「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」

それほど期待しないで観に行ったのだが、非常に内容の濃い映画だった。

ステットはテキサスの片田舎で母親と暮らしていた。
教師の言う事を聞かないため問題児扱いされていたのだが、彼のボーイ・ソプラノの才能を認めたスティール校長が、有名なコーラス学校のオーディションを受けられるよう取り計らってくれた。
しかしそのオーディションもすっぽかしてしまうステット。
街をふらついて帰宅したステットを待っていたのは、母の事故死を告げる警察官だった。

ステットの父ジェラルドは実業家で、N.Y.で暮らしていた。
ステットの母とは一夜限りの遊びの付き合いで、養育費を支払う代わりに今後一切かかわり合いにならないという約束を交わしていた。
その約束を盾に取り、ステットの引き取りを拒もうとしたジェラルドだが、弁護士に説得されステットを引き取ることにする。
そこで彼が考えたのが、ステットをコーラス学校に入学させる事だった。
主任教官のカーベル(ダスティン・ホフマン)は断固拒否するが、学校長(キャシー・ベイツ)がステットの入学を認めてしまう。

荒削りながら才能を持つステットを、一部の教官は注目していた。
特に若手教官のウーリーは彼の才能を必死に伸ばそうとするが、ステットは身を入れて学習しない。
挙句の果てには、構内の自動販売機を壊して盗みを働くなど、相変わらずの問題児だった。
さらに、一緒に学んでいる生徒たちとも馴染むことができない。
だが他の生徒たちとトラブルを起こすことで逆に、ステットは反発心から一番になろうと努力をし始める。
カーベルはステットの性格を見抜き、彼を発奮させて能力を伸ばそうとした。

実際ステットはメキメキと実力を上げ、ツアーメンバーに参加し、さらにリードボーカルを争うまでになった。
そしてステットの加入でコーラス隊全体のレベルが上がり、長年の悲願であったN.Y.でのコンサートの招待を得るまでになった。
しかしステットは他の生徒に嫉妬され、母親に逮捕歴がある事を暴露されてしまう。
嫌がらせのリーダー格であるデヴォンをボコボコにぶん殴ってしまい、退学を余儀なくされてしまった。

ステットがツアーメンバーに選ばれるまでは、かなりありきたりな話でちょっと退屈だ。
だが、それ以降のストーリー展開が素晴らしい。
ステットの急成長を認めざるを得ないメンバーがいる一方、デヴォンをはじめとする有力メンバーたちは、ステットの実力を認めようとしない。
10代特有の根拠のない自信と、他者を認めようとしない意固地な部分の描き方が巧い。
そしてそれは子どもたちだけではなく、多少なりとも大人も持ち合わせるものだ。
ステットの退学について話し合う会議のシーンが秀逸で、感情論と正論、どちらを優先させるべきか、大人たちがホンネで話し合う。
あまり目立たないセリフではあるが、一番の実力者のカーベルに対し、「私はあなたに話しているんです。私の眼を見て下さい」という学校長のセリフが、この会議のシーンの結論に説得力を持たせている。

人生のほんの一瞬しか輝けないボーイ・ソプラノのために辛い練習を続ける子どもたちと、競い合わせることで実力を伸ばす一方、子どもたちの中にわだかまりが生まれることに気付けなかった大人たち。
学校の運営も経営である以上、子どもたちを商品として見る事もいた仕方ない事ではあるのだが、大人たちは自分たちの策略にしっぺ返しを食らう。
だが、子どもたちは一度感情を爆発させた後は、純粋にコーラスで歌いたいと願う。
大人も子どもも、痛みを伴って成長する。

努力は報われないかもしれないし、報われたとしてもそれがその人にとって幸せなのかどうかはわからない。
ただ、やり遂げたと言う自信が、その後の人生に大きな影響を与えてくれる。
この映画は、当たり前ではあるが、重要な事を語りかけている。


101.ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声



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