「日本のいちばん長い日」

1967年版の方も録画してあり、本当はそちらを見てから2015年版を観たかったのだが、映画自体が上映終了してしまいそうなため先に2015年版を観に行く事にした。

映画は第二次世界大戦末期、鈴木貫太郎内閣成立から1945年8月15日の玉音放送までを描いている。
前半部は、ポツダム宣言受諾の決断をするまでの最高戦争指導会議および内閣の苦悩と駆け引き、そして後半は、終戦を受け入れない青年将校のクーデーター未遂という構成になっている。

半藤一利の原作を読んでいないのだが、映画もかなり事実に忠実に作られていると思う。
特に、本来は当時の日本のリーダーたちの中でも一番開戦を避けたいと願い、かつ終戦を一番に考えていた昭和天皇の描き方が素晴らしいと思う。
史実では、6月の最高戦争指導会議において、梅津美治郎陸軍参謀総長からあと1回程度の会戦で大陸の日本の兵力も底を尽くと告げられ、昭和天皇は大きなショックを受けそこで具体的に終戦を意識したと言われている。
もちろん、それ以前にも戦局からいずれ敗戦と言う選択肢を取るべきだと認識していたようだが、軍部が本土決戦で一撃を与えた後に和平交渉、という筋書きにこだわっていたため、終戦の交渉が開始されることはなかった。
当時天皇は、会議からの進言を受け承認する存在で、自ら意見を述べてはいけない存在だったからだ。
ある意味、立憲君主制にこだわり過ぎたための悲劇である。

戦後70年経ったこの時代に思えば、立憲君主制の禁を犯し、昭和天皇自らが戦争を辞めるべきだと意見を述べた方が良かったのかもしれない。
そうすればもっと早く終戦を迎え、沖縄戦と2発の原爆投下、そして各地の本土空襲による数百万の民間人の犠牲はなかったのかもしれない。
だが、昭和天皇はそれをする事ができなかった。
その昭和天皇の忸怩たる思いを、本木雅弘が押さえた演技で好演している。

また、死んでいった部下、仲間たちの無念を思い、軍部は戦争を続け、全員討ち死にする事が当たり前だと考えていた。
どの将校も、自分だけ生き残ってしまったら散って行った仲間たちに顔向けができないと考えていたのだ。
誰もが冷静な判断ができなかった環境を思えば、そのように暴走する軍人がいても不思議ではない。
実際あまり知られていないが、8/15~22までの7日間、日本の各地で武装解除に応じない軍人の反乱が起きかけていたとい事実もある。
そう言った軍人の無念も、適確に描かれている。

だがこの映画の最大の欠点は、登場人物の紹介、解説がほとんどない事だ。
昭和天皇はもちろん、鈴木貫太郎(山崎努)、東条英機(中嶋しゅう)、阿南惟幾陸軍大臣(役所広司)、豊田副武海軍軍令部総長(井上肇)、梅津美治郎陸軍参謀総長(井之上隆志)、木戸幸一(矢島健一)あたりであれば、私程度でも名前を知っている。
しかしそれ以外の登場人物は名前も知らないし、どのような人物であったのかもわからない。
そのため重要な要素となるポツダム宣言受託までの駆け引きも、わかりづらくなってしまっている。

クライマックスのクーデーター未遂のシーンも、かなり原作に忠実に作られているのだろう。
しかしながら、ハッキリ言って同じようなシーンの連続となってしまい、メリハリが感じられない。
もう少し短く切って、かつ心情を表現するようなシーンを入れた方が良かったのではないだろうか。

そもそも、やや冗舌なくらい長い映画と言うのがこの監督の特徴なのかもしれないが、この映画では基本的な部分の押さえ方、そして役者の演技が素晴らしく良かったので、もう少し思い切って編集をしていれば、映画としての完成度もより高くなったのではないかと思う。


90.日本のいちばん長い日



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