2017年 06月 03日 ( 1 )

今年の米アカデミー賞で、主演男優賞と脚本賞を受賞している。
個人的には主人公が年代的に自分と近いためか、かなり感情移入した。
「ラ・ラ・ランド」には及ばないものの、「ムーンライト」よりは断然面白い作品であった。

ボストンで便利屋をしていたリー・チャンドラーは、ある日兄が死んだという知らせを受け、急いで故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに向かう。
リーが病院に到着した時には兄のジョーはすでに他界していた。
そしてリーは、兄が自分を甥の後見人に指定していたことを知る。

甥のパトリックはまだ高校生である。
この年頃特有の根拠のない自信過剰な状態という事もあり、父の死を現実として受け入れられていないようだった。
自分の欲望を優先し、非現実的な事ばかり言うパトリック。
彼の面倒を見るためには、パトリックがボストンに来るか、リーがマンチェスターに引っ越さなければならない。
パトリックの母は、兄と甥を捨てて他の男の元にいたのだ。
しかしリーにとって、マンチェスターに戻ることは耐え難いことだった。

かつてリーは、マンチェスターで家族とともに暮らしていた。
しかしリーが夜中に暖炉に薪をくべて酒を買いに外出した時、家は火事となり3人の子供たちを焼死させてしまった。
1Fで寝ていた妻は助かったものの、これが原因でリーは精神的におかしくなり妻とも離婚する。
傷心のリーは故郷を離れ、ボストンで自暴自棄の生活を送っていた。

そのリーを親身になって気遣ってくれたのが、兄のジョーだった。
ジョーがいなければ、リーは社会復帰できなかったかもしれない。
ジョーは当時まだ少年だったパトリックを連れ、何かあるたびにリーの元を訪れていた。
リーは自分を救ってくれたジョーを敬愛しており、兄の遺した想いになんとかこたえたかった。
しかしどうしてもマンチェスターに戻る決断ができない。

リーが逡巡しているある日、パトリックが冷凍肉を見てパニックとなる。
冬季で墓地の地面が凍結しているために穴を掘ることができず、ジョーを埋葬できずにしばらく冷凍することになったからだ。
強がっているようで、パトリックが内心は傷ついていることに気づくリー。
なんとかパトリック中心の生活が送れるよう、最大限の努力を始める。

まず、自分の不注意から幸せな家族を無くしてしまうリーの描き方が巧い。
映画の冒頭部分、リーが非常に暴力的に描かれているのだが、その理由が少しずつ説明される。
その際の、リーと兄ジョーの関係描き方に、心震わされた。
自分が二人兄弟という事もあるのかもしれない。
兄も妻に逃げられ、パトリックを抱えて大変な状況なのに、ともすれば自殺しかねないリーを気遣っている。
そこに兄弟の強い信頼関係を感じた。

リーとパトリック、そしてリーの妻だったランディ。
心に傷を負った人たちは、自分を護るためにさらに傷付いていく。
そのリアリティが非常に巧く表現されていた。

時系列がかなり細かく入れ替わり、その説明も少ないため最初はとまどうのだが、ストーリーの大筋を理解できてからは、ラストまで心が締め付けられるようだった。
同年代の人であれば、少なからず共感できる部分が多い作品である。


69.マンチェスター・バイ・ザ・シー



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