「ブリッジ・オブ・スパイ」

スピルバーグとトム・ハンクスという事でかなり期待していたのだが、正直期待したほどではなかった。

ジェームズ・ドノバン(トム・ハンクス)はソ連のスパイとして逮捕された男の弁護を依頼される。
スパイのルドルフ・アベル(マーク・ライランス)はとても優秀で、自分の任務の事は一切しゃべらなかった。
自由の国アメリカでは、スパイと言えども罪と照らし合わせて正当に評価される。
だが時はマッカーシズムが吹き荒れる1950年代、世論はスパイに厳しい目を向けていた。
そのスパイの弁護をするとなると、当然ドノバンにも批判の声が上がる事になる。
実際彼はアベルの弁護中、自宅に銃弾を撃ち込まれる事になった。

家族の反対を受けながらドノバンはルドルフの弁護をし続け、連邦裁判所での審理にまでこぎつける。
しかしそこから事態は急転する。
ソ連上空を空撮していた偵察機が撃ち落とされ、米軍のパイロットが捕虜となったのだ。
米軍は機密漏えいを恐れ、急遽アベルを捕虜交換要員とする事を決定。
捕虜交換交渉の場を東ベルリンに設定し、ドノバンを交渉要因として向かわせる事にした。
しかし公式には、米軍はパイロットが捕虜になっている事も認めていない。
ドノバンの任務は、表向き米軍とは関係のない交渉と言う事になる。

さらに、東ベルリンに留学中だったイギリス人大学生が、ベルリンの壁の前で拘束されてしまう。
東ドイツとしては、大国アメリカと人質交換を行う事により、世界にその名を知らしめたいという思惑があった。
ソ連としてはアベルさえ戻ってくればそれでいいのだが、交渉が長引くとアメリカが手を引いてしまう可能性もある。
そのため東ドイツに余計な事はして欲しくなかったのだが、東ドイツもなかなかソ連の思惑通りには動いてくれなかった。

アメリカ本国は、イギリス人大学生の安否は無視してアベルとパイロットの捕虜交換を進めるように指示してくる。
しかしドノバンは諦めず、アベル一人と二人の捕虜交換を行うべく、必死に交渉をするのだった。

予告編を見た時には、米ソのヒリヒリするようなギリギリの交渉劇が繰り広げられるのかと思った。
イメージ的にはキューバ危機を描いたケビン・コスナーの「13デイズ」だ。
だが、捕虜交換と言う事でそこまでの緊迫感はなかった。
それは私が過剰に期待したせいだったのかもしれないが、実は前半部分、ドノバンがアベルを弁護するシーンはなかなかのヒリヒリ感があるのだ。

自分以外のすべてがアベルに敵意を持ち、言外では死刑が相当と言う雰囲気にもなっていた。
なぜこんな男を擁護するのか、という罵声を浴びながらもドノバンは必死にアベルを弁護する。
そのヒリヒリ感はなかなかのものだった。
そして前半部分から考えると、後半部分はさらにヒリヒリ感が増すものだと思った。
しかしそうではなく、後半部分はやや失速した。
それは、交換される捕虜の重要性にちょっと差がありすぎるからだ。

アベルは冒頭にスパイとしての能力の高さが描かれていた。
当然救出する価値がある人間である。
一方アメリカ人パイロットは、アベルと交換するに値するかどうか、疑問符が付いた。
万一の時には自殺するように毒針を持たされるが、それを使う事もない。
さらにイギリス人大学生も、彼女を救い出すためにマゴマゴして連行されている。
ラストで二人がいかに優秀な人物だったかという表記も出るのだが、作品としてそのあたりが伝わってこない。

ドノバンはなんとか交渉で二人とも連れて帰ろうとするのだが、正直「アメリカ政府が主張する通り、パイロットだけでもいいんじゃない?」と思ってしまった。

10.ブリッジ・オブ・スパイ


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by ksato1 | 2016-01-19 20:44 | 映画 | Comments(0)

「ピンクとグレー」

原作を含めジャニーズ色が濃い事に一抹の不安を感じていたが、監督が行定勲で菅田将暉が出演しているからそこそこ面白いだろうと思って観に行った。
そして感想はと言えば、想像以上に面白い作品だった。

