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「ガタカ」

恵比寿ガーデンシネマ特別上映で観に行った。
つい最近「NASAが選ぶ現実的なSF映画」で見事1位に輝いた作品である。
しかし私自身は、こんなに面白い映画が存在している事をまったく知らなかった。

舞台は近未来。
そこでは人間は生まれた瞬間に、将来罹る恐れがある病気と予測寿命を遺伝子レベルで判断される。
そして逆に、それらのリスクのある遺伝子を排除した受精卵を作る事も可能になっている。
病気だけではなく、近視などのリスクもない健康で優秀な人間を「適正者」とし、それ以外の通常の出産で生まれた人間は「不適正者」とされる。
人間の優劣を能力ではなく、ましてや宗教や肌、瞳、髪の色などでもなく、遺伝子レベルで判断しているのだ。

主人公のヴィンセントは両親の希望で、通常の出産で誕生した。
しかし生まれた直後に精神疾患になる可能性がある事、そして心臓病で死ぬ可能性が99%である事を指摘され、推定寿命は30歳と判断されてしまった。
その結果に驚いた両親は、弟は「適正者」とする事を選択する。

ここまで書くと、SF映画のように思える。
なにしろ「NASAが選ぶ現実的なSF映画」の1位である。
しかし実態は、サスペンス&ヒューマンドラマである。

子どもの頃から弟と体力の違いを見せ付けられたヴィンセントは、「不適正者」という理由で宇宙飛行士の夢も絶たれてしまう。
努力を積み重ねて勉強し、体を鍛え、やがて「適正者」である弟の体力をも超えるのだが、それでも遺伝子レベルで「不合格」の烙印を押されてしまう。
そこで彼は車椅子生活をしている「適正者」ジュロームと入れ替わり、宇宙局「ガタカ」に宇宙飛行士候補生として潜りこむ。
だが計画がすべてうまく進んで、あと一週間で宇宙に飛び立てるという時に、局内で殺人事件が発生した。
ヴィンセントは犯人ではないが、現場検証でまつ毛を収集されてしまい、局内に「不適正者」が紛れ込んでいる事が発覚してしまう。
そして当然、「不適正者」として容疑者の第一候補となるヴィンセント。
替え玉である事はバレていないものの、ヴィンセント捜しが進むにつれ、いつ正体がバレてもおかしくない状況に追い込まれる。

計画が途中で狂ってしまい、主人公が窮地に立たされるという話はよくある。
だが、登場人物の生い立ち、性格、そして物語内の社会状況などが非常に巧く設定されているため、ドキドキハラハラでストーリーは進んでいく。
特に、ヴィンセントの弟に対するコンプレックスと、宇宙へのとても強い憧れがよく表現されている。
すでに毎日1ダースのロケットが宇宙に飛び立って行く。
しかしそれでもそのロケットに搭乗できるのは、ほんの一握りのエリートだけだ。
ヴィンセントは能力で言えば、知力も体力も申し分がない。
だが彼自身にはどうしようもない「遺伝子」が、彼の希望とこれまでの努力を打ち砕こうとしている。
局内では、時折遠くに打ち上げられるロケットが見える。
局内の人間にとっては当たり前の光景で誰もそんな事には気を留めないが、ヴィンセントだけはいつも飛び立つロケットを無言で見つめてしまう。

観ているうちに、なんとかヴィンセントを宇宙に飛び立たせたいと、思いっきり感情移入してしまう。
最後は文字通り、手に汗握った。
そしてラストシーン。
ヴィンセントの最後の言葉が、強く心を打った。

SFがテーマで実はヒューマンドラマという点では、「月に囚われた男」に近いかな。
近未来が舞台であるものの、登場人物の服装や髪型、調度品や最先端技術の器具・道具などが、どこかレトロな感じがする。
何か、1960~70年代に作られた近未来SF作品と言った感じだ。
しかしそのバランスが巧妙なので違和感を感じるどころか、自分が子どもの頃に見たアニメやマンガを思い出して少しワクワクしてしまう。
さらに現実の生々しさが打ち消されているので、人間を差別するというテーマを含んでいても、観ている物へあまり嫌悪感を与えない。

