計。
モズスーパーフレアとナックビーナスが何度も1.07台で走っているのに対し、1200mで1.08.0を切ったことが一度もない。
中京は今週からBコースに変わり、昨日も前が止まらないレースが多かった。
ポテンシャルは認めるが、鞍上の北村友一はG1未勝利。
1番人気でもあり、冷静にきっちり1200mのレースができるかどうかは微妙で、今回はやや評価を下げる。

四番手以降では、まずコース巧者のレッツゴードンキが浮上する。
かつての桜花賞馬もすでに7歳。
芝を使われたりダートを使われたり、たまに1600m戦を使われたりと、G1馬なのにやや気の毒な使われ方の感じもする。
ただ逆に言えば、陣営はもう一つこの馬にタイトルを獲らせたいのだろう。
このレースは2年連続で2着、今回も勝ちきるまではどうかとも思うが、この2年半以上、国内の1200m戦は掲示板を外したことがないので、ここでも渋太く上位進出してくる可能性はある。

ここから先は難しい。
候補はミスターメロディ、アレスバローズ、ロジクライ、デアレガーロの4頭だが、どの馬も1200mがベストではない。

ミスターメロディは1400mをメインに使われ、これまで掲示板を外したのは前走の阪急杯のみ。
しかもこの阪急杯は、レース途中でぶつけられる不利があった。
内枠に入った点は魅力的だが芝1200mは未経験、NHKマイルC4着と言う事を考えると、やはり本質的には1400~1600mがベストか。
今回はレースが速くなる可能性が高いので、見送りが妥当だろう。

デアレガーロは前走の京都牝馬Sを休み明けで勝利。
鞍上はブラストワンピースを有馬の勝利に導き、弥生賞も人気薄のメイショウテンゲンで勝利した池添謙だ。
人気も落としていて馬券妙味はある。
とは言えこの馬も主戦場は1400~1600m。
1200mの持ち時計もなく、この馬もスピード決着に対応できるかは疑問だ。

アレスバローズは鞍上川田将とのコンビで、同コースのCBC賞を制している。
ここ2戦ダノンスマッシュに連敗しているが、2走前は2kg、前走は1kgの斤量差があった。
どこまで復調しているかがカギだが、昨夏の北紀州記念では1.06.6のタイムを叩き出しているのでスピード決着にも対応できるだろう。

最後にロジクライだが、この馬も主戦場は1600mで1200mは初体験。
上りの脚はないが、速いペースを追いかけて抜け出すというこの馬のレースパターンは、今回のレースに合いそうな気がする。
鞍上はルメールで、昨年の富士Sをこの馬で1.31.7の時計で制している。
ルメールは前走モズスーパーフレアに騎乗して、モズの脚がどれだけ持つかの感触はわかっているだけに、そこから逆算してのレースができるかもしれない。


◎モズスーパーフレア
〇ナックビーナス
▲ダノンスマッシュ
△レッツゴードンキ
×アレスバローズ
×ロジクライ

馬券は◎○1着、◎○▲△2着、◎○▲△×3着の3連単24点で勝負。

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鹿児島県南大隅町が出資したと思われる映画だ。
南大隅町の「御崎祭り」ありきで作られているのだが、ハッキリ言ってかなり無理のある脚本を、監督の武正晴がなんとかまとめたと言う感じだった。

児島貴子(夏帆)は東京のキー局の看板アナウンサーだったが、プロデューサーとの不倫を週刊誌に抜かれ、情報番組のディレクター兼リポーターに左遷させられていた。
完全にやる気をなくしていた貴子に、日本全国の祭りのリポート番組の話が舞い込む。
この仕事も乗り気ではなかったのだが、リストの中に、小学生の頃1年間だけ暮らした南大隅町の御崎祭りが入っていたため、調査の取材に行くことは承諾した。

