バリー・シールという人の事はまったく知らなかったが、実話を元にしたストーリーだそうだ。
サブタイトルの「アメリカをはめた男」から、詐欺師的な話を想像していたが、実際にはまったく異なりいろいろなリスクを冒したパイロットの話であった。

1970年代、TWAのパイロットだったバリー・シール(トム・クルーズ)は、パイロットの特権を利用して密かに葉巻の密輸の手伝いをしていた。
それをキャッチしたCIAは、バリーの腕を見込んで引き抜き、当時アメリカの裏庭と言われていた中南米の、共産勢力の拠点の空中撮影を行わせた。
バリーはCIAの期待通りの仕事をして、数年後にはパナマのノリエガ将軍との仲介役を任されるようになった。
そこからバリーは、中南米を自由に飛行するようになり、かつ麻薬を密輸する組織ともつながるようになる。
だがさすがにその仕事はリスクが大きく、バリーはコロンビアで投獄されてしまった。
CIAはこのことを快く思わなかったが、バリーの利用価値を評価して黙認、ただし目立たないように田舎に巨大な飛行場を与え、そこを拠点に行動させた。
バリーが麻薬取締局(DEA)や空軍など、他の組織に逮捕されないようにしたのだ。

その後もバリーはCIAから、ニカラグアのコントラに武器を支援する仕事を任される。
しかし実際にバリーが現地に飛んでみると、コントラは武器を欲していなかった。
その武器はコロンビアのメデジン・カルテルのもとに流れ、メデジン・カルテルからコントラまでは麻薬が流れていた。
バリーはそれらの輸送をすべて請け負った。
そのため一人では仕事を回すことができなくなり、新たに4人のパイロットを雇ってチームを編成をした。
その結果、バリーたちにバンバン仕事が舞い込み、バリーは考えられないほどの大金持ちとなった。

だがあまりにも派手に行動したため、FBIが異変に感づきだした。
さらに、バリーの妻の弟がおかしな行動をするため、良好な関係だった州警察にも睨まれるようになる。
さすがに危険だと感じたCIAはバリーを見捨て、バリーは逮捕されてしまう。
しかし今度は、ホワイトハウスがバリーの仕事に注目した。
コントラではなくニカラグアの左派勢力もまた、麻薬の密輸に関与していることをバリーが知っていたため、バリーにその証拠映像を押さえるように言ったのだ。
バリーは司法取引で釈放され、麻薬密輸の映像を撮影しにニカラグアに飛んだ。

冒頭にも書いたが、バリーはかなり派手に行動しているものの、それらはすべてCIAに黙認されたものであり、「アメリカをはめた」という訳ではない。
むしろいいように使われていた感もある。
その結果、バリーもかなりの富を得るのだが、途中からはもう引き返せない状態になってしまう。
バリー自身が相当な野心家のようで、そろそろ手を引くか、と彼が考えるシーンはまったくなかったのだが、ここまでどっぷり麻薬組織とつながってしまうと、おそらくもう手を引くことはできなかったのだろう。
途中までは大金に囲まれるバリーがうらやましく思えたが、田舎に住むバリーが異常な預金を持っていることにFBIが気づいたあたりから、彼の人生には未来がない事が見えてしまった。

際限なく突き進むバリーの生き方は、映画として観る分には爽快で面白いのだが、これが事実に基づいていると知ると、ちょっと背筋に寒いものを覚えた。



123.バリー・シール/アメリカをはめた男


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フジテレビ制作だが、他局にもガッキーが番宣出まくりでゴリゴリに押していた作品だ。
これだけゴリ押しだと逆に中味が薄いのではないかと思ったが、きっちり笑って泣かせる作品に仕上がっていた。

富田多満子(新垣結衣)は母親のスパルタ教育の元、幼少時は天才卓球少女と呼ばれるほどの腕前を誇っていた。
しかし母親があまりにも厳しすぎたため、本心は卓球をやめたくて仕方なく思い続け、中学時に母親が他界したことをきっかけに、卓球から離れて普通の生活を送ろうとしていた。
卓球を忘れて普通に就職し、やがて30歳になろうとしていたのだが、そこに多満子の王子様江島(瀬戸康史)が現れる。
多満子が所属する会社が卓球に力を入れ、全日本クラスの江島と契約したのだ。
多満子は自分が卓球経験者であることを隠していたが、ひょんなことから江島と交際を始めることになる。
だが翌年、女子選手として小笠原(永野芽郁)が入社すると、あっという間に小笠原に江島を取られてしまった。
目の前で抱き合う二人を見てショックを受けた多満子は、そのまま会社を辞めて実家に戻るのであった。