ストーリーの展開は、「マッチポイント」あるいは「太陽がいっぱい」を思い起こさせる部分もある。
いずれにしろ、個人的にはかなり好きな作品だ。
最後まで観たら「あ、この作品結構好きかも」って人は、とても多いと思うんだけどな。
機会があったらぜひ観てもらいたい1本である。


16.ガタカ
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by ksato1 | 2011-01-31 22:26 | 映画 | Comments(0)

勝利の価値は


アジア杯、日本が延長制す 李の決勝点で豪州破る
http://www.excite.co.jp/News/soccer/20110130/Kyodo_SP_MN2011012901000355.html


いい試合だった。
お互い自チームの持ち味で勝負しており、かなり見応えがあった。

人によっては単調な試合と評する人もいるだろう。
実際オーストラリアは延長に入ると、キューエルに合わせるだけと単調になっていた。
ただすでに双方とも6試合目、オーストラリアは準決勝は比較的楽だったとは言えその前の準々決勝はやはり延長120分間を闘っている。
それを考えると最後はもう気力だけで、とにかく得点を目指して前へ、と言う意識だったのだろう。

昨日の日本の勝利は、平均年齢の差じゃないかとも思う。
後半キューエルに2度突破されたが、川島の好セーブもあり凌いだ。
しかし5年前、ドイツW杯時のキューエルだったら、あの2本とも決めていたような気がする。
ただ日本も、前半開始早々の本田が倒されたのと、岡崎が競った時のハンドで2本PKもらっててもよかったんだけどね。
なので、2-0で勝っていたところを後半に追いつかれて延長突入、だったかもしれない。
ただその形で延長に入っていたら、勝てていたかどうか。

オーストラリアはケイヒルも明らかに以前の切れ味がなかったように思う。
これもすでに6戦目という事もあるかもしれないが、やはりキューエルと共に30歳を超えていると言う部分もあるだろう。
これ以降は上がり目はないので、オーストラリアは今後若手との切り替えがポイントだ。
しかしキューエルに変わって出てきた若いクルーズが、ゴール前でボールキープできそうだったのにそのままゴールラインから出してコーナーを選んだ。
あそこは二人に着かれていたが、後ろからフォローが来ていたのでいったん戻し、勝負に出るべきだったのではないか。
それができなかったのは経験の浅さで、そこから考えるとオーストラリアはしばらく世代交代に苦しみそうな気もする。

それに引き換え韓国の世代交代は見事だ。
3位だったけど、若き具が得点王に輝いた。
その他にも20歳前後の選手がバリバリ活躍していた。
ブラジルW杯のアジア最終予選では、できれば韓国と同リーグにはなりたくない。

さて優勝した日本。
試合後の長谷部のインタビューでは、やはり岩政の交代時には選手とベンチで行き違いがあったようだ。
ハーフタイム直後だったのに、あまりきちんと意思の共有ができてなかったのかもしれない。
しかしそれでも岩政が入った事により両サイドの上がりが増え、決勝点につながった。
韓国戦の時の香川→細貝の交代もそうだったが、守備をしっかりすればMFの負担が減って自由に動ける、という思想が選手に根付いているのだろう。
それが瞬時に具現化できるのは素晴らしい。
ザックジャパン、かなり期待できそうだ。

そして李忠成だ。
BSのアナウンサーは「本人も日本国籍を選んで良かったと思っているでしょう」と言っていた。

在日ではあるが、実は最初は本人と父親は韓国代表を目指していた。
父親が当時韓国代表のアシスタントコーチをしていた洪明甫に、李の活躍したVTRを送ってアピールしたそうだ。
洪明甫と言えば、柏レイソルで活躍した闘将だ。
日本のサッカーにもかなり詳しい。
李の父親からしてみれば、洪明甫なら李の実力を認めてくれると思ったのだろう。
しかし洪明甫から連絡はなかった。
李は日本国籍を取得して、日本代表を目指す事にした。
オリンピック代表などでもこれまではなかなか活躍できなかったが、李の不屈の闘志は今後必ず日本代表にいい影響を及ぼすだろう。