貴子が現地に行くと、町の観光課の人間は歓待してくれた。
現在の町の案内役に、かつての貴子の同級生太郎(太賀)も紹介してくれた。
貴子は一通り町の紹介を受けるのだが、TV映えしそうなネタはほとんどない。
しかも肝心の御崎祭りは、現在は若い人材不足のためトラックで神輿を運んでいた。
これでは取材はできないので、貴子は取材のために今年だけでも人が担ぐようにできないかと掛け合う。
しかし祭りを取り仕切る牛牧猛盛(伊吹吾郎)は、TVのために祭りを変更することはできないと突っぱねた。

交渉は決裂したまま貴子は一度帰京する。
貴子の中ではほとんどなくなった企画だったが、TV局内での自分の立場なども考え、半ばヤケになって取材を行う事にした。
再度南大隅町を訪れた貴子は、子供の頃に父親とよく通った食堂で寝泊まりする事にした。
そこで、かつて父親と過ごした日々を思い出すうちに、貴子は御崎祭りを本気でリポートしよう考え始める。

ストーリーは、ありきたりではあるが手堅くまとまっている。
ただはっきり言って申し訳ないが、肝心の御崎祭りがとても地味である。
担ぎ手が足りないと言っても、神輿の大きさはせいぜい20人もいれば担げてしまうレベルだ。
集落から集落へリレーをしなければならないので、各集落ごとに人手が必要なのかもしれないが、いずれにしろ映画にするにはかなり地味である。
大きな幟と傘を持つ太賀と岡山天音はかなり頑張っているとは思うが、それでも見栄えはしない。
撮影には南大隅町のオーダーもあったのかもしれないが、神輿を担ぐシーンでも担ぎ手のアップを多くして滴る汗を映し出すなど、もう少し躍動感のある画面にできたのではないかと思う。

低予算、短期間で作り上げたのだとは思うが、かなり素人臭い映画になってしまった。


37.きばいやんせ!私


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もう少しライトなミステリーかと思って観に行ったが、ドロドロした人間関係が渦巻くちょっと重たいミステリーだった。

ステファニーは数年前に夫を交通事故で亡くしたシングルマザーだ。
今は夫の保険金でなんとか子育てしているが、いずれは働かなくてはならない。
しかし彼女はブログに料理の動画を乗せるなど、明るく息子のマイルズを育てていた。
ある日ステファニーは小学校にマイルズを迎えに行ったとき、息子の友達のニッキーと、その母親のエミリーと出会う。
エミリーは有名なアパレルブランドのPRディレクターだったが、ニッキーに下品な言葉を投げかけたり、昼からシェリーをがぶ飲みするなど、母親とは思えぬ行為で周囲から敬遠されていた。
しかしなぜかステファニーは、エミリーと意気投合する。
ニッキーの父親のショーンは、かつてベストセラーを出したものの今はヒット作がなく、大学で教鞭を取っていた。
そして忙しいエミリーとショーンに代わり、ステファニーはしばしばニッキーの面倒を見る事になった。

その日もステファニーはエミリーの依頼で、マイルズとニッキーの面倒を見ていた。
しかし夜遅くになってもエミリーと連絡が取れない。
ショーンは実母のお見舞いでロンドンに行っていたが、エミリーからの連絡を受けてすぐに帰米、警察に捜索願を出した。
二人はニッキーを気遣い、エミリーの心配をしたが、やがて警察からエミリーの死体が発見されたと連絡を受ける。
ショックを受けた二人だが、慰め合っているうちに意気投合してしまう。
そしてステファニーはショーンから、一緒に4人で住もうと誘いを受ける。
ステファニーはその誘いを受け引越しをするのだが、片付けたはずのエミリーの荷物が復活しているなど、不思議な事が起き始めた。
さらにニッキーが、エミリーからもらったと言って、ステファニーに手紙を渡した。

ミステリーとしては、割とよくある話ではある。
途中からだいたい結末は見えてしまうのだが、ステファニー役のアナ・ケンドリック、そしてエミリー役のブレイク・ライヴリーの演技が巧いので、見入ってしまった。
ラストはちょっと、ドロドロし過ぎな感もしないでもないが、ミステリー好きには楽しめる作品だと思う。


