「ラ・ラ・ランド」

惜しくも米アカデミー賞作品賞を逃したが、やはり聞きしに勝る素晴らしい作品であった。
これ以上にスタイリッシュでカッコいいラブストーリーを、ここ数年で見た記憶がない。
そしておそらく私が生きている間には、これ以上のミュージカル作品は出て来ないと思う。

舞台はロサンゼルス、ミア(エマ・ストーン)は田舎から出てきてスターを夢見ていた。
同じ意思を持つ友人たちとルームシェアし、ハリウッド内のコーヒーショップで働きながらオーディションを受けている。
セブ(ライアン・ゴズリング)はジャズ・ピアニストで、ジャズが楽しめる大人の店を開くのが夢だ。
しかしジャズへのこだわりが強すぎて挫折し、いまだ店を持つ事ができない。

この二人が偶然出会い、お互いを励ましながら恋に落ち、成功を目指す、というストーリーである。

と書いてしまったら、この映画の魅力を半分も伝えられない。

映画のストーリーは冬から始まり、春、夏、秋を経て2度目の冬となる。
始まりの冬では、冒頭の素晴らしいハイウェイでのシーンを始め、ミア達がパーティに向かうシーン、そしてパーティのシーンなど、これでもかとミュージカルシーンをぶつけてくる。
この「起」の部分で、観ている者のワクワク感は一気にマックスまで高まる。
最初から手加減なしのトップギアで展開する。

そしてミアとセブが出会って距離を縮めて行く春から秋までが「承」である。
お互いに支え合ってトラブルを乗り越え順調に行ったり、時には喧嘩もしたりする。
この部分は普通のラブストーリーのようでもある。
そして観客は、「冒頭のミュージカルシーンはすごかったけど、その後のストーリー展開は割とありがちなラブストーリー+サクセスストーリー」なのかな、と思ってしまう。

だがこの映画の本領が発揮されるのはここからだ。
2度目の冬で「転」を迎え、そしてラスト3分で「結」となる。
このラスト3分が、とにかくスタイリッシュでカッコいい。
ミアとセブがアイコンタクトをするラストシーンは、映画史上に残る名シーンと言っていいだろう。

当然ラストだけではなく、全体の演出も素晴らしい。
監督はインタビューで、冒頭のハイウェイのミュージカルシーンは、リアリティを追求するためにワンカメラで撮影したと言っていた。
そのため撮影中は監督自身、この映画を完成するのは不可能ではないかと、何度も思ったそうだ。
それを聞いていたので注意して見ていたが、カメラが上空に上がっているのにクレーンが見えないので、たぶん本当にすべてワンカメではないのだろう。
だが、そんな事はどうでもよく、どんなに撮影技術が進歩しても、もう同じシーンを撮影するのは不可能じゃないかと思えるほど素晴らしいシーンに仕上がっている。

それ以外にも、街角にはストーリーに関係ない通行人や車がほとんど存在せず、あたかも生でミュージカルを観ているかのような非日常的な演出がなされている。
夜間のシーンは、まるでエドワード・ホッパーの名画「ナイトホークス」のような静寂さだ。
作品中に何度か用いられているマジックアワーのシーンも、監督の映画への深い愛情が感じられる。
やや強めのコントラストでメリハリを付けた色調は、50年代の総天然色の映画ポスターのような雰囲気だ。
さらにネタバレになってしまうので詳しくは書けないが、「転」の部分のシーンもあえて生ミュージカルのような演出が強調されて用いられている。

正直、この監督の前作の「セッション」はあまり好きではなかった。
ラスト近く、バーで和解したかのように見えた二人だが、ラストシーンでは再度裏切りあう。
しかも嫌悪感を抱くほどの、かなり醜い裏切りあいだ。
その直前のバーの和解シーンがとてもいいシーンだった事もあり、サスペンス作品ならいざ知らず、音楽作品であのラストはないだろうと思っていた。

だがこの作品では、1ミリも文句の付けようがなかった。
構成、テンポ、脚本、演出、どれを取っても超一流で、この作品がミュージカルのハードルを限界まで上げてしまったため、この先誰もミュージカル作品にチャレンジしなくなってしまうのではないかとも思う。
この監督自身も、次回作にはかなり苦しむのじゃないだろうか。

間違いなく、人生で絶対に一度は観ておきたい作品である。


29.ラ・ラ・ランド



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by ksato1 | 2017-03-03 08:00 | 映画 | Comments(0)