蓮吾(中島裕翔)、大貴(菅田将暉)、サリー(夏帆)は小学生時代からの親友だ。
大貴はサリーの事が好きだったが、高校生のバレンタインの時にサリーは蓮吾にチョコレートを渡し、思いを告げる。
だがその直後にサリーが引っ越してしまい、サリーが蓮吾と大貴の関係を崩す事はなかった。

蓮吾と大貴はバンド活動をするなど、その後もずっと一緒につるんでいた。
そんなある日、二人は渋谷で読者モデルとしてスカウトされる。
高校卒業後に一緒に暮らし始め、二人は読者モデルから役者を目指す事にする。
そして街で偶然、美大に入学していたサリーと再会する。

3人はまた親友として接し始めたが、ルックスに優る蓮吾の方が仕事が多くなってくる。
事務所は蓮吾のバーターとして大貴の仕事も取ってくるが、不器用な大貴はその事に納得が行かない。
やがて蓮吾に大手事務所への移籍話が持ち上がるが、大貴は何も聞かされていなかった。
当然、自分は今の事務所のままだ。
事務所移籍とともに引っ越す事になっていたが、そこで蓮吾と大貴は袂を分かつ事になった。

数年後、大貴はサリーと同棲していたが、定職が見つからずにぶらぶらしていた。
そんな時に高校のクラス会に出席する。
蓮吾はすでに大スターとなっていたが、仕事の合間を縫って彼もクラス会に出席した。
蓮吾の登場で居場所をなくした大貴はクラス会を抜け出すが、実は蓮吾は大貴に会うためにクラス会に出席しており、大貴を追いかけてきた。
久しぶりあった二人は昔のように仲良く朝まで酒を飲んだ。
そして二人はその日の夜も会う約束をし、大貴は約束の時間に蓮吾のマンションに向かった。
言われたとおりに高級マンションを訪れた大貴だが、大貴は部屋の中央で首を吊って自殺していた。
部屋には6通の遺書が残されており、蓮吾は大貴にその中から一つを選んで実行するようにと記していた。

映画としては、なかなか実験的でかつ秀逸な作品である。

前半は定番の青春映画で、後半はミステリー的な要素を含んでくる。
ほぼ折り返し地点で映画としての性質がガラリと変わるため、観ている者も一瞬違和感を感じるのだが、キャラの設定がキッチリしているためにすぐに後半部分にも入り込む事ができる。
特に、強烈に効いているのが菅田将暉の演技である。
正直、これまではあまり重要な役柄だった作品を観た事がなかったので、それほど大した役者ではないと思っていたが、この映画では主役の中島裕翔以上に圧倒的な存在感を見せている。
逆に言えば、主役と脇役の存在感を入れ変えたからこそ、この映画が成立しているとも言えるだろう。
主演の中島裕翔に、終始押し殺した演技をさせた制作陣の勝利かもしれない。

唯一の難点は、蓮吾の自殺した原因が弱すぎる事。
あまりダラダラと説明しない方がいいのかもしれないが、後半部分にもう少し蓮吾の内面の葛藤をわかりやすく描いていれば完璧だっただろう。

日本ではジャニーズ色が強すぎると正当な評価がされないケースも多いが、この作品はそういう偏見なしできちんと評価されて欲しいと思う。


9.ピンクとグレー


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by ksato1 | 2016-01-18 20:55 | 映画 | Comments(0)

スターウォーズ一気見からの考察

年末年始で日テレ系で放送された「スターウォーズ」のEP1~6を、年始から3連休に掛けて見た。
ついでにBS11で放送された映画版「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」も見てみた。
で、今回は年代を追ってEP1から見始め、2と3の間に「クローン・ウォーズ」も入れた。
その結果、いろいろと忘れていた事とか、改めて気付いた事があった。

まず一番大きな点は、ライトセーバーはフォースを持たない者でも使用できる事。
EP1~3のジェダイの異常な強さがあったり、EP7でレイがルークのライトセーバーを持って何かを感じるシーンがあったりで勘違いをしやすいが、ライトセーバーは単なる武器で、ジェダイやシスなどフォースを持つ者が使用するとその効果は計り知れないものになる、という設定のようだ。
一番ビックリしたのはEP5の冒頭、氷の惑星ホスでルークが雪原で遭難するのだが、助けに来たハン・ソロがルークのライトセーバーを起動し、自分が乗ってきた動物の腹を裂いてそこにルークを押しこんだ事だ。
その時はハン・ソロは、苦もなくライトセーバーを起動していた。

