2017年 07月 15日 ( 1 )

米林宏昌監督のスタジオポノックでの初長編作品だ。
絵柄や米林監督の経歴から、ついつい宮崎駿的な作品を期待してしまうが、あくまでもスタジオポノックの米林作品であった。

赤毛で癖っ毛のメアリは、大叔母の住む田舎に引っ越してきた。
父母は仕事のため遅れてくるのだが、メアリは夏休み明けの新学期に間に合うように先に越してきていた。
新生活を始めた村は小さな村で人口も少ない。
まだ友達と言える人もおらず、メアリは退屈をしていた。

ある日メアリは裏山でお弁当を食べていたのだが、そこに黒猫が現れる。
猫の導くままに森に入っていくと、黒猫の恋人の灰色猫が現れ、さらに森の奥で美しい花が咲いているのを見つけた。
その花を持ち帰えると、夜中に黒猫が部屋に現れる。
黒猫は何やら様子がおかしかった。
翌朝黒猫を探すが、姿が見えない。
その後メアリは、大叔母の使いで同世代の少年ピーターの家に届け物に行く。
黒猫と灰色猫はピーターの家猫で、ピーターも2匹を探していた。

メアリはピーターが止めるのを振り切り、森の奥に猫を探しに行く。
そこで黒猫を見つけ、再び黒猫の導くまま森の奥に行くと、古い箒を見つけた。
メアリが箒を手にしたとき、美しい花が潰れる。
すると箒が反応し、メアリと黒猫を乗せて空を飛び始めた。

メアリたちがたどり着いたのは、魔法世界の最高学府エンドアだった。
そこで出会った科学者ドクター・デイと校長マダム・マンブルチュークは、メアリが史上最高の魔女だと思い込む。
メアリは花の力で強力な魔力を持つことができたのだが、自分ではそれに気づかずその場をやり過ごしてエンドアを後にする。
しかしマンブルチュークは、メアリが花を持っていることに気づいてしまう。

花はかつて、赤毛の魔女の学生がエンドアから種を持ち出した「夜間飛行」という名の花であった。
赤毛の魔女は大学からの追っ手を振り切り、夜間飛行をマンブルチュークから隠してしまう。
夜間飛行を取り戻そうとしたマンブルチュークはピーターをさらい、メアリに夜間飛行を持ってくるように告げた。

冒頭にも書いたが、良くも悪くも米林作品である。
全体的にはっきりした色使いの絵柄で、宮崎作品よりもファンタジー色を強く感じる。
セリフもメアリに状況を語らせるなど直線的で、子供にもわかりやすい構成になっている。

初期のころの宮崎作品は、アニメなのに圧倒的な現実感があった。
「未来少年コナン」「カリオストロの城」「ナウシカ」「ラピュタ」など、現実にはあり得ない機械なのに、あたかも本当に存在しそうな動き、重量感を見せていた。
それゆえ、主人公たちが危機に陥った時の緊迫感がハンパなかったのである。

ところがこの「メアリと魔女の花」では、そのあたりの現実感が皆無だ。
エンドアの中で働く謎のロボットも、くねくねして現実感がまるでない。
魔法大学のロボットなのでこれでいいのかもしれないが、クライマックスの爆発シーンもあまり緊迫感が伝わってこなかった。
あくまでも子供向けのファンタジーという事であれば、それはそれで正解である。
あまりにも生々しい演出は、子供を怯えさせてしまう可能性もある。
宮崎作品と同じ物を求める方が、そもそも間違っているのだ。

これまでの「借りぐらしのアリエッティ」と「思い出のマーニー」は、そのあたりがやや曖昧であった。
どちらも淡々としたファンタジーで好きな作品ではあるが、米林作品が目指す方向が今一つわからなかった。
だがこの作品で方向性がわかったのでスッキリした。
ファンタジーとして考えた場合、この作品はきちんとまとまっており、完成度は高い。

一つだけ難癖を付けるとすれば、過去の宮崎作品をやや引きずり過ぎだ。
実験場に向かうメアリを乗せたシカは「もののけ姫」のヤックルだし、たどり着いた巨木の根元は「ラピュタ」である。
さらに、原作版だけで映画版の「ナウシカ」には出ていないが、エンドアのロボットはヒドラを連想させる動きであった。
あるいはオマージュと言う事でそれらを登場させたのかもしれないが、ちょっと今回は盛り過ぎだ。
米林監督ならこの後何本も映画を製作すると思われるので、その時に少しずつオマージュを盛り込むべきだったと思う。


79.メアリと魔女の花


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