多満子の父親は実家でタクシー運転手をしていたが、それと並行して、かつて多満子の母親が運営していた卓球クラブもそのまま残されていた。
実家に戻っても何もすることがなかった多満子だが、道で偶然出会ったかつてのクラブ仲間の弥生(広末涼子)に誘われ、卓球クラブでコーチをすることになった。
現在の卓球クラブのメンバーは、登校拒否の高校生佐々木(佐野勇斗)、プチトマト農家の落合(遠藤憲一)とその妻(田中美佐子)、そして最近参加し始めた工事現場労働者の萩原(瑛太)だった。
卓球クラブは社交場のようにユルい雰囲気で、15年のブランクがあったとはいえ多満子が一番の実力者である。

ある朝多満子がテレビを見ていると、そこには江島と小笠原が映っていた。
二人に激しい嫉妬心を燃やした多満子は、全日本選手権にミックス(男女混合ダブルス)でエントリーをし、二人を打ち負かそうと考える。
多満子はかつての卓球仲間に声を掛けてペアを組もうとするが、相手が怪我をしたため萩原とペアを組むことになった。
だが多満子と弥生以外はまったくの素人のため、神奈川予選で全員惨敗してしまう。
全員気落ちしてやる気をなくすが、卓球の練習の後に通っていた中華料理店の店主夫婦が、かつて中国の強化選手であったことを知り、二人にコーチを頼む。
コーチのスパルタ練習でメキメキと実力を上げるクラブのメンバーたち。
特に萩原は、かつてプロボクサーだったこともあり、運動神経もよく多満子といいペアになっていた。

だが萩原には秘密があった。
萩原が卓球を始めたきっかけは、前妻の連れ子だった娘が中学で卓球を始めたからだと聞いたからだった。
酔っぱらって帰宅し、妻が浮気していたと勘違いした萩原は、その相手を殴ったことで離婚していたのだ。
だが、血のつながりのない娘が、萩原にとてもなついていた。
そして2回目の全日本選手権の予選が翌週に迫ったとき、萩原の前妻が娘と現れる。
萩原を許して、取引先に就職させたいと言ってきたのだ。
面接の日は、ちょうど予選の日であった。

ストーリーは非常にわかりやすい。
ただ脚本の構成、監督の演出、役者の演技により、わかっていても笑って泣けてしまった。
前半にいくつもの伏線が貼られていて、それが後半できっちり機能している。
かつて卓球の天才少女と言われた多満子と卓球選手江島が付き合うというのも、あまりにも偶然すぎると思ったが、そこにも軽い伏線が貼られていた。
ラストの選手権の予選でも落合夫婦が軽く泣かせてくれるのだが、そこにもちゃんと伏線が貼られている。
建設現場の主任だったトレンディエンジェル斎藤が、首からカメラをぶら下げているなど、非常に細かい部分まで気を配られている作品だ。

監督石川淳一、脚本古沢良太は「エイプリルフールズ」のコンビで、さらにTVドラマの「リーガル・ハイ」もこのコンビだった。
私は「リーガル・ハイ」は見ていないが評判も良く、鉄板コンビと言っていいかもしれない。

そもそも、出演者が豪華だ。
拗ねるシーンが多い新垣結衣ももちろんいいが、自分の過去と向き合う瑛太の屈託も良かった。
広末涼子は、多満子を気遣うときの弥生の表情の素晴らしさだけでなく、卓球クラブと教授夫人のメリハリをきっちり演じ分けていて、改めて力量を感じさせた。
蒼井優の中華料理店の店員は、もはや反則と言っていいかもしれない。
その他の脇役陣ももちろん素晴らしく、多満子の父親役の小日向文世に至っては、出番が少なすぎてもったいない気がした。

フジテレビがこれだけゴリゴリに押していると、それだけで難癖をつけたくなるへそ曲がりも多いだろう。
しかし個人的に「努力、友情、勝利」の少年ジャンプ系スポ根ストーリーが好きだという事もあるが、細かい部分のこだわりにも共感でき、非常に満足した作品であった。


122.ミックス。


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名作の続編の割には、アメリカでも日本でも評判はあまりよくない。
そして私が観た感想も「うーん、こんなものなのかな」であった。

前作から30年後の2049年、たびたびレプリカンとが反乱を起こすことが原因で、タイレル社は倒産していた。
そのタイレル社の資産を買い取ったのが、ウォレス社だ。
ウォレス社は、狂った生態系が原因で起きていた食糧難を劇的に解決し、躍進していた。
ウォレス社によって改良開発された新型レプリカントは寿命が設定されており、人間に反乱を起こすことはなかった。
そして一部の新型レプリカントはブレードランナーとなり、旧型レプリカント解任の任務を負っていた。

新型レプリカントのK(ライアン・ゴズリング)も、ブレードランナーの一人だった。
ある日郊外の農場で一人の旧型レプリカントを解任するが、その農場の大木の根元に箱が埋まっている事を発見する。
ロス市警がその箱を調べると、中に旧型レプリカントの女性の遺骨が入っていた。
遺骨は綺麗にクリーニングされた状態で格納されており、意志を持って埋葬されたことがわかる。
そしてさらに細かく検査をすると、そのレプリカントが帝王切開中の合併症で死亡したことがわかった。
レプリカントが妊娠することは物理的にあり得る訳がなく、Kの上司のジョシは事実の隠ぺいを図ろうとする。
ジョシの命令で、Kはレプリカントから生まれた子供を含めて、記録をすべて消去することになった。