36.シンプル・フェイバー


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「スパイダーバース」の「バース」は「birth」で実写版とは異なるシリーズのスタート作品かと思ったら
、「multi-verse:多元宇宙」の「verse」で、隣接する異次元のスパイダーマンが集合するという話であった。

N.Y.ではピーター・パーカーのスパイダーマンが活躍していた。
ブルックリンに住むマイルス・モラレスも、スパイダーマンに憧れる少年であった。
マイルスの父は警官をしており、両親はマイルスの将来を思って彼を寄宿型の学校に転校させる。
だが地元の学校が好きだったマイルスは、新しい学校に馴染めずにいた。
そんなマイルスの話し相手になってくれたのは、叔父のアーロンだった。
アーロンは街の壁にグラフィティを描くのが好きなマイルスのために、使われていない地下施設を紹介してくれたりもした。
だがその地下施設で、マイルスはクモに噛まれてしまう。
すると手から粘つく物体が出るようになり、学校で大騒動を起こしてしまった。
学校を抜け出したマイルスは、クモに噛まれた地下施設に戻るのだが、その奥でスパイダーマンがゴブリンたちと戦っている場面に出くわす。
マイルスはその戦いに巻き込まれて、スパイダーマンから装置のスタートキーとなるUSBを手渡される。
そしてスパイダーマンは息絶えてしまった。

スパイダーマン死亡のニュースが街に流れる中、マイルスは自分が新たにスパイダーマンになるべく訓練を始める。
だがその最中、彼の目の前に別のスパイダーマンが現れた。
異次元からやってきた、ピーター・B・パーカーのスパイダーマンである。

最初のスパイダーマンがマイルスに手渡したのが、異次元との行き来を可能にするための加速器のスタートキーである。
その加速器が稼働したため、ピーター・B・パーカーのスパイダーマンをはじめ、スパイダーウーマンやスパイダー・ノワール、スパイダー・ハムなどが次元を超えてやってくる。
そしてみんなで協力して、加速器を壊そうとするストーリーだ。

元々「スパイダーバース」としての原作があるそうだ。
その原作の主要キャラクターで、本作を制作したらしい。
色使いなどを含めて典型的なアメリカン・コミックスの作りで、好みはかなり分かれるだろうが、私はそれほど嫌いではない。
ディズニー作品で言えば、「Mr.インクレティブル」シリーズに近いかもしれない。

ただ、正直実写版と比べると、子供向けな感は否めない。
シリーズ化されて次回作が作られたとしても、映画館に観に行くかどうかは微妙な感じだ。


35.スパイダーマン:スパイダーバース



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老いてなお存在感を発揮するイーストウッドの最新作だ。
御年88歳にして、まだ製作、監督、主演で手腕を見せつけてくれる。

アール・ストーン(クリント・イーストウッド)はデイリリーを造る造園農家を運営していた。
家族よりも仕事を優先し、娘の卒業式や結婚式よりも花造りを優先する。
そして花造りの賞をもらうのだが、家族は彼の元を離れていった。

数年後、アールは農園を潰してしまう。
自宅も農場も差し押さえられ、アールは仕方なく唯一彼の味方をしてくれる孫娘を訪れた。
孫娘はちょうど結婚が決まったことでパーティー中で、彼を快く迎えてくれた。
しかしそこに駆け付けた元妻と娘は、彼を嫌ってすぐに立ち去ってしまった。
アールはそのパーティーで一人のメキシカンと出会う。
彼はいい仕事があるので気が向いたら声を掛けてくれと言った。
アールはかわいい孫娘の結婚パーティー費用を捻出しなければならないため、男の誘いに乗ることにした。