それ以外でも、EP3ではグリーバス将軍がライトセーバーの4刀流でオビ=ワンと戦っている。
グリーバス将軍はシスと思われがちだが、彼はサイボーグでジェダイキラーと呼ばれており、倒したジェダイのライトセーバーをコレクションするのが趣味だ。
オビ=ワンと戦った時も過去に倒した相手のライトセーバーを使用しているだけで、彼自身はフォースを持つわけではない。

またライトセーバーの色だが、操る者のフォースに依存してジェダイが青、緑の寒色系、シスが赤、オレンジの暖色系かと思っていたが、これも違った。
前述のグリーバス将軍は、青、緑各2本のライトセーバーを操っていた。
つまりライトセーバーの色は、ライトセーバーが出来た段階で決まっており、それを持つ者とは一切関係がないのだ。

そこから推測すると、EP7のフィンは、ジェダイではなく「タダの人」という可能性がある。
アナキンやルークはジェダイの修行をする前か、パイロットとしての非凡な能力を持っていたが、フィンはそれにあたる能力が見当たらない。
となるとEP7~9において、フィンはハン・ソロ的な役割になるのかもしれない。

また、EP2をよくよく見てみたら、アナキン・スカイウォーカーは弟とは血縁関係がまったくない義理の兄弟である事がわかった。
EP1と2の間はおよそ10年、2でアナキンは義理の父親クリーグ・ラーズと会い、同時にその息子のオーウェン・ラーズと会う。
オーウェンはどうみても20歳前後で、かつ彼女までいた。
名前も「スカイウォーカー」ではなく、二人は「ラーズ」を名乗っている(アナキンの母は死ぬまでシミ・スカイウォーカーを名乗っていた)
そさらに台詞中でも、二人は初めて会う義兄弟として挨拶している。

となると、なぜルークに「スカイウォーカー」を名乗らせたのかがさらにわからなくなってくる。
EP3のラストで、レイアはオーガナ議員にもらわれて「オーガナ」を名乗る事になる。
だがルークは、ヨーダの「親類に預けよう」の一言でタトウィーンのオーウェン・ラーズ夫妻に預けられる。
アナキンの故郷のタトウィーンで「スカイウォーカー」を名乗る人物がいたら、ダース・ベイダーが不審に思わないわけがない。
それなのになぜ、ルークに「ラーズ」ではなく「スカイウォーカー」を名乗らせたのか?

ひょっとすると、ダース・ベイダーとオビ=ワンは暗黙の了解で、そこにアナキンの息子がいる事をわかっていたのではないだろう。
ルークをダース・シディアスから護るために、ヨーダとオビ=ワンはあえてダース・ベイダーのわかりやすいところにルークを隠した。
ダース・ベイダーはシディアスの近くにいるため、何なりと理屈を付けてシディアスをタトウィーンに近づけないようにする事は容易なはずだ。
そして、いずれルークが自分とシディアスを倒す事を希望していたのではないか。

こういう妄想的な希望的観測もできるが、残念ながらEP4~6には、全体の流れの中で整合性の取れない細かい間違いも結構あった。
例えばEP4でベン(オビ=ワン)・ケノービはルークに、「オビ=ワンと言う名前はお前が生まれるかなり前に捨てた」と言っているが、ルークと一緒にタトウィーンに逃げ落ちて来た時もまだオビ=ワンを名乗っていた。
またEP6でルークがレイアに「お母さんの事覚えてる?」と聞くと「小さいころの記憶だからおぼろ気だけど」と答える。
アミダラは二人を生んだ直後に死んでいるから、これも間違いだ。
その他にもEP4で、ベンは何も感じる事もなく、R2-D2に向かって「おチビちゃん」とか言っている(原文では「shorty」か?)
翻訳ドロイドのC-3POと戦闘機に搭載される事が多いR2-D2のコンビと言うのは、通常では考えられない。
EP1~3であれだけ一緒に戦ったその珍しいコンビが目の前に現れれば、「これってまさか、あのC-3POとR2-D2じゃね?」と思うのが普通だろう。

EP4から作られたため、どうしても細かい部分で整合性が取れない部分が出てしまうのは仕方ない。
EP3と4の間も20年近く経っているのだから、登場人物の記憶が薄れていても不思議はないと言う見方もできる。
ただそれでも、ルークが「スカイウォーカー」として育てられた事は、どう考えても整合性が取れない。
しかもアナキンの生まれ故郷のタトウィーンで、である。
この辺りは、やっぱりシリーズ全体のキモとなるのではないかと言う気がする。