FWは今回招集されなかったけど、森本、平山、興梠、大迫あたりも有望だ。
中盤は元々タレントが豊富なので心配はないだろう。
CBも今回負傷者が相次いだが、吉田の台頭と岩政の活躍で目途はたった感じだ。
問題はSB。
もし長友と内田がいなかったらと考えると、背筋が凍りそうだ。
駒野、中田浩二、徳永あたりもまだまだ行けそうだと思うが、今回も伊野波が入ったりしてやはりSBちょっと人材不足な感は否めない。

たぶん、本田や香川も中田ヒデや俊輔の活躍胸を熱くしたんじゃないかと思う。
だから今回の長友、内田に憧れてSBを目指す中高生が、もっともっと増えてくれないかとも思う。
そんでそこからいきなり10代で代表に入っちゃうような選手が出てこないものか。
まあさすがにそれは無理だね。

いずれにしろ、怪我で主力がまったく揃わない、って事にでもならない限り、ザックジャパンはかなり期待できそうだ。
コパアメリカは中継あるのかな。
スカパーかWOWOWの独占中継とかは勘弁してほしいな。
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by ksato1 | 2011-01-30 14:18 | 日記 | Comments(0)

「ウォレスとグルミット」

冬休みにBSで放送された「ウォレスとグルミット」2本を娘と観る。
観てわかったんだけど、「ウォレスとグルミット」って結構面白いんだねぇ。
子ども向けかと思ってバカにしてたけど、そんなに悪くない。
何が面白いのかと言うと、思慮深いグルミットの表情と動きだ。
もともとの笑いのセンスも悪くないんだけど、グルミットというキャラクターがさらにそれを引き締めている。
たぶん、突っ込み役なのに決して怒らないところもいいんじゃないかな。

まず観たのが「野菜畑で大ピンチ!」
これはアメリカでも普通に映画館で公開され、日本でも劇場で公開されていた。
1時間半の作品だが、起承転結もきちんとしていて子ども向けの作品としてはかなり良質だろう。
「アンチ・ペスト」内のいろいろなギミックも、サンダーバード的で面白いしね。
娘は「カッコイイ~!」って感動してたよ。

続いて「ベーカリー街の悪夢」
こちらはイギリスのTV番組として制作されたものを、日本ではそれ以外の作品と一緒に併映で劇場公開されたらしい。
単体としては30分の作品だが、時間が短い事もあって、ちょっとイマイチだったかな。
「野菜畑で大ピンチ!」が終始コミカルに笑わせてくれたのに対して、こちらは殺人事件と言うテーマでミステリー仕立てだったしね。

どちらかと言われれば、もちろん「野菜畑で大ピンチ!」の方がおススメだね。


14.ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!<日本語吹替版>
15.ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢<日本語吹替版>
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by ksato1 | 2011-01-29 13:18 | 映画 | Comments(0)

恵比寿ガーデンシネマ

今日で恵比寿ガーデンシネマが休館した。

角川系の映画館で、系列としては角川シネマ新宿、梅田ガーデンシネマなどがある。
角川シネマ新宿は新宿三丁目の駅近くで便利な事もありよく利用しているが、恵比寿ガーデンシネマは3年前位に一度利用したきりだ。
そもそも恵比寿ガーデンプレイスが駅からちょっと遠く、ガーデンシネマはさらにガーデンプレイスの一番奥になるので、便もあまりよくなかった。
そういう面もあり運営も難しかったのかな。

ここ数年ガーデンプレイスは、夏に名画を無料で野外上映していたが、これもガーデンシネマが絡んでいたんだと思う。
週末限定なのでなかなか時間が合わず行った事がなかったのだが、一度観に行きたいと思っていた。
おそらくそれも今年からなくなってしまうのだろう・・・。

