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「ベティ・ペイジ」と「ヘアスプレー」

月曜日。
かなり疲れていて悪寒もしたのだが、ギンレイで公開中の映画が今週で終了し、他に行く日もないので強行する事にした。

1本目は「ベティ・ペイジ」
原題は「The Notorious Bettie Page」。
まだヌード写真集が世に認められていなかった時代に、アメリカで一世を風靡したヌードモデル、ベティ・ペイジの伝記的作品だ。

ヌードモデルと言っても、正確には彼女を有名にしたのは裸の写真ではない。
フェティシュ向けに取られたボンデージのモデルとして、名を知らしめている。

南部の、厳格なキリスト教徒の家庭に生まれたベティは、近所でも有名な美少女で、女優を目指して真面目に勉学に励む学生だった。
しかしハイスクールを首席で卒業することができなかっため、奨学金を得られず、俳優を目指す大学に進む夢を断たれてしまう。
その後、離婚とレイプという経験から故郷を離れ、ニューヨークでモデルをしながら女優を目指すことになる。
ニューヨークでのモデル時代、撮られる事、注目される事への喜びなのか、彼女は徐々に服を脱ぐことに抵抗を無くす。
そしてさらに、「むしろ裸ではない」と理由で、積極的にボンデージモデルの仕事を行うようになる。

制作者は、裸ではないのだからポルノではない、という理論であったが、ある青年が緊縛状態で死亡しているのが見つかり、上院議員でボンデージ写真が糾弾されてしまう。
制作者側は争うことをせず、すでに30才を超えていたベティも、この事件以降一線を退くことになる。

作品は淡々と進むのだが、モデルとして注目されてからの、ベティの心境の変化の表現が巧い。
それ以前はややテンポが速すぎて、「えーっ、いきなり脱いじゃうの? 抵抗ないの?」てな感じもする。
しかしその後は、厳格な家庭に育ちながらポルノ雑誌のモデルを行っているという、彼女の心の微妙な葛藤が巧く表現されている。

モノクロとカラーの使い分けも効果的で、当時のアメリカの世相を知る映画としては、良くできた作品だった。

続いて「ヘアスプレー」
メチャメチャ明るいミュージカル映画、かと思っていたのだが、実際はもっと深い内容の映画だった。
Wikiで調べたところ、そもそもが1988年に公開された映画で、それを元にブロードウェイでミュージカル化され、今回はさらにそのミュージカルを映画化したらしい。
なんかちょっとややこしいな。

舞台は1960年代のボルチモア。
そこではまだ、有色人種への人種差別が普通に横行している。
子どもが熱中するR&Bは黒人の音楽だと、親たちは眉をひそめている。

そんな中、ティーン向けのローカルR&B番組大好きのおデブ少女のトレーシーが、この番組へ偶然出演する事になる。
彼女は「楽しければいいじゃない」と考えるお気楽娘、当然、黒人差別なんて理解ができない。
リベラルな考えのトレーシーは、太った容姿だが次第に番組の人気者となる。
だが、プロデューサーであり愛娘も出演させているベルマは、そんな彼女が癇に障って仕方がない。

ベルマの嫌味や嫌がらせもなんのその、トレーシーはどんどん人気者になり、「ミス・ヘアスプレー」コンテストの投票でもどんどん票を伸ばす。
しかしリベラル過ぎる彼女は黒人のデモに参加してしまい、一転、未成年ながら警察に追われる立場になってしまう。

トラボルタが土曜の夜にフィーバーしていた時代より、さらに10年前。
その60年代において、差別をなくす先進派と旧態依然を好む人々の姿を、優等生ではないトレーシーを主人公にして描く痛快な作品だ。
こういう作品で主人公を完全無欠にしちゃうと、ちょっと嫌味になっちゃうからね。

しかしトラボルタはこの年で、さらに特殊メイクで相当重い体になっていたと思うが、あれだけ踊れるなんてさすがだなぁ・・・。


41.ベティ・ペイジ
42.ヘアスプレー
by ksato1 | 2008-04-30 18:58 | 映画 | Comments(0)