2.スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス(再)
3.スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃(再)
4.映画版スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ(再)
5.スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐(再)
6.スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望(再)
7.スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲(再)
8.スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還(再)


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by ksato1 | 2016-01-15 22:40 | 映画 | Comments(0)

「クリード チャンプを継ぐ男」

ロッキーのライバルであり親友、アポロ・クリードの血を引く男の物語だ。
そして新年一発目にオッサンが観るには最適な映画だった。

両親がなくロスの施設で暮らすアドニス・ジョンソンは、毎日ケンカに明け暮れる日々だった。
そこにアポロ・クリードの妻であるメアリー・アンが面会に来る。
メアリーはアドニスがアポロの子どもであることを知り、彼を引き取りに来たのだ。
アドニスが生まれる前にリング上で死んでしまったアポロは、アドニスの存在を知らない。
アドニスの母も、アドニスがアポロの子どもである事を誰にも言わなかった。

時が経ち、アドニスは優秀な成績で学校を卒業し、一流企業に就職していた。
メアリーは自分の子どもではないものの、アポロの血を引くアドニスを我が子のように大切に育てていたのだ。
元々賢かったアドニスもその期待にこたえ、母が望むようにエリートの人生を歩んでいた。
だが体の奥では、アポロの血が騒いでいた。
彼はしばしば国境を超え、メキシコの場末のリングに立って試合を重ねていたのだ。
アドニスのボクシングは自己流であったが、正式な試合でなかった事もあり連戦連勝負け知らずだった。
自信を持ったアドニスは会社を辞め、父が通ったジムの門を叩く。
しかし相手にされず、ジムのエースで世界戦を目前にしたランキング2位の選手にコテンパンにのされてしまう。
アポロをリングでなくしたメアリーもボクシングには反対、やむなくアドニスは家を出て、ロッキーを訪ねてフィラデルフィアに向かった。

ロッキーと出会ったアドニスだが、ロッキーは一度は彼のコーチを拒否する。
しかしアドニスの情熱に負け、彼のコーチを引き受けることにした。
この時二人は、アドニスがアポロの血を引く事を公にしなかった。
ロッキーは、彼の息子が「ロッキーの息子」と言うプレッシャーのために苦労をしていた事を知っていたし、何よりアドニスがアポロの名前を出さずにリングに立つ事を強く望んだからだ。

ロッキーの通ったジムでトレーニングを積むうちに、現在のジムのオーナーからマッチメイクを申し込まれる。
ジムのエースであるオーナーの息子が、ランカーに挑戦する前の調整試合の相手に選ばれたのだ。
ロッキーはオーナーの息子の実力を高く評価し、「噛ませ犬」になるから辞めておけとアドニスを止める。
しかし血気盛んなアドニスは、試合を強く望む。
ロッキーは仕方なくアドニスを別のジムに連れて行ってしごき始める。
そしてアドニスは見事ロッキーの期待にこたえて、試合でオーナーの息子をノックアウトする。
そのこと自体ニュースバリューが高いのだが、さらにアドニスがアポロの息子であることが新聞に掲載されてしまった。
ロッキーがアポロの息子をトレーニングしているというニュースは、全米だけではなく全世界を駆け巡るニュースとなった。
そしてそのニュースは、イギリスに住む世界チャンピオンのコンランの耳にも入った。

コンランはボクシングのチャンピオンにありがちな、粗暴な男であった。
銃の不法所持で7年の刑を受け、もうすぐ服役をしなければならず、その前に最後の世界戦を計画していた。
だがその最後の世界戦の記者会見中、ランキング2位の相手を殴って骨折させてしまい、最後の世界戦も流れてしまった。
もはや、ラストマッチの相手にふさわしい相手はいない。
そう思っていたところにアドニスが現れたのだ。
マネージャーを通じ、すぐにアドニスに対戦を申し込むコンラン。
アドニスはまだ正式な試合を1戦しかしていない事もあり、ロッキーは当然反対した。
父のように殺されてしまうぞ、と。
だがアドニスのアツい血は誰にも止められなかった。

