「海賊とよばれた男」

「永遠の0」はいい映画だとは思うが、やや反戦という部分で教条的な面があり、個人的にはそこが気になっていた。
「海賊とよばれた男」も、原作、制作者とも同じ顔ぶれなので、やっぱり反戦という部分はそのように描かれるのかなと思って観に行ったが、意外とそうではなかった。

国岡鐵造(岡田准一)は60歳の時に終戦を迎えた。
焼け野原となった東京で、彼が店主となっている国岡商会本社奇跡的に焼け残り、鐵造は従業員とともに戦前から取り扱っていた石油の商売を再開しようとする。
しかし石油統制会社は、以前から勝手な振る舞いをしていた国岡商会を目の敵にしており、戦後の石油事業から締め出そうと考えていた。

国岡鐵造は大正時代、門司で機械油の販売会社を立ち上げようとしていた。
しかし新参者が食い込むのはなかなか厳しい業界で、どこに売り込みに行っても門前払いを食らっていた。
そこで鐵造が考えたのが、余っている軽油を灯油の代わりに売る商売である。
しかも船に軽油を載せて、海上で漁船に安く販売をしたのだ。
その結果、門司だけではなく下関の業者からも顰蹙を買い敵視されるのだが、国岡商会は着実に商売を大きくして行った。

鐵造の商売は、強気に押しまくる、である。
その結果、戦前、戦中と、大陸、南方で大きな商売を手がける事になる。
だがそのために敵も多く、戦後に石油統制会社からにらまれる事になったのだ。
鐵造は石油の商売が行えない間は、ラジオの修理をして会社を運営する事にした。

石油統制会社は、GHQに石油の輸入の交渉を始めた。
しかしGHQは、旧海軍の残りの石油が残っており、それを消化しないと輸入を認めないと言う。
旧海軍の石油は、横須賀の基地のタンク内に残っていたのだが、泥と水が混じりポンプでは揚引できない状態であった。
現場の社員も一度は音を上げそうになるのだが、鐵造への忠誠心で危険な作業を顧みず、残りの石油の引き上げを行う。
それを見ていたGHQの幹部は、国岡商会に石油販売権を与えようと考えるのであった。

舞台は戦前から戦後の復興期にかけてなので、どうしても戦争のエピソードが入ってくる。
しかしこの映画は、反戦をテーマにしていない。
自分の利益よりも日本の発展を考えた、国岡鐵造という一人の男の業績にスポットを当てている。
損得を超えたその鐵造の考えに賛同して人が集まり、社員や出資者、協力者となってくれる。
やや強引ではあるが、ピュアな鐵造を演じる岡田准一の演技は素晴らしく、脇を固める小林薫、野間口徹、染谷将太、國村隼の演技は言わずもがなである。
重厚なテーマで、かつ上映時間も長いのだが、観終わった後は非常にさわやかな気分にさせてくれた。
冒頭の焼夷弾の落下シーンをはじめとしてVFX、20~90代を演じた岡田准一の特殊メイクなども完璧だった。

ただ、一人の男の人生をすべて追うと、どうしても大河的な物語になってしまう。
フラッシュバックを巧く使い、原作からもかなり削ぎ落して綺麗につなげているとは思うのだが、ラストのタンカーのシーンは、鐵造があまり登場しない事もありちょっと全体からは浮いてしまったかな、という感じもした。
日本の経済、石油事情を考えると、イランとの取引開始については非常に重要なメルクマールである事はわかるが、もっと鐵造視線で展開した方が良かったかな、と言う気もした。

日本がどうして戦争に向かう事になってしまったのか、そして戦後の復興に何が必要だったのかなど、学校ではあまり教えられない現代史を知る上でも、非常にいい作品であった。


112.海賊とよばれた男


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by ksato1 | 2016-12-17 10:20 | 映画 | Comments(0)