Kはまず、ウォレス社に出向き骨からレプリカントの記録を調べる。
かつての「大停電」でそれ以前の記録はほとんどが消滅していたが、骨がレイチェルという名のレプリカントであったことを突き止める。
一方、ウォレス社の社長ネアンダルは、レプリカントによる生殖を実現し、さらなる事業の拡大を目論んでいた。
そしてKがかつて出産したレイチェルを追っていることを知り、秘書のラヴにレイチェルの骨を盗ませ、その子供も連れてくるように命ずる。

Kは、レイチェルの骨が埋まっていた場所に戻り、そこで解任したレプリカントが持っていた小さな木馬を発見する。
その木馬はKの記憶にも残っていて、Kは自分の記憶がレイチェルの子供とリンクしていることに気付く。
Kは自分が生まれた後に誰かの記憶を植え付けられたものだと思っていたのだが、Kと一緒に行動していたホログラムのジョイは、Kがレプリカントではなく本当の人間である証拠だと言う。
Kはさらにレイチェルの子供について調べるが、レイチェルは男女の双子を出産し、二人は孤児院に預けられたが、女児は難病で死亡していたことを知る。
記憶デザイナーのアナ・ステリン博士によると、レプリカントに実在した人間の記憶を埋め込むことは違法であると知り、Kは自分がレイチェルの子供ではないかと迷いはじめた。

そんな中、Kは市警の行動テストで不合格となり、停職処分になる。
そして木馬の放射線量をチェックし、木馬がかつてラスベガスにあったことを突き止めた。
Kはジョイとともに廃墟となったラスベガスに向かうのだが、そこにいたのはかつてレイチェルと逃亡したデッカード(ハリソン・フォード)であった。

ストーリー構成は、いたって簡単だ。
前作のラストでデッカードと逃げたレイチェルが本当に出産したのか、そしてKは彼女の子供なのか、がメインテーマである。
そこに、もしレプリカントの出産が事実であっても公にはしたくないロス市警と、レプリカントに生殖能力を持たせてさらに事業を拡大したいウォレス社の思惑が絡んでくる。
Kはレプリカントであるため、上司のジョシの命令を拒否することはできないのだが、命令よりも自分の生い立ちを確認したいという欲求の方がつよくなり、事実を突き止めようとする。

シンプルなストーリーのうえに、重厚な世界観が乗っかってくる。
時代が進んだため市街地は前作よりかなり整理されている感があるが、混とんとした部分も絶妙に残されている。
さらに市街地以外、特にラスベガスの荒廃っぷりの表現は見事だ。
劇場での格闘シーンでは、かつてラスベガスを支えた3Dホログラムショーと思われる、プレスリーやマリリン・モンローなどが映し出される。

ただ、このシンプルなストーリーと重厚な世界観のバランスが悪い。
美しい映像の状況描写やセリフの間などで世界観を作り上げているため、テンポはあまりよくない。
上映時間も2時間48分である。
観客は制作者のもくろみ通り、上映時間中に映画の世界に引きずり込まれるのだが、あまりにもストーリーがシンプルすぎるため、観終わったあとに肩透かしをくらったような気になってしまう。
個人的には「えっ、これで終わるんだ」というのが正直な感想だ。

少々ネタバレになってしまうが、ラストシーンでもう少しKの生い立ちについて、K自身が激しく悲哀をあらわす結末にした方がいいような気もした。
完全な人間ではないKが激しい感情を表現するのは整合性が取れないかもしれないが、映画としてのメリハリを考えると、ラストをもう少し強調すべきだったんではないかと思った。



121.ブレードランナー 2049


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今回のギンレイは「パトリオット・デイ」と「ハクソー・リッジ」の2本。
「ハクソー・リッジ」は観ているのでスルーして、「パトリオット・デイ」だけ観た

2013年のボストンマラソン爆破事件をテーマにした映画だ。
かなり忠実に事実を再現しているようだが、描き方が秀逸で映画としても完成度が高かった。

ボストン市警の刑事トミーは本来殺人課の所属だが、ペナルティでボストンマラソンの警備をさせられることになった。
トミーがゴール付近で警備をしていると、立て続けに爆発が2件起きる。
子供を含んだ観衆が犠牲となり、マラソンはすぐに中止となった。

事件後すぐにFBI特別捜査官のリックが現場に駆けつける。
トミーたちは監視カメラに映っていた「黒い帽子」と「白い帽子」の二人の男の映像を公開すべきだと主張するが、リックはこの二人が犯人であるという確証がないことを理由に、映像の公開を拒んだ。
しかし混乱で情報が錯綜し、報道機関が別人を犯人とするなどし始めたたため、やむなく「黒い帽子」と「白い帽子」の男の映像を公開した。