とにかく、アドニスがアツくていいヤツだ。
少年時代は不遇であったために施設でも暴れていたが、メアリーに引き取られてからは愛情にこたえて優等生として育った。
性根は素直で優しい男なのだ。
だが、会った事のない父への憧れが強すぎた。
どうしても父と同じリングの上で、父同様に認められたかった、しかも父の名前を借りずに。
そのアツいアドニスに、ロッキーをはじめ誰もが最初は反対するものの、いつのまにか彼を応援し始めてしまうだ。
ちょっとアツくなりすぎて暴走したあと、ムキになって意地を張ったりせず、すぐに反省する部分も好感が持てる。
典型的なスポ根ストーリーだが、アドニスの生い立ちとキャラに一本太い筋が通っているので、観ていてどんどん彼に感情移入してしまう。
ラストはともかくストーリー展開はほぼわかりきっているのに、それでも彼を応援せずにいられない。
新年早々今年50才になる髭ヅラのオッサンは、上映中何度か涙をこぼしてしまった。

また、ロッキーの立ち位置も素晴らしい。
前作の「ロッキー・ザ・ファイナル」では、栄光を掴んだものの家族と仲間に次々先立たれ、息子にも距離を置かれてしまったロッキーは果たして幸せなのだろうか、と思わせた
そんなロッキーの元に、親友アポロの息子が現れる。
日々を過去の思い出と共に静かに暮らしていたロッキーに、再び夢を追わせる男が現れるのだ。

ロッキーのセリフも素晴らしい。
「父はリングで死んで本望だったはずだ」と言うアドニスに、「アポロは息子と会いたかったはずだ」と言って黙らせる。
そして血気盛んにアツくなるアドニスに、「リングには死ぬために上がるんじゃない、勝つためにあがるんだ」と言って冷静にさせる。
アドニスが暴走しないよう、常に急所の言葉を投げかけ続けていた。

ストーリー中、アドニスの恋人のビアンカが登場するのだが、この二人の恋愛もいかにも青春していて爽やかだ。
ビアンカの仕事と病気の設定も、今後の奥行きを感じさせる心憎さだ。

また、あえて観ている者が期待する「ロッキーのテーマ」が、作品中にほとんど使われていない。
それは、「ロッキー」の続編ではなく、「ロッキー」を継ぐシリーズであるのだと言う制作者の矜持なのだと思う。

ズバリ言って、「ロッキー」シリーズのリブートとしては十分期待できる。
ロッキーはアメリカン・ストーリーだったため、3以降は成功を収めた後もリングに立つモチベーション部分でかなり苦労していた。
だが今回のアドニスはアポロの遺産で裕福であるため、すでにリングに立つモチベーションが銭金ではなくプライドだけという設定になっている。
これはこの後シリーズ化しても、何作品でも無理せずストーリーを描けるだろう。

ネットでは、次作はドラゴの息子と戦う、なんて声もあがっているようだ。
ドラゴの息子と死闘を繰り広げた後、ロッキーとアポロのような親友になる、なんて展開になったら、オッサンはまた涙してしまうかもしれない。

いずれにしろ、一度でも「ロッキー」シリーズに心震わせた人は、まずは絶対にこの映画を観なければならない。
そうすれば、私の言いたいことがすべてわかるだろう。


1.クリード チャンプを継ぐ男


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by ksato1 | 2016-01-03 15:31 | 映画 | Comments(0)

「2015年オレ的映画総括」

年始恒例、2015年に観たの映画の総括だ。
2015年はハリウッドのアクション映画に面白い作品が多かった。

まずベスト3は以下の通り。

1.スター・ウォーズ/フォースの覚醒
2.テッド2
3.ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

1位のSWはもう、文句の付けようがないだろう。
シリーズ全体のオマージュも組込みながら、ラストへ向けての集約の期待もきちんと表現されている。
悲しきスカイウォーカー家の歴史にどう終止符が打たれるのか、ラストを観るまで死ぬことはできない。

2位の「テッド2」は賛否両論あるだろうが、サマンサと言う若い女性の新キャラを登場させたうえで、下品を貫き通している点に監督のこだわりを感じる。
中途半端に大衆受けを狙った作品にせず、これが「テッド」だ、と言う姿勢を崩していない。
作品の完成度は高いと思うし、下品な作品が嫌いな人は観なければいいだけの話だ。

