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「新感染 ファイナル・エクスプレス」

仕事関係で試写会に潜り込んで観る事ができた。
単純なゾンビのパニックホラーではなく、細部まで非常に作り込まれた作品である。

ソウルの郊外が立ち入り禁止区域になっていた。
出入りする車などは厳重に消毒をされている。
それは口帝疫などではなく、新たなる病原体のためだった。

ファンドマネージャーのソクは忙しい生活を送っていた。
妻は家を出て別居、娘のスアン、母親と3人で生活をしていた。
ソクはスアンの誕生日プレゼントにゲーム機を買ってくるが、それはすでに子どもの日にプレゼントしたものと同じであった。
ソクは仕事の事ばかり考え、スアンの事をまったく理解していなかったのだ。
妻はスアンの誕生日に、自分のいる釜山に来るように伝えていた。
スアンからも釜山行きを懇願されるが、ソクは仕事が忙しい事を理由に説得しようとする。
しかしスアンは聞き入れない。
やむを得ずソクは、始発のKTXで釜山に向かい、自分は午前中にソウルに戻る事にした。

翌早朝、KTXの始発には多くの乗客が登場していた。
高校生の野球チームや、途中まで乗車する老姉妹、高速バス会社の重役などである。
乗客を乗せ、KTXはソウル駅を発車しようとする。
しかし発車間際に、一人の少女が飛び乗ってきた。

KTXの車内放送では、韓国各地で暴動が起きている事伝えていた。
ソクの携帯にもキム代理から、出資した会社で暴動が起きていると連絡が入った。
しかしこれはただの暴動ではなく、病原体が原因によるものだった。
KTX内でも最後に乗車した少女が病気を発症、ゾンビと化し次々と乗客に襲いかかった。

まず、ゾンビ映画としての迫力が見事である。
途中、大量のゾンビが降ってくるシーンがあるのだが、このシーンも特撮ではなくワイヤーアクションなどで撮影しているそうだ。
列車内で津波のように襲いかかるゾンビたちにも圧倒される。

さらにストーリー構成が巧みである。
レスラーのようなヒゲ男と彼の妊婦の妻が乗車しているのだが、この二人がキーとなる。
ヒゲ男は一見粗暴のように見えるが実は非常に情に厚く理性的な男で、自分の事しか考えていないソクとたびたび対立する。
そしてさらに情の深い彼の妻が、母親のようにソアンに付き添ってくれる。
ヒゲ男たちと一緒にゾンビと戦っているうちに、次第にソクに人を思いやる心が大きくなり、ソアンとも分かりあえるようになってくる。
主要メンバーが次々と離脱して行くというのはこの手の映画のお約束ではあるが、この構成が非常に巧い。
高速バス会社の重役を最後まで悪役に仕立てている点も、巧く機能している。

ゾンビ映画と馬鹿にするなかれ、非常に完成度の高い作品だ。
ボン・ジュノの「グエムル-漢江の怪物-」レベルの作品と言っていいだろう。


94.新感染 ファイナル・エクスプレス


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by ksato1 | 2017-08-11 23:27 | 映画 | Comments(0)