仕事はドライバーだった。
言われた場所まで荷物を運び、ダッシュボードに車のカギを入れて1時間車を離れると、戻ったときにはダッシュボードにカネが入っている仕組みだった。
アールはほんの少しだけのつもりで始めるが、かなりのギャラが入ることで辞めることができなくなる。
そして孫娘のパーティー費用を払い、差し押さえられた自宅と農園を取り戻し、さらに馴染みのバーの改修費用まで受け持った。
そんなある日、アールは積み荷がドラッグであることに気付いてしまう。
それでも彼は運び屋の仕事を辞めることはしなかった。
それどころか組織の幹部はアールが何度も問題なくドラッグを運ぶことに注目し、アールに運ばせるドラッグの量をどんどん増やしていった。
だがDEA(麻薬取締局)は、かねてからアールが流通するドラッグのルートを摘発しようと狙っていた。
そして一番ドラッグを運ぶ量の多い運び屋を摘発しようと、捜査を進めて行った。

いいギャラをもらえることに味をしめて調子に乗ったアールが、本人が気づかないままどんどん摘発に追いつめられていく。
ハッキリ言って、ストーリーは単純である。
しかしその単純なストーリーの中で、イーストウッドの老獪な演技と演出が光っている。
若者に皮肉を吐き続け、脅しを掛けられてもそれをやめない。
煮ても焼いても食えないクソジジイなのだが、一方で、自分のせいで離れていった家族との溝を埋めるのに、一所懸命である。
そして、本人がまったく気づかないうちに、DEAの捜査の手が伸びてくる。
このあたりの見せ方は、単純でありながらもきっちりハラハラさせてくれて、巧いの一言に尽きる。
実在した90歳の運び屋をモチーフにして作られた映画だが、最後も映画としてきちんといい感じで落としてくれる。
まさにイーストウッドの実力を見せつけられる映画だ。

派手さはまったくないが、映画好きをうならせる作品だ。


34.運び屋


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クラウドファンディングで話題となった「菊とギロチン」目当てでギンレイに行く。

まず併映の「寝ても覚めても」から。

大阪の大学に通う朝子(唐田えりか)はある日写真展で、麦(ばく、東出昌大)と運命的な出会いをする。
麦の従兄弟の岡崎(渡辺大知)、親友の春代(伊藤沙莉)とは昔からの知り合いだったため、しばらくこの4人で行動するようになった。
だが突然麦はシベリアを目指し中国へとと旅立ってしまう。
それから6年半、音信不通の日が続いていた。

その後、朝子は東京のコーヒーショップで働いていた。
そしてコーヒーの出前を届けに行った先で、麦そっくりの亮平(東出昌大)と知り合いになる。
亮平は朝子をすぐに気に入るのだが、朝子は動揺してどうしたらいいのかわからない。
だが、その時朝子のルームメートだったマヤ(山下リオ)が二人の仲を取り持ち、二人は一緒に暮らすようになる。
そしてマヤも、亮平の同僚である串橋(瀬戸康史)と結婚した。

さらに数年後、亮平の転勤を機に、二人は結婚することになる。
その準備の最中、朝子は東京で春代と再会した。
そして春代から、麦が現在売れっ子のモデルになっていることを知らされる。
朝子は少し心を動かされるが、もう再開することもないと思いあまり気にも留めなかった。
しかしたまたま春代といるとき、近くで麦が撮影をしている事を知る。
二人は麦の乗った車に駆け寄るも、車はそのまま立ち去ってしまった。
朝子は車に向かって大きくさよならの手を振った。

いよいよ朝子と亮平が東京を旅立つ前夜、二人は串橋夫妻、春代と共に食事をしていた。
するとそこに、突然麦が現れる。
皆の前で麦から付いてくるように言われた朝子は、席を立ってしまう。

よくある恋愛ストーリーと言えばそれまでである。
見せ所は、二人の男の間で揺れる朝子の心情変化だ。
だがハッキリ言って、唐田えりかが朝子を演じ切れていない。
そのため前半のストーリーが淡々と進行しているように見えて、起承転結の転の部分の唐突感がハンパなくなってしまった。
感情変化が巧く表現できていないため、朝子に感情移入することもできず、単純に朝子が周りを振り回すクソアマに思えてしまった、少なくとも50歳を過ぎたオッサンには。
新人の唐田えりか起用ありきで制作された映画のようにも見えたので、それであれば、脚本、演出でもっと工夫をするべきだったと思う。