ミニシアターの休館、閉館と言えば、テアトルグループ系の渋谷シネセゾンも2月で閉館だ。
こちらは場所も良かったんだけど、シネカノンの事実上の倒産後、テアトルがヒューマントラスト渋谷(と有楽町)を傘下に収めたため、統合の意味合いでシネセゾンを閉館するようだ。
ヒューマントラスト渋谷のビルよりも渋谷プライムの方が便利なんだけど、プライムのテナント料はかなり高そうだから、まあ仕方ないのかな・・・。
プライムは昔あったラーメン道場も、今は影も形もなし、パチンコ屋になっちゃってるしね。
ちなみにテアトル系の映画館は、それ以前にヒューマントラストシネマ文化村通りも閉館している。

他にも、行った事はなかったけどタカシマヤタイムズスクエアにもテアトル系の映画館があったんだけど、そこもちょっと前になくなってしまった。

ガーデンプレイス、シネセゾンとも、ラストは特別上映が行われた。
ガーデンプレイスはいくつか観たので、おいおいその感想もアップする予定。
シネセゾンの方も何本か観たいなと思わせる作品があるけど、行くかどうかはちょっと微妙かな。
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by ksato1 | 2011-01-28 23:34 | 映画 | Comments(0)

「ハイブリッド刑事(デカ)」

「鷹の爪団」シリーズのスピンアウト作品とでも言ったらいいのだろうか。
なんとトヨタ店の全面スポンサードにより、1週間限定だが無料で公開されている。
東京はTOHOシネマズ日劇だ。
早速観に行った。

月曜日で雨が降っていたせいか、人はあまり入ってなかった。
入り口でステッカーをもらったが、水曜日くらいにはもうこのステッカーも品切れで配布が終わっていたようだ。
早めに行って良かった。

上映時間は40分と短いものの、蛙男商会の面白さが凝縮されている。
と言うか「鷹の爪団」も、これくらいの長さがちょうどいいのかもね。
個人的にはトヨタがスポンサーなのだから、もっともっと「トヨタ、トヨタ」って大騒ぎしてもよかったようにも思う。
でもそれはトヨタが逆に嫌ったのかな、あんまり下品にしないようにって。

そう言えば「鷹の爪団3」の劇場挨拶のときにFROGMANが「『4』は作りません、でも『5』は作ります」と言っていたが、彼的にはこの作品が「4」なのかもしれないね。
実際、すでに「5」の制作に着手しているようだし。

「5」もどこかがスポンサーになって、入場料金安くならないかな。
時間も短くても全然いいしね。


13.ハイブリッド刑事(デカ)
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by ksato1 | 2011-01-27 21:35 | 映画 | Comments(0)

昨日の韓国戦に思う

もう24時間近く経つけど、とにかく勝ってよかった。
正確には記録は引き分けなんで、「勝利」ではないんだけどね。

前半の早い時間は、やはり22番車ドゥリの突破をかなり許してしまっていた。
そちらに気を使っていると、今度は左サイドの12番から前線の10番と朴智星にいいボールを何本も通されてしまった。
とは言え、全体的には日本もいい攻撃だったと思う。
車ドゥリと12番の裏を取ってサイド攻撃ができたし、長友が抜け出して車ドゥリを振り切ったあの同点弾は、韓国を精神的にもへし折ったと思う。
実際、しばらく車ドゥリはあまり上がってこなかったしね。

前半終了間際では、韓国の脚が止まっていたので、これは後半かき回してかなり点が入るんじゃないかと思った。
しかしやっぱり韓国は凄いよ。
後半スタートと同時に巻き直し、気力でボールを追っていた。
逆に後半の終了から延長戦にかけては、日本の方がスタミナが切れていたよ。
誰が見ても、フィジカルでは韓国の方が上だよね。