テレビでこの情報公開を見ていた犯人のタメルランとジョハルの兄弟は、N.Y.でさらなる爆弾テロを起こそうと考える。
そして二人はパトロール中の警官を襲い、銃を奪おうとした。
警官は絶命し、さらに二人は街中でベンツのSUVを奪ってN.Y.に向かおうとした。
だがSUVの持ち主が、途中のガソリンスタンドで逃亡して警察に通報、駆け付けた警官たちとの間で激しい銃撃戦となる。
警官二人が重傷を負うが、ここで兄のタメルランを捕獲、しかしタメルランは運ばれた病院で死亡した。

一方弟のジョハルは、そのままSUVに乗り逃亡した。
すぐにSUVを乗り捨て、闇夜に紛れて市街地に潜伏、ボストンの街は外出禁止令が敷かれることになった。
そして数時間後、パトロール中の警官がある家の庭に置かれたボート内に、人がいることを確認。
SWATが駆け付け、ボートの中のジョハルを逮捕した。

事件自体はもちろんニュースで知っていたが、逃亡中の犯人より警察官が犠牲になったことは知らなった。
また犯人が自作の手榴弾など爆発物を多数所持していていたため、それ以外にも警官が負傷していたことも知らなかった。

そもそもが映画のような展開の事件だったのだが、テロまでの爆発と、事件の後の描き方が非常に巧い。
警察官や犯人だけではなく、爆発で負傷する夫婦や、SUVを盗まれた中国からの留学生などを、事件前から並行して描いている。
普通の日常を送っていた人々が爆発事件に巻き込まれ、当事者になってしまった様子の描き方が秀逸だ。
事件から3年後のラストシーンは、片足を失った夫が義足でボストンマラソンを完走、それをゴールで待ち受けるのは、両足を失った妻だった。

テロに負けずに立ち上がったアメリカを賞賛する映画だという見方もできなくはないが、実際の映像の取り込み方も良く、個人的にはシンプルに構成の巧さを評価したい映画だった。


120.パトリオット・デイ


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先週の日曜日の段階では、切れ味勝負と予想してディープインパクト産駒から狙うつもりだったのだが、今週も不良馬場になってしまった。
良馬場だったら本命にするつもりだったサトノアラジンも、13:45段階で12.8倍の5番人気になっている。
かなり難しいが、有力馬の絶対能力を比較してみる。

まず一番人気のキタサンブラック。
これまで稍重を3回走って1.0.1.1だが、勝ったのは新馬戦のみ。
残りの2戦はどちらも宝塚記念で、今年は9着に沈んでしまった。
では重馬場が苦手なのかと言うと、稍重までしか走っていないのであまり参考にならない。
むしろこの馬の場合、3歳春は1月にデビューし、4、5戦目をそれぞれ3、14着、秋は休みかけから2連勝して有馬記念を3着、それ以降も休み明けで負けたのは4歳春の産経大阪杯の2着のみ。
それ以外は休み明けはすべて勝利して、負けているのはシーズン最終戦ばかりだ。
休み明けのフレッシュな状態の方が、好走する傾向にある。
馬場対応の判断は難しいが、馬場が重くなってスタミナ勝負になった場合は有利になるだろう。

次に2番人気のサトノクラウン。
元々がヨーロッパ血統で、重馬場の京都記念を勝っているから馬場適正は問題ないだろう。
ただしこの馬の場合、昨年このレースで14着、一昨年も17着と実績がない。
やや不安は残るものの、2歳時に東京スポーツ杯2歳Sを勝利しているので、まったくコース適性がないという訳でもなさそうだ。
むしろ、過去2年はどちらも今年同様ぶっつけでこのレースに挑んでいることが問題か。
今年の宝塚記念を勝っているものの、どちらかと言えば冬場に好成績を残していることもあり、今回はやや評価を落とす。

3番人気はリアルスティールだが、この馬が一番死角が少ないかもしれない。
全弟のプロディガルサンは、条件戦とは言え先週不良馬場を2着しており、馬場もこなせそうである。
唯一の不安点は、鞍上がテン乗りとなるシュミノーであること。
能力は認めるが、非常に乗り難しい今日のコンディションで、この馬の能力を出し切れるか。

4番人気はソウルスターリング。
前走の負けは休み明けという事もあり度外視していいだろう。
ヨーロッパ血統なので重馬場は問題なさそうだが、やはり4歳牝馬という点で、メンタル面で少し割引が必要かもしれない。

5番人気はサトノアラジン。
飛びが大きい走法なので重馬場は苦手と思われており、実際今年の京王杯スプリングCは9着だったが、稍重までは実績がある。
さらに全姉のラキシスは不良馬場の産経大阪杯を勝っており、この馬もこなせる可能性もなくはなさそうだ。