続いて「菊とギロチン」。

第二次世界大戦前夜の大正末期、世の中は閉塞し、革命家が街にあふれるようになっていた。
中濱鐵(東出昌大)率いるギロチン社も革命家たちの集団であった。
政治家へのテロを目論んでいたギロチン社だが、当局の手入れにあいメンバーはバラバラに逃走する。
鐵と行動を共にしたのは、ボンボン育ちの古田大次郎(寛一郎)だった。
そして二人は逃走の最中、女相撲の「玉岩興行」一座に合流する。

女相撲は17世紀に端を発し、昭和30年代くらいまで続けられていたそうだ。
朝鮮人として差別されていた者や、女郎から抜け出した者、さまざまな理由で家族から逃げ出した者などが集っていた。
花菊ともよ(木竜麻生)もその一人であった。
嫁に行って早逝した姉の代わりに嫁いだのだが、あまりにも酷使されたため家から逃げ出していた。
鐵と大次郎は一座と一緒に行動するうちに、鐵は朝鮮人である十勝川(韓英恵)と、大次郎は花菊と仲良くなる。
そしてある日、鐵、大次郎、十勝川は満州を目指して一座を抜けて出ていった。

農村部は貧しく、子供を売るなどの行為が当たり前に行われていた時代だ。
そして体制に反抗して無茶をするのが革命家だと勘違いした若者が、多かった時代でもある。
本作品では、この二つのテーマを織り込んで制作されている。
当時の世相を描くという意味では、非常に参考になる映画であった。

ただ、さすがに189分はちょっと上映時間が長い。
内容が濃いので飽きることはなかったが、最初から最後まで暗い雰囲気が続くので、観終わった後精神的にかなり疲労した。
各カットをもう少しずつ詰めて、せめて2時間半くらいに縮めた欲しかった。


32.寝ても覚めても
33.菊とギロチン


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「PSYCHO-PASS SS」シリーズの最終話である。
このシリーズの3作品はそれぞれ単独のストーリーで、関連性はほとんどない。
関連性は「Case.2」と「Case.3」で前作の劇場版のSEAUnがチラッと出てくるのと、やはり「2」と「3」に新キャラとして登場する花城フレデリカだ。
そしてこの花城フレデリカの登場で、新シリーズが作られる予感がしていたのだが、「3」の公開日にオフィシャルサイトで、シーズン3制作が発表されていた。

前作の劇場版の後、SEAUnを離れた狡噛慎也は南アジアにいた。
そこで傭兵団「停戦監視団」の団長ガルシアと知り合う。
チベット・ヒマラヤ同盟王国での紛争が激化していることを知った狡噛は北に向かうことにしたのだが、ガルシアが車とドライバーを用意してくれた。
その途中、狡噛は武装ゲリラに襲撃された難民バスを救う。
そのバスには武装ゲリラに家族を殺された少女テンジンが乗っていて、彼女は武装ゲリラに復讐するために、狡噛に戦いの先生になってくれとお願いしてきた。
二人はテンジンの叔父のキンレイの紹介で、国の施設に逗留することにした。
そこで狡噛は、身を護る術をテンジンに教える。

その二人のところに、日本の外務省から花城フレデリカがやってきた。
かつてチベット・ヒマラヤ同盟王国には日本からの開発援助があり、技術者も多くやってきていたが、シビュラシステムが導入されたのち援助は打ち切り、技術者の帰国も拒否されていた。
棄民として残された日本人とその子供たちがまだ多くいることを問題視し、花城フレデリカも外務省から調査派遣されたのだった。
テンジンは父が日本人技術者であったため、彼女も調査の対象だった。
それを理由に花城フレデリカは、狡噛、テンジンと同じ施設に逗留することとなった。

チベット・ヒマラヤ同盟王国では停戦に向け、政府と内戦を続ける各グループの長が会合を行っていた。
しかし武装ゲリラだけはこの会合を受け入れなかった。
そしてこの武装ゲリラのリーダーこそが、テンジンの家族を襲ったベルモンドだった。
テンジンは復讐すべく、一人でベルモンドのもとに向かった。