よく、韓国は徴兵制があるから気合が違う、と言われる。
実際そういう部分もあるかと思う。
しかし、昨日の試合を見ていて、違うところに原因があるんじゃないかという気がしてきた。

たしか長谷部が(香川かもしれない)、「ブンデスリーガはシーズン中、ほとんどグラウンドがぬかるんだ状態でプレイする。だから足腰が強くなるし、きちんとボールキープしないとすぐに取られてしまうので、ドリブルも強くなる」と言っていた。
朴智星のとてつもないドリブルのキープ力と、そう簡単に倒れない強靭な足腰を考えると、プレミアリーグにも同じ事が言えるのかもしれない。
そしてそもそも韓国は、子どもの頃からやはりそんなに整備されていないボコボコのグラウンドでサッカーをしてるんじゃないかと言う気もしてきた。

韓国は日本よりも緯度が高いので、平均気温は低い。
冬場は毎日霜柱がたって、練習する放課後にはグラウンドはグチャグチャになっているんじゃないだろうか。
対して日本は、グランドが整備不良だと怪我をしやすいので、かなり整った環境である場合が多い。
私立高校だったら、下手すりゃ土じゃなくて芝のグラウンドで練習している事もあるだろう。
それが過保護なのか、あるいはやっぱり怪我がしにくい方がベストなのか、よくわからない。
でも、そのあたりが日本と韓国のフィジカルの差になっているような気がしてならない(って事は、過保護って事なんだろうけど)。

昨日PK戦で日本が勝てたのは、さすがに韓国のスタミナが切れて、集中力が持たなかった事が一番の理由だろう。
じゃなきゃあんなにポコポコPK外すなんて考えられない。
でも、無理もない、韓国は決勝トーナメント1回戦でイランと120分の死闘を繰り広げ、さらに日本と比べて試合の間隔が1日少なかったからね。
逆に日本と韓国の日程が入れ替わっていたらと考えると、背筋が寒くなる。

しかもこの後、昨日の若い韓国チームと何度も闘わなければならないのだ。
経験積んだら、間違いなく昨日以上に強くなるからね。
朴智星もそういうコメント出してるし。

日本はBK陣の駒がギリギリだったとは言え、割合ベストメンバーに近い。
攻撃はいいし、1点目もPKとは思えなかったからいいとして、やはり延長で守りきれなかった点は不安が残る。
昨日は長谷部の脚がつったため急遽本田拓也が出場したが、このあと似たような状況が何度も起こる可能性は十分考えられる。
もちろん選手もスタッフもわかっていると思うが、もう少し戦術上の確認が必要だろう。

決勝のオーストラリア戦も簡単には行かないだろうけど、ここはキッチリと勝利して、コンフェデレーションカップの出場権を取ってもらいたいものだ。
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by ksato1 | 2011-01-26 21:38 | 日記 | Comments(0)

「冷たい熱帯魚」

試写会で鑑賞。
とにかくカゲキな映画だ。
この映画と比べると、「十三人の刺客」でさえマイルドに思えてしまう。
試写会で観た映画にこういう言い方は問題大アリなのだが、正直誰にもすすめる事ができない。

監督は「愛のむきだし」の園子温。
「愛のむきだし」は観てないが、出演していた満島ひかりが脚光を浴びた事でも有名。
それ以上に内容も評価が高かった。

「冷たい熱帯魚」は監督自身が最高傑作と言っているらしい。
評価は賛否分かれると思うが、圧倒的なパワーは誰もが認めざるを得ないだろう。

ストーリーは、埼玉愛犬家連続殺人事件が下敷きになっている。
社本は小さな熱帯魚店を営むおとなしい男だ。
一人娘は若い後妻に馴染まずにグレてしまい、後妻は想像とは違った新婚生活にうんざりしている。
ある日娘が万引きで捕まり、そこから大きな熱帯魚店を経営する村田と知り合う事になる。