以下、面白そうなのは8番人気のヤマカツエースだ。
昨年このレースで15着だったが、それ以降は5戦して掲示板を外していない。
東京コースは過去3回走ってすべて二桁着順だが、中京コースは勝利しているので本格化した今なら心配はないだろう。

そのほかでは、グレーターロンドンは距離2000mがギリギリで、重馬場でスタミナを求められると苦しそうだ。
ネオリアリズムは重馬場は得意そうだが、さすがに半年振りのレースでは割引が必要だろう。
マカヒキ、ワンアンドオンリーのダービー馬2頭はまだ復調途上だろう。
ステファノスも当初は印を付ける予定だったが、やはり馬場状態を考え評価を下げた。

順番は以下の通りにする。

◎キタサンブラック
〇サトノアラジン
▲リアルスティール
△ヤマカツエース
×サトノクラウン
×ソウルスターリング


馬券は◎○1着、◎○▲△2着、◎○▲△×3着の、3連単24点で勝負。


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台風接近でどんな馬場状態になるか想像ができない今年の菊花賞。
だがそれ以前に、出走メンバーが小粒だ。
4勝馬が2頭で、重賞勝ち馬も2頭だけ。
抽選で滑り込んだスティッフェリオはの獲得賞金は900万円。
手元に詳しい資料がないが、たぶんダービーの時よりも出走条件が下がっている。
馬場状態を考えても、何が勝ってもおかしくない状態だ。

予想の手がかりも少ないので、今回は実績よりも血統を重視することにした。
本命はウインガナドルだ。
父はステイゴールドで母の父はメジロマックイーン、今回の出走馬ではこの馬が一番長距離の血を受け継いでいる。
逃げ馬で1枠2番と言う絶好枠に入った。
3走前の夏木立賞をやや重で勝利しているが、母のタイムフェアレディもやや重のうぐいす賞を勝利しているので道悪も大丈夫だろう。
さらに鞍上の津村は、2010年の菊花賞でコスモラピュタで逃げを打ち5着に粘っている。
条件的にはこの馬が一番勝利に近い。

2番手はキセキ。
春は惜しい競馬でクラシック出走権を得られず休養、7月に復帰してから2連勝し、前走の神戸新聞杯は上り最速の脚を記録してレイデオロの2着だった。
元々中段より後ろというレーススタイルと、やや外枠に回ったことは気になるが、父のルーラーシップは道悪得意だったので馬場状態は問題ないだろう。
デムーロが巧い位置に付けられれば、直線ですいすい抜け出してくる可能性は高い。

3番手はアルアインだ。
ディープインパクト産駒は、昨年のサトノダイヤモンドまで3000m以上の重賞勝ち鞍がなかった。
秋の京都はディープ産駒が活躍するが、この馬場と言う事もあり今回はやや厳しいか。
とは言え、出走馬中4勝馬、重賞2勝、G1勝ち馬はこの馬しかいない。
昨日の富士Sでエアスピネルとイスラボニータがワンツーしたように、極悪条件では結局実力馬が上位に来る、という可能性もある。
先週秋華賞を勝ったルメールに期待したい。

4番手はダンビュライトにする。
朝日杯FSは13着だったが、ダービーの6着を含め、春のクラシック戦線では常に上位争いを演じてきた。
ルーラーシップ産駒で鞍上が武豊という事を考えると、ここでも上位争いは必至だ。

5番手はミッキースワロー。
セントライト記念は素晴らしい脚でアルアインを見事に差し切った。
前日発売で1番人気だが、馬場が良ければこの馬がだんぜんの一番人気だっただろう。
ただ、トーセンホマレボシ産駒と言うことで馬場が合うかどうかがまったくわからない。
しかも父の兄トーセンジョーダンは天皇賞秋をレコードで勝っており、どちらかと言えば中距離のスピード血統のような気がする。
母の父ジャングルポケットの血統で、どこまで距離と道悪をこなせるかがカギだ。

最後は迷った。
順調に来ていれば、春のクラシック戦線でも主役だったはずのブレスジャーニー。
重賞を2勝しておりダンビュライトにも先着しているが、さすがに11か月の休み明けでこの馬場状態では息が持たないだろう。
ステイゴールド産駒のマイネルヴンシュは、2500mの九十九里特別を古馬相手に勝利。
デビューから一貫して2000m以上を使われており、初めて56kgを背負ったとき以外は、着実にタイムを縮めており成長力を感じさせる。
栗東に先に乗り込んでおり、陣営も勝負気配だ。
とはいえ、前走もクビ差でもう一つパンチに欠ける。

であればベストアプローチだ。
〇外でヨーロッパの血統だから、重馬場は問題ないだろう。
まだ1勝馬だが、これまで大きく負けたこともない。
京都で1.0.1.0と言う成績を考えると、ここも渋太く上位争いをしそうな気がする。


