「幸福のアリバイ~picture」

監督は陣内孝則だが、脚本が「桐島、部活やめるってよ」の喜安浩平という事でなんとか見られる作品になっているかと思ったが、やはりダメだった。

構成は、人生の節目をテーマとした5作品のオムニバス。
しかし共通のテーマが「人生の節目」と「写真」だけで、その二つも強いつながりがある訳ではない。
と言うか逆に、ショートストーリーを無理矢理「人生の節目」と「写真」だけで結び付けた感すらある。
さらに、なぜか2話目と5話目が同じ出演者になっていた。
各話のテーマをつなぐ伏線がどこかにあるのか、2話目と5話目の話を同じ出演者にした意味があるのか、2と5に置いた意味があるのかなど、いろいろと考えながら観たのだが、たぶんどれも意味はなかったのだと思う。
そういう風に上映中にいろいろと考えながら観た分、ストーリーに巧く入り込めなかったのかもしれない。

1話目は「葬式」。
ヤクザの親分の葬式で、その親分の遺言を実現するかどうかでもめるストーリーだ。
親分は自分が生きていた時の写真を告別式で映し出せと言うが、下品な写真だったりシノギの最中だったりで、映していいものかどうか、下っ端や他の組の親分を含めて侃々諤々と議論する。

2話目は「見合い」。
付き合って3年程度経過し、やや倦怠感が出てきたカップル。
その女性宛てに、ある日父親がお見合い写真を送ってきた。
相手の釣り書を見ると、職業は医者だ。
女の方がお見合い相手のステータスに心が動き、二人は口論となる。

3話目は「成人」。
やや裕福な家庭の一人息子が成人式を迎える。
しかしその恰好が、いわゆる「荒れた成人式」のニュースに出てくるような、典型的なヤンキーの和服。
さらに彼は、50ccの原付バイクに乗って行くと言う。

4話目は「誕生」。
アイドルになると言って家を飛び出した娘から、出産すると言う連絡を受けた父。
駅に迎えに来ていたのは、その相手の男だった。
相手の男の姿も車の中も、中途半端なパンクロッカーであきれる父親。
男は一生懸命父親の機嫌を取ろうとするが、なかなか打ち解けてくれない父親に、逆にキレてしまう。

5話目は「結婚」。
2話目の男が、友人の結婚パーティに出席している。
しかしそれは代理友人で、彼は役者の卵としてこの仕事を引き受けていた。
一方女はカメラマンとして、このパーティの撮影をしている。
偶然会った二人は、別れた時の事でもめ出すのだが、そのうちに男がパーティ出席者に美人の芸能プロダクション社長がいる事に気付き、あり得ないイタイ行動を起こし始める。

正直どれもこれも、これまでにどこかで見たようなストーリーばかりである。
5話とも1カ所くらいずつクスリと笑えるシーンはあるのだが、全体的に展開が古臭く、観ていてちょっと引いてしまう。
1話目はヤクザの親分の葬式なのに、自宅でかなりこぢんまりしている。
そのあたりのナンセンスで笑わそうとしているのかもしれないが、中途半端にリアリティがあるのでその部分が笑いなのかどうかわからない。
2話目だけは今風のシチュエーションで、個人的には面白かった。
3話目は息子がおかしな格好で成人式に行こうとしている事を、両親とも呆れはしているもののなんだか悠長に構えていて、ちょっと子どもを小馬鹿にしているようでもあり本気で止めようとしている雰囲気がない。
だから息子が必死に「オレはこの格好で成人式に行くんだ」と主張しても、ほほえましいだけで笑いになっていない。
4話目の男と彼女の父と言うシチュエーションは、もう言わずもがなの既視感だ。
そして極めつけは5話だ。
男の役の山崎樹範がかなりがんばってイタイヤツの演技をしているのだが、彼が何を目的としているのか、プロダクションの社長に男として気に入られたいのか、あるいは役者として認められたいのか、はたまたその場の勢いで舞い上がっちゃっただけなのか、途中からよくわからなくなっている。
しかも山崎樹範の演技が巧いだけに、観ている者はドン引きするばかりである。

面白い映画を作りたいという意欲はなんとなくわかるものの、正直実力不足だった、と判断せざるを得ない。
オムニバス映画を作るのであれば、もう少し全体的なテーマの軸をしっかり置いたうえで、各話の関連性もハッキリさせた方がいいと思う。
オムニバスとは、単なるショートストーリーの寄せ集めではないのだ。


99.幸福のアリバイ~picture


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by ksato1 | 2016-11-24 06:37 | 映画 | Comments(0)