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眉山

最近はヘコむ事ばかりだが、今日、土曜日に寝ゲロを吐いていた事が判明・・・。
マジ落ち込む・・・。
また消しゴムで消したい過去が出来てしまった。

昨日も別件で落ち込む事があり、会社を早めに出てギンレイホールにて「眉山」を鑑賞。
同時上映の「サイドカーに犬」は、すでに観ていたし時間もないので断念。

松嶋菜々子扮する河野咲子は、母親龍子が倒れた事を知り郷里に戻る。
元神田で芸者をしていた龍子は相変わらず気丈な性格で、その部分をあまり好きではない咲子は会った瞬間に顔をしかめてしまう。
しかし龍子は末期の癌に侵されていた。
たった一人の肉親を失う事に動揺する咲子は、その時偶然、母が自分に隠していた、父の事を知ることになる。

ストーリーは割合わかりやすい。
ただ、正直作品としてはちょっと粗さが目立った。

まず、宮本信子演じる龍子の演技。
宮本信子と言えば、故伊丹十三監督による「●●の女」シリーズを思い出す。
そこでも元気な役が多かったが、今回も気風のいい「お龍さん」を演じている。
しかしちょっと演技が過剰すぎる気も、しないでもない。

元神田の芸者の役だが、そもそも江戸っ子とは、ただ元気が良くて気風がいいだけではない。
もちろん口やかましくもあるのだが、もっと人情に厚く、自分の事よりも周りの人間を気遣い、人の事で喜び、涙する人種だ。
親戚が神田神保町で育ったものが多く、母親も幼少の頃一時期そこにお世話になっていたため江戸っ子気質だった。
そういう人たちを間近で見て育ったため、宮本信子の「お龍さん」がちょっと乱暴に見えた。
まあひと口に神田と言っても神保町は西の端で、湯島に近い外神田や、現在の神田駅周辺の内神田界隈とは、文化がちょっと異なるのかもしれないけど。

今回の作品は、母一人娘一人の家族が、母の臨終を迎えてお互いがいかに愛していたかを、表現する事が主題だったのだろう。
しかしそのあたりの演出も、ちょっと雑。
例えば、集中治療室から一般病棟に戻る際、龍子が「人に(車椅子を)押してもらうなんてゴメンだよ」と言う。
それで介護士に抱えられながら病室に戻るのだが、家族愛を表現するなら、誰でもない娘に抱えられるか、車椅子を押してもらう演出にすべきだったと思う。
ちゃきちゃきだった「お龍さん」が弱って娘に甘える事により、最期に向けて親子の愛がより深まっていく様子が、もっと浮き彫りに出来たのではないだろうか。

咲子の心情の変化はよく表現できていたと思うので、気丈な女という部分ばかりをクローズアップせずに、もっと龍子の心情の変化を表現して欲しかった。

また、この二人以外の心情がまったく表現できていない。
辰っちゃん、啓子さん、そして篠崎が龍子の死をどう考えたのか、その部分がスコーンと抜けている。
咲子と寺澤の関係も、二人の気持ちがほとんど表現されないまま進展しているし。

ただ、クライマックスの阿波踊りのシーンは圧巻だった。
カメラワークも素晴らしく、実際に生で観てみたいと思った。
阿波踊りのシーンを一番最初に撮影したらしいのだが、ここで気合入れすぎちゃって、他のシーンは余韻で撮りました、的な作品になってしまっている。

原作を読んでいないのでなんとも言えないが、もうちょっと説明部分を多くしても、よかったんじゃなかと思う。

115.眉山
by ksato1 | 2007-12-12 18:01 | 映画 | Comments(0)