サブタイトルの「恩讐の彼方に」は、もちろん菊池寛の作品名にちなんだものだ。
テンジンは日本人の父からこの文庫を受け継いでおり、たどたどしい日本語で少しずつ読み進めていた。
そして狡噛もこの作品同様、テンジンに復讐が馬鹿げた行為であると説得するのだが、若いテンジンは復讐に向かってしまう。

ストーリー自体はかなりありきたりである。
しかし作画を含めた世界観の作りこみが素晴らしい。
開発援助が途中で止まり、内戦により荒廃した山間部の都市とそこに暮らす人々、そしてそこでの狡噛の描き方が見事だ。
ラストの疾走する列車でのアクションシーンもどこかで観たような既視感はあるし、仲間を殺さないでくれと言うツェリンが思いっきり仲間に向かって発砲しているなど、粗っぽい部分もあるが、全体としてはまずまずの出来と言っていいだろう。

そして今回の3部作は、すべてシーズン3への布石なのだろう。
「Case.2」は過去の話がメインだが、花城フレデリカが須郷を外務省にスカウトしている。
須郷が外務省に移籍するかどうかわからないが、シーズン3は海外を含んだ展開となり、そこに狡噛が絡んでくるのは間違いない。

「Case.2」はすでに単体の作品として名作と言えるが、「Case.1」「Case.3」もシーズン3によっては名作として評価される可能性もある。
いずれにしろ、シーズン3が楽しみになった。


31.PSYCHO-PASS SS Case.3「恩讐の彼方に__」


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原作は「超高速!参勤交代」の土橋章宏、監督は「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」、出演者も豪華なので期待して観に行ったが、ハッキリ言って「なんだこりゃ」作品だった。

安政2年、安中藩主の板倉勝明(長谷川博己)は、浦賀にペリーが来航した話を聞き日本の未来を案じていた。
そこで藩士を鍛錬する遠足(とおあし)を行おうと考える。
藩士たちを緊急で城下に集めるのだが、その中には勘定方の唐沢甚内(佐藤健)も含まれていた。
甚内は、妻を娶り子供もいて普通の日常を送っていたが、正体は公儀の隠密だった。
藩の中で不穏な動きがあれば、すぐに江戸に知らせる役目を負っている。
甚内は板倉が藩士を緊急で集めたため、公儀への謀反と思い江戸に密書を送ってしまった。
しかし実際には板倉がしたのは、遠足の話だった。
甚内はすぐに密書を持った飛脚を追うが、時すでに遅く密書は江戸へと到着してしまった。
密書を受けた江戸は、すぐに安中藩への刺客を手配する。
甚内は遠足の最中に、その刺客を自分で迎え撃つことにした。

そして遠足が開催される。
その中には勝明の娘である雪姫(小松菜奈)も紛れていた。
雪姫は絵師を志して江戸に行くことを希望していたが、勝明に反対され城内に閉じ込められていた。
そこで遠足に紛れて藩を抜け出そうとしたのだ。
やがて江戸からの刺客が藩の外に到着し、遠足の参加者を次々と斬りだし始めた。

まず、脚本がかなり粗っぽい。
ペリーの来航で藩主の板倉が日本を憂うのはわかるが、なぜその鍛錬の策が遠足なのかがわかりづらい。
そして、ストーリーに中に伏線がほとんどなく、それどころか起承転結のメリハリもないので、最初から最後まで淡泊に展開していく。
殺陣のシーンだけやたら気合が入っているが、これはプロデューサーと監督が外国人だからかもしれない。
そもそも江戸時代の安中遠足の話を映画化するのに、なぜプロデューサーと監督が外国人なのかもよくわからない。
ストーリーは淡泊だが、竹中直人、豊川悦司、青木崇高、森山未來、染谷将太、中川大志、小関裕太など、出演者はやたら豪華である。
演技力のある実力派が出演しているだけに、ストーリーのあっさり感がより目立つことになってしまった。

