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「オケ老人!」

手堅くまとまった佳作だ。
杏の魅力が存分に引き出された作品である。

小山千鶴(杏)は高校の数学教師で、学生時代にバイオリンを弾いていた。
新たに引っ越した梅ヶ丘で街の交響楽団のオーケストラを聞き、自分も再びバイオリンを弾いてみたいと思うようになった。
ネットで探すと、そのオーケストラが団員募集中だった。
意気揚々と申し込みをする千鶴。
しかし千鶴が申し込みをしたのは、似たような名前の別のオーケストラだった。

千鶴が応募した梅が岡交響楽団は、かつてはかなり大きなオーケストラで定期公演もしていた。
しかし演奏を極めたいメンバーと演奏を楽しみたいメンバーの方向性の違いから、一部のメンバーが新しく梅が岡フィルハーモニーを設立、千鶴が演奏を聞いたのもそちらのオーケストラだった。
千鶴は付き合いで梅響に参加していたが、こっそり梅フィルのオーディションも受けそちらにも所属していた。

梅響は老人ばかりで人数も少なく、楽器のパートも足りない。
週一の練習も名ばかりで、メンバーの目的はその後の懇親会だった。
一方、梅フィルは練習も本格的、千鶴は数十万円はたいて自室に防音の練習部屋を設立し、そこで自主練をしてもなかなか追いつけないほどのレベルの高さだった。
そんな時、梅響の指揮者であった野々村(笹野高史)が心臓病で倒れてしまう。
野々村はしばらく入院する事となり、代わりに千鶴がタクトを振りながらオーケストラの指導をする事になった。
だが、老人たちの腕はなかなか上がらず、千鶴はどんどん落ち込んでいく。

ある日、梅フィルが指揮者として世界的に有名なフィリップ・ロンバールを呼ぶ事になった。
梅響の練習日と重なったため、指導を高校生の大沢(萩原利久)に頼んで、千鶴は梅フィルの練習に行った。
しかしそこで千鶴は完全にダメの烙印を押されてしまい、その後は梅フィルの練習に参加しなくなってしまった。

打ちひしがれた千鶴が翌週梅響の練習に出ると、メンバーの力量が一気に上がっていた。
先週代打を頼んだ大沢の教え方が巧かったためである。
そういう教え方もあるのかと、千鶴は考え方を大きく変えた。
そこから梅響の実力はメキメキ上がり、やがて少しずつメンバーも増え、公演できるほどの実力がついていくのだった。
さらにひょんなことから、ロンバールがオーケストラのために曲を書いてくれる事となった。
千鶴と梅響のメンバーは、久しぶりの公演を開催する事にした。

ハッキリ言って、良くあるダメメンバーが一生懸命頑張って、エリートメンバーを超える、という内容である。
構成的にはよくある話で、予告編を見た段階では、指導者が入院し、ダメメンバーに泣き付かれて仕方なく千鶴が嫌々指導をする、という内容かと思った。
大筋ではその通りなのだが、この作品のポイントは、千鶴自身が挫折し、ちょうど同じ時に指導方法を変えればダメメンバーも上達するんだ、と気付く点である。
その段階から、千鶴はモチベーションを高くもってオーケストラを指導し始める。
こういう話の場合、ダメメンバーの実力がそこそこ上がるまで指導者のモチベーションも上がらない、と言うパターンが多いのだが、この作品ではその前段階で千鶴のモチベーションがあがっているので、本当にダメなメンバーにも愛情を持って指導をしている。
その千鶴の姿が、観ていて気持ちがいい。
そして、それを演じるのが杏と言う点もよく、キャスティングがハマった見本と言えるだろう。

いくら練習しても素人同然の老人がそんなに巧くなるのか、とか、ましてや大根くりぬいた楽器なんてお笑い芸人かよ、と言う突っ込みもあるだろう。
ただ、元々がコメディをベースにしている作品なので、そのあたりはむしろ笑いの部分として許容していいのではないかと思う。
杏以外の役者も実力派を揃えていたし、個人的には想像以上に面白かった作品でかなり満足度は高かった。


94.オケ老人!


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by ksato1 | 2016-11-18 23:09 | 映画 | Comments(0)