村田は個人経営主によくいそうなタイプだ。
大声で調子のいい事ばかり言って人を巻き込み、強引に自分の思い通りに事を進めようとする。
それに異を唱える者がいれば激怒し、大声で恫喝したりもする。
大言壮語で虚勢を張る見栄っ張り、自分の過去をなんでも自慢気に話すのが大好きだ。

この村田を演じているのがでんでんである。
ズバリ言ってこの映画は、でんでんが村田を演じた時点で8割方成功したと言っていいだろう。
とにかく素晴らしい演技だった。
実際に殺人事件の主犯格は、ややヤクザがかった人物だったらしい。
たしかに村田っていう人は実在するんだろうなと思うほど、でんでんが迫力の演技を繰り広げている。
吹越満の社本も静と動をうまく使い分けた巧い演技ではあったが、想定内とも言える。
しかし、このでんでんの村田には圧倒された。

その他のキャスティングも素晴らしい。
監督自身が最高傑作と言うのもうなづける。

ただし内容は連続殺人事件だ。
バラバラ殺人をそのまま実写化したと言っていいだろう。
そこまで見せる必要あるの?という声があがってもおかしくない。

私個人の意見で言えば、おそらく監督が撮りたいと思ったものがすべて映像化されているので、こういう映画があってもいいし、評価されてもいいと思う。
でも繰り返しになるが、他の誰かにすすめようとは思わない。
評価する人としない人の割合で言えば、よくて3:7、おそらく2:8くらいじゃないかと思う。
特に女性は見ない方がいい。

登場する女性の立ち位置と選択肢は「えっ?」という部分もあるのだが、それ以外は「人間って結局金と性欲だよね」が行動の原点になっている。
なので、行動そのものは異常であるが、ストーリーの展開という観点ではあまり無理がない。
昨日までごくごく平凡な日常を送っていた凡人が、いきなり犯罪、しかも凶悪犯罪に巻き込まれてしまう可能性だってあるのだ(実際に起こった事件がモチーフになっているし)。
特に、オリジナルで考えられたと思われる、村田の生い立ちの設定が効いている。
そういう風に育ったのなら、狂気の人間になってもしかたないか、とも思った。

150分近い作品であるが、これでもかとばかりに容赦なく人間の醜さ残酷さを突きつけられるので、まったくダレる事はなかった。
でんでんの演技だけでも万人に評価してもらいたいけど、日の目を見る事はたぶんないんだろうな。
それだけはとにかく残念だ。


12.冷たい熱帯魚
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by ksato1 | 2011-01-25 01:04 | 映画 | Comments(0)

正月番組で知った「へぇ~」な話

土曜日は朝4時起きで長男グループを次世代WHFに送っていく。
もう中学生だし眠いし寒いしで、夜も明けてないのに申し訳ないが、子どもたちを置き去りにして自分は帰宅して二度寝した。

そしておよそ二日間、近所に買い物に出た以外は寒いので完全な引きこもり。
年末年始に撮り溜めた番組を次から次へと見まくった。
それでもまだ半分くらいしか見てないけど。

そこで一番興味深かったのは、「ビートたけしの教科書に載らない日本人の謎」だ。
毎年正月に放送されていて今年で3回目。
日本人の、特に年末年始に絡んだ慣習をわかりやすく解説してくれる番組である。

昨年は日本最大の怨霊、崇徳天皇についても取り上げていた。
東日本で怨霊と言えば平将門公なので、当然日本最大の怨霊も将門公かと思っていた。
実際、大手町の首塚に行くと、大手町のど真ん中なのにそこだけ雰囲気が異なる。
この周辺には戦前からオフィスビルが林立しているが、周辺のビルはどのビルも、この首塚に背を向けないようにオフィス内のレイアウトを組んでいると言われている。
話を戻すと番組の方は、崇徳天皇に関連して天皇家の行事なども紹介しており、昨年もかなり興味深い内容だった。

そして今年は最澄と空海にスポットを当てた。

最澄は天台宗、空海は真言宗の開祖である。
二人は遣唐使として中国に渡り、ありがたい教えを日本に持ち帰る。
まあこれは教科書レベルの話。
ではなぜ、最澄は遣唐使として中国に派遣されたか?

