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“希望”の門

27年前、NHK特集「シルクロード」が放送され、2年前「新シルクロード」が放送された。
そして今年、「新シルクロード 激動の大地をゆく」が、4月から放送されている。

前二回の「シルクロード」シリーズは、撮影箇所が中国国内(一部モンゴル)で歴史的、文化的事象にスポットを当てていたが、今年の「激動の大地」の舞台は、現代の中東だ。
昨夜は全7話中の第6話、「“希望”の門 トルコとクルド・2つの思い」だった。

日本でクルド族といえば、フセイン政権に迫害を受けた、アメリカ軍によりクルド自治政府を開いた、などのイメージで、どちらかといえば戦争の被害者だ。
しかしトルコという国から見れば、それは異なる。

そもそもクルド族は、北部イラクからトルコにかけて広いエリアで生活している民族だ。
第一次大戦後、オスマントルコが崩壊すると、トルコは列強から国を守るために、クルド族にも共闘を呼びかける。
列強を排除した後、トルコが民族主義を強めたため、クルド族は社会的に低い地位に甘んじる事になる。

現在はクルド族独立運動を行なうPKKというゲリラ組織が、アメリカが制定したイラク北部のクルド自治エリア内に本拠地を置き、トルコへ攻撃を加えている。
番組ではまず、PKKのテロにより命を落とした20歳の青年の実家を訪れる。
彼の両親はトルコの赤い国旗を手に取り、この国旗の赤の中には、息子の血も混じっていると言う。

次に、かつてPKKに参加したクルド人男性のもとを訪れる。
彼は10年前、トルコ軍に故郷を焼かれて親族を皆殺しにされた。
復讐のためPKKに加わったが、彼を慕った婚約者も同様にPKKに参加する。
彼は脱退を進めたが彼女は拒み、すぐに戦闘で命を落とす。
自分のせいで婚約者を失った彼は、その後PKKを離れる。

彼のもとにはたびたび若いクルド人が訪れ、国境を越えてPKKに参加したいと告げる。
彼は人を殺す事が独立運動ではないと諭すが、PKKに参加希望の若者は後を絶たない。

そして国境警備の強化のため、徴兵された若いトルコ兵も国境へ向かう。
前出の20歳の青年のように、命を失うリスクを負っているのに。

ゲリラではないトルコに住むクルド人の多くは、イラクからタンクローリーを運転し、トルコ軍基地に駐留するアメリカ軍へ、燃料を運ぶ仕事をしている。
彼らももちろん国境を通過する。

自由、平和、豊かな生活、さまざまな希望を求めてみな国境を目指すのだが、果たしてクルド人にとって国境は「“希望”の門」なのだろうか。

PKKのゲリラ活動が強くなった事により、トルコは国境を越えてクルド自治エリアへの侵攻も検討し始めたという。

歴史の重さを考えると、どちらが悪いかなんて、安っぽい倫理観では判断できない。
そんな闘いが、今でも世界のどこかで続けられている事を、この番組を見て実感した。
by ksato1 | 2007-10-29 22:37 | 日記 | Comments(0)