原作、制作者、出演者でかなり期待してしまっていただけに、正直ガッカリ感はハンパなかった。
期待が高すぎたこともあるのだが、これだけ期待外れの作品もちょっと珍しい。


30.サムライマラソン


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ステュアート朝最後の君主であったアン王女(オリヴィア・コールマン)の側近のサラ(レイチェル・ワイズ)、そしてサラの従妹のアビゲイル(エマ・ストーン)の権力闘争の物語だ。

サラは少女の頃にヨーク公ジェームズ家の女官となり、そこでヨーク公の次女アンと親しくなる。
その後アンはイングランド、スコットランド、アイルランドの統一王女となるのだが、サラはアンに取り立てられ実質的に王国を仕切る立場となっていた。
その頃王国は、スペイン継承戦争でフランスと戦争をしていた。
王国の司令官は、サラの夫であるマールバラ公であった。
マールバラ公はフランスとの戦いに一度は勝利するのだが、軍がイギリスに引き上げた後フランスが反撃を開始する。
すでに戦争で大金を消費していたため、イギリス議会の野党は再度の出兵をせず、フランスと和平交渉をするべきだと主張。
しかし与党とサラは、より有利な条件を引き出すために再度の遠征を決定し、アン王女もこれを了承した。

その頃アビゲイルは、父が没落したため居場所を失い、従妹のサラを頼って宮殿にやってきた。
サラはアビゲイルと面識もなかったため、最初は他の女官達と一緒に下働きをしていた。
しかしアン王女の痛風の痛みを薬草で和らげると、サラに認められサラの女官に地位を上げる。
サラはアビゲイルに厳しく接するもかわいがり、宮廷内で生き残る術を教えようとする。
そしてアビゲイル自身も、サラの女官に甘んじる事無く、軍人であるマシャム大佐の妻になろうと考えていた。
そのためにはアン王女に気に入られる必要がある。
一方野党のリーダーのハーレーは、なんとかサラを失脚させようと考え、アビゲイルにスパイになるよう命令した。
アビゲイルは最初は拒否しようとするが、アン王女とサラの秘密の関係を偶然知り、ハーレーを上手く利用してマシャム大佐の妻になることを画策する。
ここからアン王女の寵愛をめぐって、サラとアビゲイルは壮絶な権力闘争を始める。

米アカデミーでは、アン王女役のオリヴィア・コールマンが主演女優賞を受賞している。
だが個人的には、主演はサラとアビゲイルなんじゃないかと思う。
とにかくこの二人の関係がすごい。
一度はバクチの借金のかたとして父親に売られるまで身を落としたアビゲイルは上昇志向が激しく、なんとしてでも上流社会に戻ろうと考えている。
一方サラは、自分はアン王女に唯一意見できる人間で、自分が王国を動かしていると言う自負がある。
しかしそれは私利私欲のためではない。
アン王女が戦争の祝勝として、マールバラ公とサラに宮殿をプレゼントしようとするが、税金の無駄遣いだとアン王女をたしなめる。
王女でありながら知性に欠けるアン王女を、親友としてサポートしていたのだ。
アビゲイルを自分の女官として取り立てたのも、アビゲイルがいずれアン王女と王国の役に立つと考えたためだ。
そのためアビゲイルを厳しく指導している。
最初は主従関係だった二人が、あるきっかけで激しく火花を散らす権力を争いを始めるのだが、この争いが凄まじい。
それゆえ、アン王女ではなくこの二人が主人公に見えてしまう。

「ラ・ラ・ランド」ではキュートなミアを演じていたエマ・ストーンだが、今回のアビゲイルはかなり激しい役で、彼女の引出しの多さを認識させられた。
アビゲイルをアン王女の寝室付き女官にしたのはサラだったなど、史実とはやや異なる部分も多いようだ。
だが、二人のドロドロの戦いが非常にうまく描かれており、完成度の高い作品だと思った。


29.女王陛下のお気に入り


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