◎ウインガナドル
〇キセキ
▲アルアイン
△ダンビュライト
×ミッキースワロー
×ベストアプローチ

馬券は◎○1着、◎○▲△2着、◎○▲△×3着の、3連単24点で勝負。


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上映している映画館も少なく、予想よりも早く上映回数も減ってしまった。
ひょっとすると、期待してより面白くないのかなとも思ったが、さらにあらず。
久しぶりに、誰にでも勧められる非常にいい映画と巡り会った。

1950年代に生まれたキャサリンは、幼少の頃から数学において天才的な能力を発揮し、黒人でありながら教師たちに勧められ飛び級で進学するほどの実力の持ち主であった。
しかし彼女が大人になった1960年代であっても、アメリカにはまだ人種差別が根強く残っていた。
それでもキャサリンはその優秀な頭脳を生かし、宇宙開発を行っているラングレー研究所に計算係として採用されていた。

ラングレー研究所内にも人種差別は存在した。
トイレは白人と有色人種に分かれているのは当たり前、計算係の仕事においてもセクションが東(白人)と西(有色人種)に分かれており、西の計算係は日によって担当する部署が異なり、まるで日雇い労働者のようであった。
キャサリンは、同じく理系において優秀な能力を持つメアリー、統括能力のあるドロシーと3人で研究所に通っていたが、それぞれ悩みがあった。
メアリーは彼女の能力を買っていた上司からエンジニアの講習を受けるように言われるが、研究所の規定でその講習を受けられるのは、白人のみが通える大学、もしくは高校で単位を取得しなければならなかった。
ドロシーは前任者が辞めた後、半年以上も西計算係で管理職と同等の仕事をしていたが、昇進の話はいっさいなかった。
キャサリンはロケット打ち上げ軌道を計算するセクションで計算の手伝いをすることになったが、そこでもエンジニアのポールから嫌がらせを受けて、数値が黒塗りの資料を渡され、検算するように言われる。

しかし、キャサリンの上司でプロジェクトの責任者ハリソンは、変わり者だが優秀な人材を認める人間であった。
そしてすぐにキャサリンの実力を見抜き、常に先を見抜いて計算する人材が必要なのだと彼女に告げた。
すぐにハリソンの期待に応えるキャサリン。
キャサリンの卓越した計算能力とセンスは、それまでソ連に後手後手だったアメリカの宇宙開発を躍進させるのだった。

この映画を誰にでも勧めたい理由は、キャサリンたちがどん底の状態からスタートし、自分たちの努力や能力で成功を手に入れるという映画だからだ。
少々ネタバレになってしまうが、最初が底辺からのスタートで、そこからは上がっていく一方だ。
だから終始安心して観ていられるのもいい。
キャサリンたちが変に卑屈にもならず、成功だけを喜んでいく姿も観ていて清々しい。
映画なのでもちろん脚色もあるのだろうが、脚本も素晴らしく、彼女たちの努力に周りが感化され、どんどん変化していく様子が小気味よく描かれている。
仕事だけではなく私生活も幸せになっていく点も、観ているこちらをハッピーにさせてくれる。
役者の演技も含めて、何から何まで完成度の高い映画である。

働く女性すべてに観てもらいたいし、中高生にも観てもらいたいとも思う。
だがあまり日本では話題になっていない。
その理由は「ドリーム」という地味なタイトルが原因なような気もするが、調べてみると邦題は当初「ドリーム 私たちのアポロ計画」だったのだが、「内容がアポロ計画ではなくマーキュリー計画だろう」という突込みが入り、「ドリーム」だけになってしまったとのこと。
本当にくだらない話である。
だったら、「ドリーム 私たちの宇宙計画」にすればよかっただけの話だ。

この映画を観た人は、この映画の良さを語り続けなければならない。
そして映画の内容とともに、かつて自分たちの能力と努力で人種差別に風穴を空け、宇宙開発にも大きく貢献した3人の黒人女性がいたことも、同時に語り継がなければならないだろう。
それだけの価値がある映画だ。


119.ドリーム


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新猿の惑星シリーズの最終章である。

前作後、シーザー率いる猿と残された人間の戦いは激化していた。
ある日米軍の部隊が森の奥の猿の居住区を急襲し、猿たちにかなり大きな犠牲が出てしまう。
そしてちょうどその夜、猿たちが安全に暮らせる場所の調査に出ていたシーザーの息子ブルーアイズが帰還した。
シーザーたちは早々に安住の地に旅立とうとするが、そこに軍を率いているマッククロウ大佐の部隊が闇に隠れて忍び込み、シーザーの妻とブルーアイズを殺害してしまう。
怒りに狂ったシーザーは、安住の地に旅立つ仲間と別れ、大佐への復讐のために一人で行動しようとする。
シーザーを案じたオランウータンのモーリス、チンパンジーのロケット、ゴリラのルカの3頭も、シーザーと一緒に行動することにした。