最澄は桓武天皇から厚い信頼を受けていた。
桓武天皇と言えば、平安京を開いた天皇だ。
教科書によれば、寺の僧侶の力を弱めるために、長岡京から平安京に遷都したと書かれている。
しかしそれ以外にも、遷都の理由の俗説があるそうだ。
当時の天皇家では謀略による暗殺が相次ぎ、藤原四兄弟が急逝した事も長屋王の怨霊によるものだという噂があった。
桓武天皇は長岡京はもはや怨霊が跋扈する都になったため、それを一掃する意味も込めて、平安京に遷都したそうである。
特に資料による裏付けはないが、これってかなりインパクトのある話だ。
あくまで「俗説で」という前置きを付けて授業で話をすれば、絶対学生も「へぇ~!」って覚えてくれると思うんだよね。
まあ教科書に載せなくてもいいけどさ。

また、番組では毎年ビートたけしがいろいろな地を訪れるのだが、今年は高野山を訪れた。
その中で壇上伽藍が紹介されていたが、中は立体的に曼荼羅を表現する様式美の作りがなされていた。
ビートたけしがそれを観て、「テレビも映画もない昔の人が見たら本当に感動して信心を深めたでしょうね」と言っていた。
たしかにその通りだ。
おそらくは、現代人がディズニーランドに行って感動した時の比ではないだろう。

修学旅行で奈良の大仏を見たときに「聞いていた通りデッカイなー」と思ったが、よくよく考えてみれば、基本的に建物は平屋、お寺以外に高層建築物のなかった時代に建てられたものだ。
その時の人が見たら、やはりすごく感動したに違いない。
子供がそれを想像して実感できるかどうかわからないが、修学旅行もそういう事を考えさせながら回らなきゃダメだよね。

最後にもう一つビックリしたのがピラミッドの特番。
こちらも数年続いているらしいが、今年初めて見た。

何がビックリしたかと言うと、ピラミッドは平地の上に巨石を積み上げて作ったものではないらしい。
元々石灰岩の低い山があって、それを階段状に切り崩したものを土台とし、その上に石を積み上げてできているのだ。
ギザのクフ王のピラミッドも、少なくとも3mは土台があった事がすでに証明されているとの事。
全体の約140mのうち3mだとほんの少しのように思えるが、それでも20年と言われる工期のうち2年を短縮できると言う。
さらに調査が進めば、これが5mとか10mになるかもしれない、との事だ。

なんか、自分が教科書で覚えたころと、随分と歴史が変わってきているね。
気を付けないと、子どもから「お父さん、何言ってるの?」なんてバカにされることになるかもしれない。
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by ksato1 | 2011-01-24 00:25 | 日記 | Comments(0)

既成概念

「告白」がアカデミー賞の外国語映画賞部門にノミネートされた一方、「映画芸術」のワースト1位になったそうだ。


【松たか子「告白」“最悪”のワケ 米アカデミー・リーチ前なのに…】
http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20110122/Fuji_EN_zak20110122009.html



ワーストに選んだ人の理由が、「“ストーリーに奉仕するせりふ”は映画的ではない、と言われてきた」である。

まあ、これはこれで正論ではあるだろう。
ただ、大きな疑問も残る。
これを理由にした荒井晴彦という人は、原作を読んでいるのだろうか?

「映画」はよく「総合芸術」などと言われる。
音楽、映像、ストーリー、演出、すべての組み合わせで多様な表現ができるからだ。
だからセリフを前面に押し出した作品を映画として評価しない、という考え方もあるだろう。

しかしこの作品は、そもそも原作からして今までの「小説」という概念をブチ破った作品である。
そしてその原作のテイストを、非常に巧く映像化した中島監督の手腕は素晴らしい。
私はこの監督びいきではあるが、それを差し引いたとしても、原作→映画化の手腕は評価されてしかるべきである。

映画はもちろんそれ単体として評価されるべき、という考え方もあるだろう。
しかし逆に、「映画は絶対に映画単体で評価しなければならない」と言う理由が存在するのだろうか?

