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「ブリッジ・オブ・スパイ」

スピルバーグとトム・ハンクスという事でかなり期待していたのだが、正直期待したほどではなかった。

ジェームズ・ドノバン(トム・ハンクス)はソ連のスパイとして逮捕された男の弁護を依頼される。
スパイのルドルフ・アベル(マーク・ライランス)はとても優秀で、自分の任務の事は一切しゃべらなかった。
自由の国アメリカでは、スパイと言えども罪と照らし合わせて正当に評価される。
だが時はマッカーシズムが吹き荒れる1950年代、世論はスパイに厳しい目を向けていた。
そのスパイの弁護をするとなると、当然ドノバンにも批判の声が上がる事になる。
実際彼はアベルの弁護中、自宅に銃弾を撃ち込まれる事になった。

家族の反対を受けながらドノバンはルドルフの弁護をし続け、連邦裁判所での審理にまでこぎつける。
しかしそこから事態は急転する。
ソ連上空を空撮していた偵察機が撃ち落とされ、米軍のパイロットが捕虜となったのだ。
米軍は機密漏えいを恐れ、急遽アベルを捕虜交換要員とする事を決定。
捕虜交換交渉の場を東ベルリンに設定し、ドノバンを交渉要因として向かわせる事にした。
しかし公式には、米軍はパイロットが捕虜になっている事も認めていない。
ドノバンの任務は、表向き米軍とは関係のない交渉と言う事になる。

さらに、東ベルリンに留学中だったイギリス人大学生が、ベルリンの壁の前で拘束されてしまう。
東ドイツとしては、大国アメリカと人質交換を行う事により、世界にその名を知らしめたいという思惑があった。
ソ連としてはアベルさえ戻ってくればそれでいいのだが、交渉が長引くとアメリカが手を引いてしまう可能性もある。
そのため東ドイツに余計な事はして欲しくなかったのだが、東ドイツもなかなかソ連の思惑通りには動いてくれなかった。

アメリカ本国は、イギリス人大学生の安否は無視してアベルとパイロットの捕虜交換を進めるように指示してくる。
しかしドノバンは諦めず、アベル一人と二人の捕虜交換を行うべく、必死に交渉をするのだった。

予告編を見た時には、米ソのヒリヒリするようなギリギリの交渉劇が繰り広げられるのかと思った。
イメージ的にはキューバ危機を描いたケビン・コスナーの「13デイズ」だ。
だが、捕虜交換と言う事でそこまでの緊迫感はなかった。
それは私が過剰に期待したせいだったのかもしれないが、実は前半部分、ドノバンがアベルを弁護するシーンはなかなかのヒリヒリ感があるのだ。

自分以外のすべてがアベルに敵意を持ち、言外では死刑が相当と言う雰囲気にもなっていた。
なぜこんな男を擁護するのか、という罵声を浴びながらもドノバンは必死にアベルを弁護する。
そのヒリヒリ感はなかなかのものだった。
そして前半部分から考えると、後半部分はさらにヒリヒリ感が増すものだと思った。
しかしそうではなく、後半部分はやや失速した。
それは、交換される捕虜の重要性にちょっと差がありすぎるからだ。

アベルは冒頭にスパイとしての能力の高さが描かれていた。
当然救出する価値がある人間である。
一方アメリカ人パイロットは、アベルと交換するに値するかどうか、疑問符が付いた。
万一の時には自殺するように毒針を持たされるが、それを使う事もない。
さらにイギリス人大学生も、彼女を救い出すためにマゴマゴして連行されている。
ラストで二人がいかに優秀な人物だったかという表記も出るのだが、作品としてそのあたりが伝わってこない。

ドノバンはなんとか交渉で二人とも連れて帰ろうとするのだが、正直「アメリカ政府が主張する通り、パイロットだけでもいいんじゃない?」と思ってしまった。

10.ブリッジ・オブ・スパイ


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