4頭は軍隊を探しているうちに、口がきけない少女と巡り合う。
少女を置き去りにすれば新でしてしまうと言うモーリスが言うため、シーザーは渋々少女を同行させることにする。
やがて軍隊のキャンプを発見、しかし大佐の姿は見当たらなかった。
軍で下働きをしていた裏切り者のウィンターから、大佐は北からの援軍と合流するために先に出発したことを聞いた4頭は、後続の軍を尾行して大佐の後を追うことにした。
するとシーザーたちは、軍の中に死亡者が発生し、その死亡者には少女と同じ症状が出ている事を発見する。

その後一行は、かつて動物園から逃げて1頭で暮らしていたバッドエイプと名乗るチンパンジーと遭遇する。
嫌がるバッドエイプを無理に説得し、シーザーは軍の合流先までバッドエイプに案内をさせた。
しかし合流地点が見える位置に到達したとき、シーザーたちは兵士に見つかり捕われてしまう。
そこには、安住の地へと旅立ったはずのシーザーの仲間たちも捕えられていた。

前作では、かなり派手に人間 vs 猿の戦いが描かれていた。
しかし本作では、人間 vs 猿の戦いは冒頭の戦闘シーンのみである。
今回の人間が、前作のように一般市民ではなく兵士のためか、全体を通して人間の方がかなり有利な立場に立っていて、猿は支配される側に描かれている。
その設定の中で、シリーズのスタートとなる1968年の「猿の惑星」につながるストーリーを展開している。

決まった結末へと収束していくためか、映画全体はやや小粒な印象を受ける。
すべてに整合性を付け、手堅くまとめている感が強い。
それでも、復讐心を抑えられない事で自分がコバと変わらないと悩むシーザーの心情も、よく描けている。
ただ、一つの作品としてはまとめられてはいるのだが、シリーズ全体の結末と考えるとやや物足りないような気もする。



118.猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)


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監督は「大鹿村騒動記」、「北のカナリアたち」の阪本順治。
両作品とも数々の映画賞を取っているが、個人的には今一つピンとこなかった。
その後の「人類資金」に至っては、原作を切り刻みすぎて何がなんだかよくわからなかった。
そして今回の「エルネスト」も、微妙な作品になってしまっていた。

1962年、キューバ政府の使節団として来日していたゲバラは、当初の予定をキャンセルして広島に向かい、平和記念公園で献花をして、平和記念資料館の見学や原爆病院を訪問した。
そして取材に来ていた新聞記者(永山絢斗)に、「なぜここまでされてアメリカに怒らないのか」と告げた。

その3年後、日系ボリビア人のフレディ・マエムラ(オダギリジョー)は、仲間と一緒に医学生としてキューバに留学していた。
だが入学して数日後にキューバ危機が発生、フレディたちも兵士として沿岸警備の任に就いた。
キューバ危機が去った後は大学に戻り、医学生として勉強を始めるフレディ。
友人は恋人を妊娠させて逃げるなどいかにも青春ストーリー的な学生時代を過ごしていたが、フレディは祖国を思って医学の道に勤しんでいた。

そんなある日、ボリビアで軍事クーデターが発生する。
祖国の未来を憂いたフレディは、周囲が止めるのを聞かずに反政府軍に身を投じることを決意した。
革命支援隊に志願をし、そこでゲバラから「エルネスト」と言う呼び名を与えられる。

ゲバラを題材にした映画は、メジャーな作品で言えばこれまで3本制作されている。
「モーターサイクル・ダイアリーズ」、「チェ:28歳の革命」、「チェ:39歳 別れの手紙」である。
「モーターサイクル・ダイアリーズ」は青春映画で、「チェ」2作品は革命時のゲバラを描き、戦闘シーンも多い作品だ。
今回の「エルネスト」の予告編を観た時には「チェ」2作品に近いのかと思ったが、戦闘シーンはほとんど描かれておらず、「モーターサイクル・ダイアリーズ」に近い内容であった。
監督自身も、「これは青春映画です」と言っているらしい。
だが、それこそがこの映画を微妙な作品にしてしまった要因でもある。

まず、ゲバラとマエムラの関係が想像していたほど深くない。
マエムラはゲバラに感化され行動を起こすのだが、ゲバラがどれだけマエムラを評価していたのかがほとんど描かれておらず、わかりづらい。
唯一それを思わせるシーンは予告編にもあった、ゲバラがマエムラに「憎しみから始まる戦いは勝てない」と言うシーンだけである。
マエムラを評価しているからこそ彼に言葉をかけたのだと思うが、映画を観ているだけでは、ゲバラがマエムラだけにこの言葉を向けたようにも思えない。
だからゲバラがマエムラに「エルネスト」という呼び名を与えるのも、なんだか唐突なように見えてしまう。

