「スノーデン」<自由部門>

2013年6月、NSA(アメリカ国家安全保障局)に所属していたエドワード・スノーデンが英国ガーディアン紙に、米国政府が違法な手段で世界中の通話やメールなどを傍受収集していた事を暴露した。
この映画はそのスノーデンが暴露に至るまでを描いた作品であるが、この映画を観て大騒ぎする「知ったかぶりの勘違いさん」がまた増えるんだろうな、と言うのが正直な感想である。

スノーデンは米軍の特殊部隊を目指していたが、体が弱いために訓練中に除隊となってしまう。
その後彼CIAの契約職員に申し込み、語学が堪能な事とプログラミングの才能を認められて採用される。
CIAの訓練センターでセキュリティに関する講義を受けるスノーデンは、そこで非凡な才能を発揮、教官にも認められた。
その後スノーデンはジュネーブへ派遣され、重要なデータの管理セクションにも入室を許された。
そこで先輩のプログラマーと知り合い、米国が世界中の通話、メール、SNSの更新記録を傍受収集しており、極秘システムにアクセスすればそれらをすべて閲覧可能である事を教えてもらう。
スノーデンは上司の指令でアラブ人の銀行家と接触、銀行家をハメるために彼の娘の恋人家族を不法侵入で取り締まり、かつ銀行家自身を飲酒運転で逮捕させるよう命じられた。
だがスノーデンはこれを拒否し、CIAを辞めてしまう。

スノーデンはその後民間のIT会社に入社するが、そこからNSAに出向する事となった。
勤務地は日本の横田基地で、名目は在中東の大使館、米軍基地が破壊された場合でもデータ消失にならないような、バックアップシステムの構築であった。
また同時に、日本がアメリカとの同盟を破棄した場合に、日本のダム、送電システムなどを破壊するプログラムを仕込んでいた。
スノーデンは日本でも仕事に忙殺され、一緒に暮らしていた恋人のリンゼイとの仲も壊れてしまう。
その後リンゼイはアメリカに帰国、スノーデンも日本を離れ、再びアメリカでリンゼイと暮らし始めた。

NSAはスノーデンが日本語だけでなく中国語も堪能である事に着目し、彼をハワイにある対中国サイバーチームに配属しようとした。
当初リンゼイは難色を示すものの、スノーデンの持病のてんかんの治療にもなるのであれば、と言う条件で二人はハワイに移る。
元々米国政府のサイバー上の諜報活動に疑問を感じていたスノーデンだが、ハワイで、かつて自分が日本で開発したバックアップシステムが、中東でテロの疑いがある者へ攻撃するシステムに転用されている事を知る。
通信記録で疑わしい反応がある者は、きちんとした確認をせずに攻撃の対象となっていた。
スノーデンは大きなショックを受ける。
さらに、米国がかつてより大きな範囲で、世界中の通信情報を収集している事を知った。
スノーデンはこの事を暴露するために香港に渡り、イギリスのガーディアン電子版の記者にすべてを告白、ガーディアンが決定的な証拠をネットにアップする事で、真実が世界中に公表される事となった。

エシュロンなど、アメリカの違法な情報収集は周知の事実となっている。
だが個人的には、「それがどうしたの?」と思う。
平平凡凡に暮らしている私の私生活など、アメリカに収集されても全然平気である。
直接の知り合いに知られたくない秘密はたくさんあるが、それとて犯罪でも犯さない限りは白日のもとにさらされる事はないだろう。
アドラー流に言えば「あなたの顔を気にしているのは、あなただけ」、つまり自分が気にしているほど他人は自分に注目などしていないのだ。

昨今、意味もなく個人情報の流出が過剰に報道されているが、金銭をはじめとしたダイレクトの損害がない限り、個人情報などいくら流出しても怖くない。
もし本当に個人情報の流出が危険だと言うのであれば、高校野球や高校サッカーも、選手名を全部匿名にして顔にモザイクを掛けて放送すべきである。
実際、致命的なエラーなどで負けた場合、その個人と家族が地域住民から攻撃を受ける事もあるそうなのだから。
そして映画の中でも、恋人のリンゼイは個人情報が収集される事を意に介していない。
彼女はネット上での個人情報の意味を、ある程度きちんと理解しているのだ。

ただこの映画を観る限り、アメリカの違法な情報収集にはそれ以外の問題点がある。
ジュネーブのアラブ人の銀行家のエピソードのように、「アメリカの利益」と言う名のもとに個人が脅されたりトラップにはめられる可能性があるのだ。
スノーデンがリンゼイのPCのカメラにテープを貼るシーンがある。
これは、リンゼイの私生活の情報をネタに、スノーデンが脅しを受ける可能性があるからだ。

単純にテロリストの活動の監視や、犯罪防止のために監視をするのは私も賛成である。
しかし一方で収集された情報が、謀略のための材料にされる可能性も十分ある。
そして、スノーデン自身が日本のインフラシステムにトラップを仕掛けている。
これ自体、発動はしていないものの、アメリカのサイバーテロと言っても過言ではない。
一番重要なのはスノーデンが機密を暴露しようと思った動機、アメリカの情報収集活動のどの部分が一番危険だと思ったのか、という部分である。
しかしこの映画では、その部分がハッキリ描かれていない。
単純にスノーデンの暴露に対して、大騒ぎしているだけになってしまっている。

この映画の公開劇場が少なかったり、あるいはこの前に公開されているドキュメンタリー映画「シチズンフォー スノーデンの暴露」があまり日本で話題にならないのも、「政府が圧力を掛けている」とか「配給会社も暴露されては困る事があるからだ」などと言い出す人がいるかもしれない。
どんだけ陰謀好きなんだ、と突っ込みたくなるが、原因はやはりスノーデンの真意がどこにあったのかが分かりづらい点にあるのだと思う(スノーデン自身もいろいろな事象が重なり過ぎて、どの部分がトリガーになっているのかわからくなっているのかもしれないが)。

個人的には、あくまでも国が勝手に公開および悪用をしないと言う前提で、個人はすべての情報を国に開示すべきだと考えている。
監禁など自由を奪われるのはご免こうむるが、監視されているだけなら別に痛くもかゆくもない。
このご時世、くだらない個人情報の保護で大騒ぎするよりも、情報開示による安全の確保を、私なら優先する。

作品の内容も、もう少し何が危険なのかをはっきり描くべきだったのではないかと思う。

14.スノーデン



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by ksato1 | 2017-01-31 23:20 | 映画 | Comments(0)