3位のMIも良かった。
前々作あたりで観客動員数が落ち込み、トム・クルーズの交代説も流れたが、今作品で健在ぶりを見せた。

4位から10位は以下となる。

4.アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
5.ターミネーター:新起動/ジェニシス
6.マッドマックス 怒りのデス・ロード
7.アメリカン・スナイパー
8.チョコレートドーナツ
9.博士と彼女のセオリー
10.イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

4位と5位もハリウッドのアクション作品だ。

「アベンジャーズ」はシリーズの中でも、メンバーの入れ替えが発生するターニングポイントの作品となっている。
次作の「キャプテン・アメリカ」ではメンバー間での争いがあるらしく楽しみだ。
もうマーベルの策略にハマりっぱなしである。

「ターミネーター」はいろいろとこれまでと整合性が取れていない部分もあるが、こちらもリブート作品であり、以前の作品はあまり考えなくていいのかもしれない。
実際、整合性を深く考える暇がないほど、圧倒的なスピード感でストーリーが展開する。

6位の「マッドマックス」はオーストラリア作品であるが、これもアクション大作だ。
リブート作品で、出来としては前シリーズよりも上じゃないかと言う気がする。
片腕を亡くした主人公をはじめとした、全体の世界感が素晴らしい。

7位の「アメリカン・スナイパー」は、よくある心に傷を負った米軍兵の物語である。
だが実在した人物を題材とし、アメリカ人以外にもわかりやすく、アメリカ国内に根深く残る社会問題を鋭くえぐった作品となっている。

8位の「チョコレートドーナツ」は2015年の作品ではない。
だが、この作品にも心を揺さぶられた。
ダウン症のマルコを巡りドラァグ・クィーンのルディと検事のポールが、苦悩のうえで自分達の地位を投げ打ってまでマルコを護ろうと決意する。
ルディのピュアっぷりが素晴らしい

9位と10位は天才科学者の生涯を追った物語で、どちらも見応えがあった。

11位から20位は以下の通り。

11.ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声
12.天空の蜂
13.海街diary
14.くちびるに歌を
15.ソロモンの偽証 前篇・事件、後篇・裁判
16.ジュラシック・ワールド
17.キングスマン
18.ピクセル
19.チャッピー
20.ビリギャル 学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話

11位の「ボーイ・ソプラノ」は日本ではあまり話題にならなかったが、今年多かった音楽を題材とした映画の中では群を抜いて素晴らしかった。
訳あって歪んで育ってきた少年の成長過程と、そんな少年に大人がどう接するべきかをきちんと表現している。
2015年は邦画が今ひとつだったが、中では12位の「天空の蜂」が素晴らしかった。
原作は10年以上前に書かれているのだが、現在でもまったく陳腐な部分はない。
また、個人的には2015年に自分が観た邦画の中では、この作品で三島を演じた本木雅弘以上の演技はなかった。
だから今年の各映画賞の助演男優賞は、この作品の本木雅弘で決まりである。

「海街diary」は、是枝裕和監督らしくジワジワと心に沁みてくる作品だった。
「くちびるに歌を」と「ソロモンの偽証」は、どちらも中学生の役者の演技が見事だった。
両作品とも甲乙付け難かったが、「ソロモンの偽証」は前篇、後篇と別れていた分、評価をやや下げた。

「ジュラシック・ワールド」は、それほど期待しないで観に行ったが想像以上のいい出来であった。

「キングスマン」も期待していなかったがいい出来であった。
後からわかったのだが、この作品は「キック・アス」と同じ監督だった。
おそらくシリーズ化されると思うので、次作以降も期待したい。

「ピクセル」は愛すべきおバカB級作品だ。
日本語吹き替え版を観に行ったのだが、「テッド」同様日本語の翻訳の巧さも功を奏したと思われる。

「チャッピー」もハリウッド作品。
監督は「第9地区」のニール・ブロムカンプで、センスを感じた作品だ。

ラストは「ビリギャル」。
単純明快、日本人なら誰が観ても共感できる作品だった。
主演の有村架純の、演技力の幅を感じる作品だった。

2015年観た映画は、途中カウントミスもあったが合計で136本。
内訳はロードショウが84本、ギンレイが20本、TV放送などが31本。
今年はもう少しロードショウを増やして、100本の大台に乗せたいと思う。


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by ksato1 | 2016-01-02 16:08 | 映画 | Comments(0)