「リップヴァンウィンクルの花嫁」

2016年春に公開された岩井俊二の最新作、上映劇場が少なかったため見逃していたが、ギンレイで捕まえる事ができた。
岩井俊二作品なのに上映劇場が少なかった理由はおそらく、上映時間が3時間だったため。
個人的には映画の上映時間の限界は2時間半だと思っており、3時間にする意味があったのかという部分でも興味深く観た。
ちなみに併映の「海よりもまだ深く」はロードショウ時に観ているのでスルーした。

皆川七海(黒木華)は派遣で臨時採用教員をしていた。
特に出会いがある訳でもなく、SNSで知り合った大学の講師の鉄也(地曵豪)と、「ネットでモノを買うようにあっさりと」付き合うようになった。
やがて鉄也と結婚するのだが、七海は両親が離婚している事もあり、親戚が少ないため披露宴の出席者の釣り合いが取れない。
そこでやはりSNSで知り合った役者兼なんでも屋の安室行舛(アムロゆきます、綾野剛)に、披露宴の代理出席を頼む事にする。
同時期、七海は声が小さく生徒にからかわれた事が理由で教職をクビになっていた。
七海は周りにその事を言い出せず、寿退社と言う事にした。

新婚生活が始まった後、七海は鉄也が浮気をしているんじゃないかと思い、安室に浮気調査を依頼する。
すると、新居に鉄也の浮気相手の彼氏という男が乗り込んできた。
動揺する七海。
さらにその男から呼び出されて都内のホテルに行くと、彼女を取られた腹いせに鉄也の職場に不倫しているというビラを撒く、それが嫌ならオレと寝ろ、と迫られた。
七海は拒否するも、男は腕力で迫ってこようとする。
必死でトイレに逃げ込んで安室に連絡を取ると、すぐにホテルに来てくれた。
しかし実は、すべては安室がしくんだワナだった。
その場面はすべて動画で撮影され、鉄也の母親(原日出子)に送られていた。
後日法事の時に七海は、その動画を見せられ鉄也の母に浮気しているだろうとなじられる。
夜中のうち部屋に戻り、電話で鉄也から離婚を迫られた七海は荷物をまとめて部屋を出た。

どこをどう歩いたかもわからず蒲田の安宿にたどり着いた七海は、そこに滞留しながらホテルキーパーとして働き始める。
そこに安室が登場し、七海はハメられたんだと言う。
鉄也の母親は子離れが出来ておらず、七海と離婚させたいがために別れさせ屋に依頼をしたに違いないと、七海に告げた。
七海はショックを受けるが、職も失い他に頼る者もいなかったため、安室を信じる事にした。

その後七海は、安室からの紹介で披露宴の代理出席のバイトをした。
自らも頼んだバイトである。
そこで同じ代理出席の家族と知り合い、姉役の里中真白(Cocco)と親しくなった。
SNSのID交換をすると、真白は「リップヴァンウィンクル」と名乗っていた。
だが披露宴後の飲み会が終了すると、七海が連絡しても真白は返信をしてくれなかった。

さらに数日後、またまた安室が現れて新しい仕事をしないかと告げる。
内容は、郊外の元レストランを改造した屋敷でメイドをするというものだった。
主人はずっと外国におり、七海は荒れた屋敷を片づけながらそこで留守番をすればよく、それだけで100万円の月給がもらえた。
七海は最初戸惑っていたが、安室に強引に屋敷に連れられてくる。
そこにもう一人のメイドがいると教わるのだが、そのメイドは真白だった。
そこから、七海と真白の不思議なメイド生活が始まる。

上記までが、ストーリーの役2/3くらいか。
ただこの映画のポイントは、ここからの終盤1/3である。
なぜ3時間と言う長い作品になったのかも、ここから1/3でわかった。
ネタバレになってしまうのであまり詳しく書けないが、七海と真白がウェディングドレス姿で踊るシーンがある。
ストーリー的にはこのシーンこそ短くしても話はつながるが、それでも岩井監督は長く見せたかったのだろう。
たしかに、私も良いシーンだと思った。
しかしここを長くして他のどのシーンを切るかと考えた時、かなり監督も迷ったんじゃないかと思う。
だったらもう無理に短くせず、必要と思われるシーンはすべて残そうと開き直ったんじゃないだろうか。

とは言え、個人的にはやはり長いと思った。
序盤で七海が学生時代の友人と会うのだが、そのシーンはこの映画全体から見るとあまり意味がなさそうに思える。
だが後からWikiで調べたら、原作ではきちんと非常に重要なシーンとして描かれているようだった。
この友人と会うシーンを中途半端に残すのなら、このシーンをバッサリ切ってもいいような気がする。
逆にこのシーンをきちんと描いていないので、映画では全体を通じた安室の位置付けが中途半端になってしまった。
安室と七海の出会いの必然性が、抜け落ちてしまっているのだ。
終盤、安室が焼酎を飲みながら号泣するシーンがあるのだが、安室の位置付けが中途半端な分、このとてもいシーンの意味もやや薄らいでしまっている。

個人的には前半の哲也との出会いから離婚まで、それとラストシーンももっと大胆にカットできたんじゃないかと思うし、やはり上映時間の長さがこの映画の評価を下げる一因になっていると感じる。
おそらくこういう評価が出る事も理解した上で、岩井俊二があえてこの長さで作品を発表したのだとは思うが、ちょっと観る者を突き放し過ぎかな、という感も否めない。
劇場公開時はもっと短くして、DVD発売時にディレクターズカット版でこの形を発表すれば、ちょうど良かったような気がする。


108.リップヴァンウィンクルの花嫁


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by ksato1 | 2016-12-08 06:59 | 映画 | Comments(0)