史実では、マエムラはもっとゲバラに評価され、いろいろな教えを受けていたのかもしれない。
しかしストーリーのほとんどはマエムラの心の葛藤シーンで、ゲバラとの強い師弟関係は描かれていない。
それゆえ、冒頭のゲバラの日本の訪問シーンも、ストーリーから浮き上がったように見えてしまっている。
私自身ゲバラが日本に来ていたことは知らなかったが、彼が来日していたことがこの映画の中で生きていない。
観客の関心を惹くためだけにゲバラを強引に組み入れた感が、非常に強く感じられた。

であるならば、中途半端にゲバラをフィーチャリングせず、「モーターサイクル・ダイアリーズ」ように、もっとマエムラのバックグラウンドや心の葛藤だけを掘り下げた方がよかったと思う。
映画を観る限り、マエムラはブルジョアジー特有の青臭い正義感をかなり強く持っている人物だったようだ。
そういう意味ではゲバラに非常に似た性格だったのかもしれない。
そしてその正義感自体は悪いことではないし、そういう人物がすべてを投げ打って祖国のために戦うという部分だけ掘り下げても、十分映画になり得たはずだ。
ゲバラをよく知らない人でも、作り方次第で十分マエムラの人生に感動しただろう。

無理にゲバラを捻じ込んだために、重要な部分が失われてしまったような気もする。
オダギリジョーの演技はよかっただけに、非常に残念な作品になってしまった。


117.エルネスト


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9月に放送された「天空の城ラピュタ」を録画して見る。
TVでの放送もすでに16回目だが、たぶんそのうち半分は録画をして見ている。
個人的には、宮崎駿作品は「カリオストロ」「ナウシカ」「ラピュタ」の初期3作品が群を抜いて面白いと思っている。

もう何回も見ている作品だが、今回見ていて気づいた点がある。
「ラピュタ」のストーリー展開は、ドラクエやFFに似ているのだ。

前半は、パズーが働く炭鉱の谷にシータが現れる。
谷の世界観は19世紀後半、産業革命後のヨーロッパの片田舎のようだ。
人々の格好も古めかしいし、ドーラが乗ってくるオートモービルも、クラシックカーの様相を呈している。
文化や技術的には、現在よりも以前の年代をイメージさせている。
そこで単線の機関車とオートモービルを使った、パズーとシータの逃走劇が描かれている。
唯一、シータを追ってきた装甲列車だけが、第二次大戦中のドイツの装甲車を連想させるが、それとて現代よりも前の時代のイメージだ。
その後二人は地下に逃れるが、つかまって要塞に連れて行かれる。
この要塞も石造りも、せいぜいが第二次大戦中の要塞といった外観である。

しかしパズーとドーラが邂逅してから、世界観は一変する。
フラップターやゴリアテという空想の乗り物が活躍し、とんでもない破壊力を持つロボット兵が登場する。
そして舞台は天空へと移る。
その後は、かつてのラピュタ王国の技術力をこれでもかと見せつけられる展開だ。

最後にドラクエをプレイしたのは、たぶん20年以上前だ。
そのためその時の記憶ではあるのだが、ドラクエやFFなどのRPGも、最初はヨーロッパ風ののどかな世界がスタート地点である。
そこから少しずつレベルアップして行動できるエリアが広がり、やがて天空などの伝説の空間へと展開していく。
この新しい空間が広がったとき、ワクワク感がマックスになる。

最初は身近な世界に感じさせておいて、途中から一気にギアをあげてワクワクさせるという部分で、「ラピュタ」とRPGはよく似ていると思う。
そして映画を見る者、ゲームをプレイする者は、そこで完全に物語の世界観に引きずり込まれてしまうのだ。
能力のあるクリエイターは表現するフィールドが異なっていても、「ワクワクさせる」方法をわかっているのだろう。

ところで何度も見ている「ラピュタ」だが、今回ちょっと整合性が取れないシーンを発見してしまった。
一つ目は、冒頭の炭鉱のシーンで、地下で採掘をしていた工夫たちが地上に戻ってきた直後。
パズーがエレベータを操作していたときには、地上には親方とパズーしかいないのだが、工夫たちが手押し車を押してエレベータから出てくると、研究者風の男が「どうだった?」と言いながら突然画面に登場する。
いったいこの男は、パズーがエレベータを上げている時にどこにいたのだろうか?

二つ目は、パズーとシータが単線の機関車に乗った後のシーン。
オートモービルで追いかけてくるドーラたちを「あいつらドーラ一家だ」と、機関車の運転士に説明する。
それ以前、シータがパズーに「あの人たち海賊なの」と説明するシーンがある。
逃げている途中でシータが「海賊のドーラ一家よ」と説明していた可能性もあるが、そもそもシータはドーラ一家に突然襲われた後、ドーラたちが誰だかわからないうちに飛行船から落下している。
この時代、海賊はドーラ一家しかいなくて、海賊=ドーラ一家の代名詞だった可能性もあるが、ちょっと違和感を感じた。

まあ、こんなこと考えながら「ラピュタ」を見ている自分に、一番違和感を感じるんだけど。



116.天空の城ラピュタ(再)


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