どんなカテゴリーの芸術でも、これまでの既成概念を変える作品と言うのはどこかのタイミングで登場する。
アメリカのアカデミー賞委員会が、そこまで考えているかどうかはわからないし、どうでもいい話だ。
少なくとも原作が読める日本人だったら、そこまで考慮して作品を評価すべきではないか?
例えば、「スターウォーズ」のエピソードIIIだけ観て、「『スターウォーズ』ってたいして面白くないじゃん」という人がいたら、おそらくほとんどの人が「お前『スターウォーズ』全部観たの?」と聞き返すだろう。
ましてや「告白」に関しては、映画単体として観ても「“ストーリーに奉仕するせりふ”」という以外の部分で、マイナス評価する要素は見当たらない。

映画を観た人の中には、原作も読んでみたいと思う人も少なくないだろう。
そして原作を読んだら誰もが、「なるほど、そういう事だったのか」と思うはずだ。
そこからどのように判断するかは、個人の考えた方の違い。
それでもなお、「“ストーリーに奉仕するせりふ”は映画的ではない」という理由にこだわって、ワーストに選ぶ人がいてもそれはそれでいいだろう。
しかし私個人としては、芸術とはどんなカテゴリーであっても「何をしてはいけない」という制約があってはならないものだと思う。
そんなくだらない既成概念にとらわれる人には、芸術を語って欲しくはない。
それまで誰も試さなかった手法を取り入れるのは自由であり、その評価は後から観た人によってなされるものである。

それ以前に映画が芸術であるかどうか、と言う議論もあるかもしれない。
そういう部分も含めて多くの人から支持される作品が、やはりいい作品と言えるのだと思う。
それとは別の話で、誰にも支持されなくてもいい作品と言うのも、星の数ほどあるけれど。

この荒井某と言う人が原作を読んだ上でこの評価をしたかどうかは定かではないが、もし原作を読まずにこの評価をしたのであれば、少々残念に思う。
「既成概念=ステレオタイプ」とは、本当につまらない言葉である。
この場合の「既成概念」は「prejudice」の方が近いかもね。
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by ksato1 | 2011-01-23 00:35 | 映画 | Comments(0)

「トロン:レガシー 3D」

「トロン」である。
高校生の頃、「ぴあ」が隔週刊で、センターページににぴあMAPが閉じこまれていた頃、前作の「トロン」が都内の名画座でよく公開されていた。
東大で開発された世界初のコンピュータOSの名前が「TRON」で、たぶんそれが元になった作品だろと思ったが観た事はなかった。

で、「トロン:レガシー」である。

ハッキリ言って、ストーリーはありきたりだ。
世界観は「マトリックス」にかなり近いかな。
仮想空間「グリッド」に迷い込んだサムは訳のわからないままいきなり敵と戦う事になり、危ういところを味方に助けられ、状況を打開しようとすると裏切りにあってまたピンチに陥る、最後は努力、友情、勝利、ってな具合である。

まあ、それほどストーリーを追う性質の映画じゃないから、それはそれでいいんだと思う。
でも、肝心の3Dもイマイチ。

仮想空間に入る前は全然3Dじゃないし、仮想空間でもバトルシーン以外の3Dもかなりショボい。
もうちょっとグリグリと3Dで迫ってくるのかと思っていたので、かなり拍子抜けだった。
ゲームセンターに入ったときにジュークボックスから流れてきたのが、JourneyのSeparate Waysだったのは良かったけどね。

どちらかと言うと、子ども向けの作品だったのかな。
でも宣伝がそれっぽくなかったので、そう思わなかったんだよね。
長男がかなり観たがっていたので、一緒に行けばよかったかなとも思った。


11.トロン:レガシー 3D
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by ksato1 | 2011-01-22 23:48 | 映画 | Comments(2)