「セーラー服と機関銃 卒業」

薬師丸ひろ子主演で1981年に公開された作品のリメイクかと思いきや、微妙に違っていた。
タイトルは「セーラー服と機関銃 卒業」で、原作も1981年版の続編として赤川次郎が発表しているとの事だ。
「セーラー服と機関銃」に続編ががあったことも全然知らなかった。

で、この作品がどこまで原作の「卒業」に近いかはわからない。
ただ、かつての薬師丸版「セーラー服と機関銃」を想像して観に行くと、かなりガッカリする。
巷でもかなり悪評で、題材が古すぎるとか橋本環奈の演技力に問題があるとか言われているが、原因はそういう事ではない。
制作陣が役者の演技力と小手先のテクニックに頼り過ぎて、映画として一本筋を通す事を怠っているのだ。

星泉(橋本環奈)は両親の死後、叔父の星嗣夫(榎木孝明)の世話になっていた。
だが嗣夫は小さいながら暴力団の組長で、敵対する浜口に襲撃され泉の目の前で絶命する。
その後泉は嗣夫の意思を継ぎ、4代目めだか組組長となり浜口組の襲名式に殴りこみをかける。
そして、浜口組がめだか組のシマを荒らさない事を条件にめだか組を解散、かつての組員とともにカフェを運営していた。

そんなある日、めだか組のシマであこぎなモデル事務所を経営する者が現れた。
そいつらが浜口組の名前を出すので、泉は浜口組に乗りこんで事情を聞く。
ところが逆に浜口組の組長(伊武雅刀)から、浜口組のシマ内で違法ドラッグを練り込んだクッキーを販売しているのではないかと問い詰められる。
不審に思った泉たちが背後を調べると、東京から進出してきた堀内組が、ホリウチ都市デザインと言うフロント企業を使って街を支配しようとしていたのだ。
ホリウチ都市デザインを実質的に仕切っているのは、堀内組の内部でのし上がってきた安井(安藤政信)であった。
安井は地元の警察署も抱き込み、着々と街の支配を進めていたのだ。

ストーリーは、たしかによくある話である。
ただ、演出次第ではいくらでも面白くできたはずだ。

まず、「セーラー服と機関銃」のキモとなるのは、めだか組組員の結束力である。
泉は元々ヤクザ稼業を嫌っているが、昔気質で純粋な心を持つめだか組の組員たちに感化されていく。
そして、仲間であり家族である組員たちを殺されて、感情を爆発させる。
そのためには、泉と組員たちの交流を、しっかり描かなければならない。
この映画では、それがほぼ皆無。
泉は自分を組長ではなく(カフェの)店長と呼ぶように組員たちに再三言うが、実際には悪徳モデル事務所に殴りこみを掛けるなど、泉自身が完全にヤクザの組長となっている。
また、堅気であるがゆえ、対立する組とまともにぶつかる事を避け警察の力を借りようとするのだが、その警察が対立する組の先鋒である事に気付き、泉が絶望する部分も話のキモである。
だが、その部分の描き方も希薄。
なんとか堅気として組員たちを護ろうとするが、それが巧く行かずに組員たちが命を落とすことで、泉が爆発して「カイカン」になるのだが、その導線が描かれていないので非常に淡泊な「カイカン」に見えた。

抗争シーンのライティングなどは非常に凝っているし、音楽もなかなかいい、そして何よりキャスティング秀逸。
だが、せっかくイカレた安井に安藤政信を排しているのに、堀内組がなぜ街を支配しようとしているのか、その理由がまとも過ぎて興醒めした。
理由は理由として存在してもいいと思うが、安井はそんな事関係なしに自分が楽しいと思った事にだけ突き進んでいる、と言う設定でも良かったと思う。
月永の長谷川博己、浜口の伊武雅刀、土井の武田鉄矢もいい味出していた。
橋本環奈の星泉も、怒鳴ってばかりではなくもう少し抑えたシーンを使って抑揚を出していれば、もっと良さが引き出せたんじゃないかと言う気もする。

いずれにしろ、もう少しやりようがあったんじゃないかと言う作品であった。



20.セーラー服と機関銃 卒業


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