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チェ 39歳 別れの手紙

早くしないと上映が終わっちゃうと言う事で、慌てて観に行った。

前作はキューバ革命に勝利したシーンと、国連で演説しているシーンで終わる。
今回は、ゲバラがボリビア入りしたところからスタートする。

この間、カストロの片腕としてキューバで大臣となり、さまざまな政治活動をしてソ連に疎んじられ、カストロと袂を分かちコンゴに渡るエピソードがある。

しかしそこはバッサリカット。
ゲバラがゲリラとして活動していた時期を、より鮮明にクローズアップするためなのだろう。
理由は分かるが、個人的にはやや残念。

ゲバラがカストロと袂を分かちキューバを離れるのには、きちんと理由がある。
それは民主化を求めるゲバラの理想がとても高く、自分を含めて決して妥協を許さなかったことである。
そして「チェ 28歳の革命」、「モーターサイクル・ダイアリーズ」の時にも書いたが、なぜブルジョアであったゲバラがゲリラとなり、誰よりも気高き理想を掲げる事となったのか、彼はいったい何を見たのか、そのあたりをもっと知りたかった。

ゲバラは自分の理想を、決して曲げようとしない。
補給が絶たれ脱落者が続出する。
戦士の士気はみるみる下がっていき、部隊のモラルが低下する。
誰の目にも敗戦は明らかだ。
それでもゲバラは強い意志で、信念のままに突き進む。
そのモチベーションはいったいなんだったのか。

映画は観ていてとても切ない。
理想と現実の戦場の乖離は激しく、たとえ結末を知らない人でも、破滅に向かっている事はすぐ分かる。
疲弊した戦士は、やがて民間人からの略奪を始める。
当然民間人の支持を失い、戦いはさらに厳しくなる。
追い詰められたゲバラ自身も判断を鈍らせ、「(正規軍へ)通報された代償だ」と民間人の物資を略奪する事で、ゲリラ軍は完全に孤立してしまう。

あたかも「水清ければ魚棲まず」の諺を、そのまま具現化したようだ。
ゲバラは部隊の仲間に、あるいは民間人に、切々とゲリラ活動の重要性、必要性を唱える。
しかしボリビアではすでに一度農地改革が行われている関係で、ゲバラの崇高な理想は人々の胸を打たない。
次第に打つ手がなくなるゲバラ。

逮捕され処刑される間際、彼はいったい何を思ったのだろうか。


21.チェ 39歳 別れの手紙
by ksato1 | 2009-02-26 22:14 | 映画 | Comments(0)