「本能寺ホテル」<自由部門>

題材から原作は万城目学かと思っていたのだが、どうやらオリジナルストーリーのようだ。
そのためいい意味でも悪い意味でも、ストーリーの中盤までに過度な期待を抱かせず、ほぼ想像通りの展開だった。

倉本繭子(綾瀬はるか)は恋人の吉岡恭一(平山浩行)の両親と会うため、彼の生まれた京都に来ていた。
やや天然の入った繭子だが、ホテルの予約を1カ月間違えたため泊るところがなくなってしまう。
あてもなく歩いていると、目の前に「本能寺ホテル」が現れた。
ダメもとでフロントの支配人(風間杜夫)に尋ねてみると、部屋は空いていると言う。
鍵を受け取り繭子はエレベータに乗りこむのだが、上昇したエレベータのドアが開くと、そこには寺のような空間が開けていた。
時空を超えて、本能寺の変前日の本能寺に来てしまった繭子は、事態がよくわからないまま、目の前の織田信長(堤真一)に説教をしてしまう。
信長は怒り、繭子を手打ちにしようとするが、その瞬間繭子は本能寺ホテルのエレベータに戻った。

現代と戦国時代を何度か行き来するうちに、繭子はだんだん状況を把握して行く。
繭子の話を信じない支配人だが、もし本能寺の変を事前に信長に伝えてしまえば歴史が変わってしまいますよ、と繭子に告げる。
繭子は躊躇するものの、信長に明智光秀が謀反を起こす事を伝えてしまう。

フジテレビ作品で言えば、「信長協奏曲」に続く信長題材の作品だ。
この作品の公開に合わせてドラマを再放送し、劇場版も地上波で放送した。
個人的には「信長協奏曲」も好きだが、この2作品を見て、今までの信長感がちょっと変わった。

子どもの頃は、若い頃のうつけ者と「殺してしまえホトトギス」の逸話から、かなり雑で粗暴な人間のイメージが強かった。
その後日本史を学習をしてからは、雑ではなく逆にかなり綿密な人間で、崇高な理想と大観を持ちながらも計算高く、目的のためには手段を選ばない冷徹な人間、ある意味非常に優秀な経営者的なイメージを持っていた。
具体的にはビル・ゲイツやホリエモンあたりだ。

ただよくよく考えると、何度も裏切った柴田勝家や、農民出身の秀吉を重用するなど、秀吉以上に人の心を重んじて、人の使い方が巧かったのではないかと思うようになった。
光秀に関しても、他の家臣の前で何度も恥をかかせたと言うが、裏を返せば嫌っていたのではなく本当に信頼を寄せていたからこそ、光秀にだけ常に本音をぶつけていたんじゃないかとも思う。
そういう人柄のため、織田信長への忠誠心は単純な恐怖心によるものではなく、この人に付いていけばきっと誰もが安心できる太平の世になる、と皆が信じていたような気がする。
清州会議の段階では家臣たちも、自らが天下を取ろうなどとは思っておらず、誰が家督を継ぐ事が織田家、ひいては世のために最善かを考えたんじゃないか、とも思うようになった。

この映画では、秀吉の中国大返しがなぜ可能だったか、その部分について説得力のあるストーリーを展開している。
本能寺の変に関してはそれ以外にも、光秀のはっきりした動機がわからなかったり、信長の死体が見つかっていないなど、まだまだ謎の部分が多い。
ただこの映画を観ると、ひょっとすると本能寺の変自体が信長の仕組んだ策略で、秀吉と光秀を戦わせて勝った方をさらに重用するつもりだったのではないか、とも思ってしまった。
元々信長は本能寺からの逃げ道を用意していたが、何かの事故で逃げる途中に信忠ともども死亡してしまった、そうであれば二人の死体が本能寺で見つからなかった事も説明が付く。

実際にはそんな事はないのだろうが、この映画の生き生きとした信長の描き方は、いろいろな事を想像させてくれた。
堤真一と、森蘭丸役の濱田岳の演技も素晴らしかった。

映画としては、正直普通といった感想だ。
現代のシーンでは吉岡の父役だった近藤正臣が非常によかったが、吉岡本人の描き方が中途半端だった事もあり、繭子が現代でいろいろと迷っている、という部分がきちんと描き切れていなかった。
せっかく平山浩行を起用したのにもったいない感じだ。

しかしながら歴史ファンならば、信長の描き方に興味を持つのではないだろうか。
楽しそうに振り振り毬杖(ぎっちょう)をする信長に、個人的には非常に好感を持った。



2.本能寺ホテル


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by ksato1 | 2017-01-16 23:19 | 映画 | Comments(0)