「クリード チャンプを継ぐ男」

ロッキーのライバルであり親友、アポロ・クリードの血を引く男の物語だ。
そして新年一発目にオッサンが観るには最適な映画だった。

両親がなくロスの施設で暮らすアドニス・ジョンソンは、毎日ケンカに明け暮れる日々だった。
そこにアポロ・クリードの妻であるメアリー・アンが面会に来る。
メアリーはアドニスがアポロの子どもであることを知り、彼を引き取りに来たのだ。
アドニスが生まれる前にリング上で死んでしまったアポロは、アドニスの存在を知らない。
アドニスの母も、アドニスがアポロの子どもである事を誰にも言わなかった。

時が経ち、アドニスは優秀な成績で学校を卒業し、一流企業に就職していた。
メアリーは自分の子どもではないものの、アポロの血を引くアドニスを我が子のように大切に育てていたのだ。
元々賢かったアドニスもその期待にこたえ、母が望むようにエリートの人生を歩んでいた。
だが体の奥では、アポロの血が騒いでいた。
彼はしばしば国境を超え、メキシコの場末のリングに立って試合を重ねていたのだ。
アドニスのボクシングは自己流であったが、正式な試合でなかった事もあり連戦連勝負け知らずだった。
自信を持ったアドニスは会社を辞め、父が通ったジムの門を叩く。
しかし相手にされず、ジムのエースで世界戦を目前にしたランキング2位の選手にコテンパンにのされてしまう。
アポロをリングでなくしたメアリーもボクシングには反対、やむなくアドニスは家を出て、ロッキーを訪ねてフィラデルフィアに向かった。

ロッキーと出会ったアドニスだが、ロッキーは一度は彼のコーチを拒否する。
しかしアドニスの情熱に負け、彼のコーチを引き受けることにした。
この時二人は、アドニスがアポロの血を引く事を公にしなかった。
ロッキーは、彼の息子が「ロッキーの息子」と言うプレッシャーのために苦労をしていた事を知っていたし、何よりアドニスがアポロの名前を出さずにリングに立つ事を強く望んだからだ。

ロッキーの通ったジムでトレーニングを積むうちに、現在のジムのオーナーからマッチメイクを申し込まれる。
ジムのエースであるオーナーの息子が、ランカーに挑戦する前の調整試合の相手に選ばれたのだ。
ロッキーはオーナーの息子の実力を高く評価し、「噛ませ犬」になるから辞めておけとアドニスを止める。
しかし血気盛んなアドニスは、試合を強く望む。
ロッキーは仕方なくアドニスを別のジムに連れて行ってしごき始める。
そしてアドニスは見事ロッキーの期待にこたえて、試合でオーナーの息子をノックアウトする。
そのこと自体ニュースバリューが高いのだが、さらにアドニスがアポロの息子であることが新聞に掲載されてしまった。
ロッキーがアポロの息子をトレーニングしているというニュースは、全米だけではなく全世界を駆け巡るニュースとなった。
そしてそのニュースは、イギリスに住む世界チャンピオンのコンランの耳にも入った。

コンランはボクシングのチャンピオンにありがちな、粗暴な男であった。
銃の不法所持で7年の刑を受け、もうすぐ服役をしなければならず、その前に最後の世界戦を計画していた。
だがその最後の世界戦の記者会見中、ランキング2位の相手を殴って骨折させてしまい、最後の世界戦も流れてしまった。
もはや、ラストマッチの相手にふさわしい相手はいない。
そう思っていたところにアドニスが現れたのだ。
マネージャーを通じ、すぐにアドニスに対戦を申し込むコンラン。
アドニスはまだ正式な試合を1戦しかしていない事もあり、ロッキーは当然反対した。
父のように殺されてしまうぞ、と。
だがアドニスのアツい血は誰にも止められなかった。

とにかく、アドニスがアツくていいヤツだ。
少年時代は不遇であったために施設でも暴れていたが、メアリーに引き取られてからは愛情にこたえて優等生として育った。
性根は素直で優しい男なのだ。
だが、会った事のない父への憧れが強すぎた。
どうしても父と同じリングの上で、父同様に認められたかった、しかも父の名前を借りずに。
そのアツいアドニスに、ロッキーをはじめ誰もが最初は反対するものの、いつのまにか彼を応援し始めてしまうだ。
ちょっとアツくなりすぎて暴走したあと、ムキになって意地を張ったりせず、すぐに反省する部分も好感が持てる。
典型的なスポ根ストーリーだが、アドニスの生い立ちとキャラに一本太い筋が通っているので、観ていてどんどん彼に感情移入してしまう。
ラストはともかくストーリー展開はほぼわかりきっているのに、それでも彼を応援せずにいられない。
新年早々今年50才になる髭ヅラのオッサンは、上映中何度か涙をこぼしてしまった。

また、ロッキーの立ち位置も素晴らしい。
前作の「ロッキー・ザ・ファイナル」では、栄光を掴んだものの家族と仲間に次々先立たれ、息子にも距離を置かれてしまったロッキーは果たして幸せなのだろうか、と思わせた
そんなロッキーの元に、親友アポロの息子が現れる。
日々を過去の思い出と共に静かに暮らしていたロッキーに、再び夢を追わせる男が現れるのだ。

ロッキーのセリフも素晴らしい。
「父はリングで死んで本望だったはずだ」と言うアドニスに、「アポロは息子と会いたかったはずだ」と言って黙らせる。
そして血気盛んにアツくなるアドニスに、「リングには死ぬために上がるんじゃない、勝つためにあがるんだ」と言って冷静にさせる。
アドニスが暴走しないよう、常に急所の言葉を投げかけ続けていた。

ストーリー中、アドニスの恋人のビアンカが登場するのだが、この二人の恋愛もいかにも青春していて爽やかだ。
ビアンカの仕事と病気の設定も、今後の奥行きを感じさせる心憎さだ。

また、あえて観ている者が期待する「ロッキーのテーマ」が、作品中にほとんど使われていない。
それは、「ロッキー」の続編ではなく、「ロッキー」を継ぐシリーズであるのだと言う制作者の矜持なのだと思う。

ズバリ言って、「ロッキー」シリーズのリブートとしては十分期待できる。
ロッキーはアメリカン・ストーリーだったため、3以降は成功を収めた後もリングに立つモチベーション部分でかなり苦労していた。
だが今回のアドニスはアポロの遺産で裕福であるため、すでにリングに立つモチベーションが銭金ではなくプライドだけという設定になっている。
これはこの後シリーズ化しても、何作品でも無理せずストーリーを描けるだろう。

ネットでは、次作はドラゴの息子と戦う、なんて声もあがっているようだ。
ドラゴの息子と死闘を繰り広げた後、ロッキーとアポロのような親友になる、なんて展開になったら、オッサンはまた涙してしまうかもしれない。

いずれにしろ、一度でも「ロッキー」シリーズに心震わせた人は、まずは絶対にこの映画を観なければならない。
そうすれば、私の言いたいことがすべてわかるだろう。


1.クリード チャンプを継ぐ男


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by ksato1 | 2016-01-03 15:31 | 映画 | Comments(0)