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「サバイバルファミリー」

サラリーマンの父(小日向文世)と専業主婦の母(深津絵里)、大学生の息子(泉澤祐希)と高校生の娘(葵わかな)、郊外の高層マンションに住む典型的な家族が鈴木家だった。

ある朝家族が起きてみると、停電になっていた。
しかもただの停電ではなく、電池も使用できない。
取りあえず支度をして外に出てみると、停電は鈴木家の部屋だけではなくマンション全体、いや街全体が停電になっていた。
しかもなぜか、車のバッテリーもプラグが点火しないためエンジンも掛らない。
人々の交通手段は徒歩か自転車だけだった。

誰もがすぐに復帰すると思ってできるだけ日常の生活を送ろうとしていたが、いつまで経っても復旧しない。
やがて電源がないため上水道の供給もなくなり、人々は戸惑い始める。
意識の高い者は水が確保しやすいキャンプ場などに移動するが、一般人は取りあえず空港などに向かうだけだった。
鈴木家はもちろん後者で、母の実家のある鹿児島に向かうため自転車で羽田に向かった。
しかし当然羽田空港は封鎖されている。
そのため自転車で鹿児島に向かう事を、父が決断した。

電気、水、交通機関などのライフラインが断たれた場合、都会に住む者がどういう行動を取れるのか。
こういう状態になると、便利な生活に慣れた都会人にできることがほとんどない事を、おもしろおかしく描いた映画である。
小日向文世のダメな父親役が巧くハマっており、葵わかなのイマドキのJKっぷりも良かった。
サバイバルに不向きなこの二人の設定がきちんと機能しているので、家族の道中のドタバタぶりも無理なく展開する。
そしてバラバラだった家族がサバイバルで団結することで絆が結ばれていくのだが、その見せ方は矢口史靖ならではの巧さだ。

ただ、どうしても家族以外の部分に違和感を感じる。
ライフラインがストップしてかなりの時間が経ち、普通に考えれば完全に非常事態になっているのに、街の中に警官や役所の人間の姿がほとんど見られない。
画面に登場するのは水道局、空港警備の警官、高速道路を更新する自衛隊のみである。
街中にはゴミがあふれているものの、商品目当てに商店や自動販売機が襲われた形跡もない。
あまり治安が悪くなさそうなので、ひょっとするとライフラインが復旧して正常に機能している地域もあるのかと思いきや、家族がいくら進んでもサバイバル状態は解消されない。

そして一番違和感を感じたのは、家族以外の人々の数だ。
家族は東名高速を自転車で西下するのだが、最初は家族と共に西に向かう人々がかなりいた。
大阪ではライフラインが復旧している、と言う噂が流れていたからだ。
途中のSAでは多くの人がテントを張るなどして野宿しており、一家もそこでシートを敷いて寝てたりしていた。
しかし日本坂トンネルに差し掛かったところで、いきなり家族以外で西下する人がいなくなってしまう。
日本坂トンネルを超えた後は、もうほとんど人に出会わない。
あまりにも突然に周囲の人が消えるので、これは何かの伏線かと思いきや、そうではなかった。
他に西下する人がいなくなったら不安になるんじゃないかと思うのだが、家族はそんな事には構わず黙々と西に向かって進んで行く。
はぐれた家族が再会するエピソードもかなり強引だ。

それでも養豚業の大地康雄が家族を助けてくれる部分など、感動するシーンも多く、総合的にはまずまずの作品だと思う。
ただ、やはりライフラインがストップするというテーマがかなり大きいだけに、細部をもうちょっときちんと詰めて、完成度を上げるべきだったんじゃないかとも思った。


26.サバイバルファミリー


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by ksato1 | 2017-02-19 20:16 | 映画 | Comments(0)