「オデッセイ」

さすがリドリー・スコットと言うべき素晴らしい映画だ。
この映画を「火星のDASH村」だと評した人がいたようだが、その人はおそらく映画を観ていないだろう。
もし映画を観た上でまだ「火星のDASH村」だと言うのなら、その人の頭の中のお花畑をTOKIOにきちんと耕してもらった方がいいかもしれない。
主人公がサバイバルのために作物を育てたり工作したりするのは冒頭の30分程度で、それ以降はかなり高度な技術知識のオンパレードとなる。
宇宙工学好きがよだれを垂らすレベルで、とてもDASH村のレベルではない。

火星探索チーム「アレス3」は、火星調査中に巨大な大砂嵐に襲われる。
まだミッションの途中ではあるが、リーダーのルイスは帰還用ロケットに被害が出る前の撤収を決断する。
だが、メンバーが撤収する前に嵐が襲いかかり、飛んできたパラボラアンテナの直撃を受けて植物学者のワトニー(マット・デイモン)が吹っ飛ばされてしまう。
ワトニーを捜すために残ると言うルイスをメンバーが説得し、ワトニーを残して帰還用ロケットは火星を飛び立った。

誰もがワトニーは死んだと思ったが、ワトニーは奇跡的に生きていた。
滞在用のコロニーに残ったわずかな食料からジャガイモの栽培を始め、かつて地球から飛んできた無人探査のパスファインダーを使って地球への交信も試みる。
ワトニーは不屈の魂で、地球へ帰還するための準備を始めるのだった。

一見、単なる危機からの脱出映画のようにも見えるが、この映画のキモは「信じる心」だ。
当然であるが、ワトニーは自分を信じて、地球への帰還を信じる。
そしてNASAおよび地球に残るのメンバーは、ワトニーのサバイバル能力を信じ、必ずワトニーを帰還させる事ができると信じて行動をする。
だが、物資がないまま火星上に生存者を残すなど、誰もが想像もしなかった不測の事態だ。
何をどう行動すればいいのか、誰にも正解はわからない。
あくまでも机上の計算だけで決断をしなければならず、意見がかみ合わず衝突する事もしばしばだ。
しかし全員が、最初から自分の保身を考えずにワトニー帰還のためだけに突っ走る。
彼らにできる事も、ワトニーと自分たちを信じて行動する事だけなのだ。

地球に向かっているワトニー以外のメンバーには、最初はワトニーの生存は知らされない。
メンバーがワトニーを残した罪悪感を感じる可能性が高いからだ。
だがワトニーの強い希望もあり、ルイス以下のメンバー全員にワトニー生存が知らされる。
そしてそこからは、すべてのメンバーがワトニー救出を信じて行動を始める。

映画のここそこに「本気か?」と言う意味のセリフが出てくる。
普通に考えればあり得ないが、誰もが可能性を信じて行動を起こすのだ。
そしてそのすべてが成功するわけではなく、やはり失敗してしまう事もある。
それも、かなり致命的な失敗だ。
それでも、誰もワトニーを救うミッションから逃げようとしない。
その潔さの描き方が素晴らしい。

さらに、ワトニーのキャラ設定も秀逸だ。
誰もいない火星で、ワトニーは記録用にカメラを回し、そのカメラに向かって話しかける。
普通なら発狂してもおかしくない状況で、ワトニーは常にウィットに富んだセリフを続けている。
彼の強靭なメンタルと、それを裏打ちする知識量、賢さが巧みに表現されている。

全編BGMを80年代のアメリカンポップスで統一して、あえてどれくらい未来であるのかをわからなくしていたり、冒頭では筋骨隆々だったワトニーがラスト付近ではガリガリになっている点など、制作者の細かい部分へのこだわりも強く感じる。

SF好きなら絶対に外してはならない作品だ。


14.オデッセイ


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